ゾゾ子会社のアラタナは、戦略的パートナーシップを結んだレディースアパレルのマークスタイラーとの取り組みを皮切りに、アパレルブランドの自社通販サイトを支援するBtoB事業を本格化させる。ゾゾグループが持つデータと物流機能を提供することで、将来的には「アパレルのサプライチェーン全体にイノベーションを起こしたい」と語るアラタナの濵渦伸次社長に、当該事業の成長戦略などについて聞いた。
――再強化するBtoB事業はこれまでと何が変わるのか。
「旧スタートトゥデイコンサルティングから引き継いだ従来のBtoB事業は『通販サイトを作ります』というサービスだったが、これはひとつの案件に取り組む度に、ブランドさん側も含めてかなりの労力と時間がかかっていた。これからのBtoB事業は通販サイトを構築するのをやめ、ブランドさんがすでに運営している自社ECに対し物流機能とマーケティングデータを提供することで、ブランドさんの成長を手助けしていく」
――9月に発表したマークスタイラーとのパートナーシップがその第1号か。
「その通りだ。マークスタイラーさんは運営する自社EC『ランウェイチャンネル』を継続しながら、ゾゾの物流APIにつなぐことで物流サービスが受けられる。これまではゾゾグループが自社ECを受託していない企業に物流機能は提供していなかった」
――データ提供は初めてだ。
「さまざまな反響があるが、『ランウェイチャンネル』はマークスタイラーさんが長く運営し、売上高もしっかりある。『ゾゾタウン』とは競合関係にあると見る人もいる。そのサイトにデータや物流機能を提供するという発表は大きなインパクトがあったようで、たくさんの問い合わせがある」
――EC構築には手を出さないことで事業の成長スピードを上げる。
「そういうことだ。スケーラビリティーをもって展開できることもあり、今期からの3カ年計画でBtoB事業の再強化を打ち出した。中計ではグループ全体で毎年1000億円程度伸ばす計画だが、当社も毎年100億円規模の成長を目指しており、グループの伸び率のシェアとしては当社が10%くらいを担っていく。ゾゾグループでは広告事業も含めてtoBのサービスをもっと大きくし、利益面にも貢献していく」
――アパレルブランドは需要予測や物流面に課題を抱えている。
「それらを解決するのがゾゾグループの各種マーケティングデータと物流機能だ。ブランドさんの自社ECは年率30~40%の成長を続けている企業もあるが、EC用の倉庫を2~3年で倍に拡張するのは大変な投資だ。庫内の人件費も高騰している。物流機能にボトルネックが生じ、本当はもっと売れるのに出荷制限がかかってしまうブランドさんもある。その点、ゾゾグループは大型物流センターの拡充を進めており、自社ECの成長に合わせて投資をしなくて済むのはブランドさんにとってもメリットになる」
「また、『ゾゾタウン』の在庫と自社ECの在庫を一元管理できることも強みで、例えば、1点しかない在庫も『ゾゾタウン』と自社ECの両方で販売できる」
――ゾゾグループの2018年3月期の商品取扱高が3000億円に迫り、提供するデータの精度も高まっている。
「ファッション産業は14兆円規模だが、そのうちトレンドアパレルは3兆5000億円くらいになる。そういう意味ではトレンドアパレル市場の1割近くまでゾゾグループの取扱高が高まっており、ゾゾには"ファッション市場の縮図"とも言えるデータが貯まっている。そのデータを広く開放して需要予測、マーケティングに使うことで大量生産・大量消費型でムダの多いファッション業界を変えていきたい」
――需要予測で大事なことは。
「AIを使ったマーケティングも含めて取り組んでいるが、AIのアルゴリズムはオープン化が進んできている。そうなるとデータの量が大事で、ゾゾグループにはブランド公式のデータがあり、写真もある。また、ECでどういう商品が売れてきたか、いま何が売れているかの情報もあり、データ量では圧倒的に強いと思う。ファッション以外も扱う総合ECモールは家族で1アカウントを使用しているケースもあるが、ゾゾは個人と結びついており、精度が高い。とくに採寸用ゾゾスーツが顧客一人ひとりに結びついているため、データの量と質を強みに戦っていける」(つづく)