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2021.08.03

パナソニックやDNPなど4社、業界横断の顔認証プラットフォーム構築へ

顔認証マルチチャネルプラットフォームのサービス連携イメージ(画像:パナソニックの発表資料より)

 パナソニックは2日、生体認証を活用した業界横断型プラットフォーム「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」事業化の検討を開始すると発表。検討はパナソニックシステムソリューションズジャパン、JCB、大日本印刷(DNP)、りそなホールディングスの4社で進めるとし、開始にあたり基本合意を交わした。業界横断で顔画像を共有・活用することで、手ぶらで利便性の高いサービス提供を行える環境構築を目指すという。

 検討の背景には、内閣府のスーパーシティ構想を始め、AIやビックデータを活用したデジタルインフラ基盤の構築や横断的なデータ連携を進める動きがある。顔認証の市場は年々増加傾向にあり、富士経済の「2020 セキュリティ関連市場の将来展望」によると、23年には19年比3倍の86億円規模になると予測されている。同じく増加傾向にある静脈認証(23年には19年比113%)と比較してもその成長規模は大きく、コロナ下での非接触のニーズもありその傾向が強まっている。

 しかし顔認証の技術開発は、企業が個々で行っていることが多い。今回の事業化検討は、業界・サービス横断で活用できる枠組みの構築を目指す。プラットフォームは、金融機関の窓口手続きや商品購入時の決済、宿泊施設のチェックイン、イベント会場の受付など、多岐に渡る活用を想定。利用者は、IDや証明書等が無くても登録した顔情報でサービスが受けられる。

 事業化検討は前述の4社で進める方向だが、今後はプラットフォームの参加企業を増やしていく予定。参加企業は、消費者情報を自社内で保有・管理すること無く、サービス提供時に活用できる。

 プラットフォーム構築の軸となるのは、パナソニックの顔認証技術とDNPの認証DX。パナソニックの顔認証技術は、アメリカ連邦政府機関NIST(科学技術標準などの研究を担う)が世界水準と認めた認証精度を持ち、空港の出入国手続きゲートなどで活用実績がある。認証DXは本人確認・認証を行うサービスで、一部証券会社で口座開設の本人確認として活用されている。JCBとりそなが決済や銀行サービスなどの分野でこれに加わる。一方で、顔情報含む個人情報のデータ活用にはプライバシー問題が付いて回る。また、アメリカでは2020年の人種差別解消運動の流れを受け、人種によって顔認証精度に差があることへ批判が高まり、警察へ顔認証ソフトの提供を行っていた企業が提供を一時停止するという事態も起きている。

 今回のプラットフォームの警察への提供予定は無いが、利便性の向上が期待できる半面、プライバシー・人権保護の課題もクリアが必要となる。4社は今後、事業化検討を進めるにあたり、プライバシー保護などの法的課題について弁護士事務所と連携して対応し、適切なプラットフォーム構築を進めていくという。(記事:三部朗・記事一覧を見る)

 

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