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2018.12.01
SNS、1日の使用時間を30分以内に抑えることが幸福感への近道 米大の研究
●他者とのつながりのメソッドでありながら孤独感を増長させる
米ペンシルベニア大学が発表した研究によると、ソーシャルネットワーク(SNS)の使用が増えても人間は幸福感を感じることができないという結果が出た。ペンシルベニア大学の研究では、ソーシャルネットワークの使用時間と鬱病の発症率をテーマに調査研究を行った。
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SNSは、他者とコミュニケーションをとるための手段のひとつである。にもかかわらず、その使用が増加すると孤独感がより深まるのだという。ただし、その使用を1日30分以下に抑えれば、孤独感や鬱病の予防や軽減に役立つことも判明している。
●1日の使用を減らすと精神的に大きな変化が
実験に参加したのは、18歳から22歳の若者143人である。対象となったSNSは、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットの3種であった。研究の前に、参加者が自身の健康をどのように知覚しているか、さらに1日のソーシャル使用時間を調査した。
その後、無作為に選んだ参加者には、SNSの使用時間を10分にまで減らしてもらい経過を観察している。その結果、わずか3週間で、ネットワークの使用時間を30分以下に減らした参加者は、減らさなかった参加者と比べると感情状態が大幅に改善することが明らかになったのである。
研究チームの1人、メリッサ・ハント氏は、「我々もまったく予測できないほどに、ソーシャルの使用を減らすことは孤独感や鬱病の状態が改善された。とくに、実験前に心身の健康状態が良好ではないと答えた参加者ほど、その効果は顕著であった」と述べている。
●幸福な瞬間だけがクローズアップされるSNSと実像との落差
SNSの特徴のひとつに、成功や幸福な事象が非常に多いことがあげられる。これは、実際の本人の姿とはかけ離れていく危険性があるとハント氏は指摘する。また、別の研究によればSNS上の人間関係には、強い対立が生まれていることも明らかになってきた。
他者の幸福な写真や文章の投稿を見つづけていれば、劣等感を抱くようになるのは自明の理なのである。
●SNSの全否定ではない
しかし一方で、SNSの有用性は現代社会においては計り知れない。今回の研究も、こうしたソーシャルネットワークの存在を否定するものではないとハント氏は述べている。
今回の研究は、より健全にソーシャル使用の改善の指針とはなるであろう。社会全体が、オンラインの世界に依存することは、個人の健康状態に悪影響を及ぼす可能性が明白になったからである。ハント氏は、ネガティヴな感情が抑えられないときは、スマホから目を離すことを推奨している。精神の健全のためには、ソーシャルと現実の境界は常に意識して引く必要がある、とハント氏は結んでいる。