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2018.11.26

ブラックフライデーは日本に定着するか


BLACK FRIDAY の文字が躍った新聞折り込みチラシ(著者撮影

 

 11月23日、勤労感謝の日の新聞折込チラシの様子がいつもと違っていた。いくつものチラシが黒を基調としたデザインで、“Black Friday”という文字が踊っていた。ブラックフライデーそのものは、感謝祭の翌日にアメリカで行われる安売り日「ブラックフライデー」の輸入版だ。今年は日本に持ち込まれてから3年目。ブラックフライデーセール日本版の参加企業は増えているというが、果たして日本に定着するだろうか。

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■メールや折り込みでブラックフライデーをPR

 11月22日、筆者のスマホに清水エスパルスから「ブラックフライデーSUPERSALE!!」のメールが飛び込んできた。翌23日にTシャツなど対象商品の40%オフ販売やグッズが入ったお得な「BLACKBOX」販売などを行うという。その翌日にはRoxioとノジマからもブラックフライデーセールのメールが届いた。昨年は気づかなかっただけなのか、ノジマは3年前からやっていることもわかった。

 23日の新聞折込チラシは否が応でも意識せざるを得ないぐらい、黒を基調としたデザインが目立った。ノジマやしまむら、洋服の青山、Right-Onなどがブラックフライデーセールを打ち出しており、“半額”の大きな文字が目についた。

■日本のブラックフライデーセールは3年前から

 ブラックフライデーは、アメリカでは感謝祭(11月第4木曜日)の翌日のことをさし、クリスマス商戦の初日として大幅な値引きを行うイベントだ。セールは日曜日までの3日間続くことが多い。

 日本上陸は3年前で、2016年にイオングループが始めたという。2018年にセールを実施した店舗は、そのイオンをはじめ、イトーヨーカドー、アピタ、ユニクロ、しまむら、Right-on、ABCマート、靴流通センター、ナムコ、ノジマ、カルディなど。通信販売では、Amazonや楽天市場、ZOZOTOWN、NIKE、adidasなどがあり、よく名前を聞く企業も多く参加していることがわかる。

■ブラックフライデーセールの発展はまだ未知数

 日本でブラックフライデーが始まった2016年に行われた調査(マクロミルによるインターネットリサーチ/対象1,000人)がある。それによると、ブラックフライデーの言葉を知っている人は84%で、内容までわかっている人はそのうちの31%。しかし、ブラックフライデーセールで買い物をした人は9%と少なかった。また、ブラックフライデーが日本に定着するかどうかの質問には、「する」が52%に対して「しない」が48%と大きな差は見られなかった。

 2017年11月の調査(ショップエアラインのインターネットリサーチ/海外通販利用者約 2,500人)では、ブラックフライデーを「知っている」「聞いたことがある」の合計は59%、海外のブラックフライデーを利用したことがある人は9%、日本のブラックフライデーを利用したことがある人は5%だった。

 これらの調査の数字は、ブラックフライデーに対する認知度はけっこう高いと感じるが、インターネットという調査グループの特性が影響しているのだろう。まだまだ利用者は少ないが、3年経って筆者の周囲にも情報が浸透してきたことを考えると、一般社会の認知度もネット社会にかなり追いついてきたと言えるのではないだろうか。

 2016年の調査結果では日本にブラックフライデーが定着するかどうかについては意見が真っ二つに分かれているが、年を経るに連れてセールの規模が拡大していることは確かなようだ。しかし、定着しないと答えた人の理由として「一時的な流行りだと思う」「ボーナス前だから」というものがあったように、ブラックフライデーのあと、クリスマス商戦、年末商戦とセールが続くので、今後その中に埋没する可能性も否定はできない。

■イベントの継続・発展に必要なものは

 筆者のスマホには、ブラックフライデーセールの告知の後にRoxioからサイバーマンデーセールの案内メールが届いた。サイバーマンデーはアメリカで感謝祭の連休明けの月曜日のことで、Roxio製品が同じ割引価格のところをみるとブラックフライデーに連続しての売り出しらしい。アメリカではさらに12月第2週の月曜日をグリーンマンデーと称してブラックフライデーやサイバーマンデーで買い逃した客を対象としたセールがある。これらはクリスマス商戦の中のイベントとして位置づけられているそうだ。

 割引セールがあることは消費者にとってありがたいことだ。しかし、頻繁にセールが行われると消費者も内容を見極めて選択するようになる。業者として存続発展させるにはかなりの工夫が必要だ。特色のある商品を大幅に割り引いたり、魅力的なオリジナル特典を設けたりするなど、イベントごとにはっきりとした特色を打ち出すことが必要だろう。

■キーワードは“越境EC”

 そこで他のセールを見てみよう。

 中国の独身の日(11月11日)はネットショッピングの日になっており、10年目を迎えた今年は、EC企業最大手のアリババグループの取引総額が前年比27%増となり、史上最高額の2,135億元(約3兆5000億円)を記録した。日本企業も次々に参戦しており、ブラックフライデーやサイバーマンデーをはるかに凌ぐ規模になっている。

 一方、国内ではヤフー、ファミリーマート、TUTAYAなど5社が昨年から11月11日を「いい買い物の日」と制定してキャンペーンを展開、ヤフーの通販サイトは24時間セールで全商品にポイント11倍の特典をつけ、売り上げを前年の約8倍に伸ばした。

 そこで、ブラックフライデーが日本にどのような形で定着するかどうかだが、筆者の見解を述べると、キーワードは“越境EC”である。日本国内の物品やサービスだけのイベントでは他の国内イベントとの差別化ができないが、アメリカなど海外のブラックフライデーの物品やサービスに国内からも自由に相互アクセスができ、購入できるようになると質量ともにワールドワイドなイベントになり得る。そのためには、日本語が障壁にならないシームレスなインターフェイスが必要である。

 ブラックフライデーが、日本国内からAI(人工知能)やビッグデータなどの先端技術を駆使して世界とつながれば、独身の日に匹敵するぐらいのイベントに成長するかもしれない。そういう思いを抱かせた今年のブラックフライデーだった。

 

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