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2021.04.15

スタジオ、アプリなどテコ入れ「大手小売りのEC強化策」“ウィズコロナ”の環境整備

 コロナ禍における消費活動の変化を最も大きく受けることとなった大手小売り業界の実店舗。”ウィズコロナ”が見込まれる今年度についても、営業休止や時短運営といった様々な形でリアルの店舗活動に制限がかけられることが予想される。ECとの連携による相互補完の関係づくりは、引き続き重要課題となるようで、各社で模索が続く。全国展開する大手小売り企業を中心に、各社が取り組む直近のEC関連施策を見てみる。

ファストリは大型スタジオ開設

 ファーストリテイリングは4月より、傘下ブランドの「ユニクロ」や「ジーユー」などの本部を構える都内・江東区の社屋「有明本部」の4階を倉庫からオフィスへと改装し、撮影スタジオやカスタマーセンターなどの機能も本格稼働させた。同拠点は国内のEC専用倉庫として運営しており、今回改装したスペースについては、元々、先に出来上がった商品をストックしておく倉庫として活用していた。近年は自動倉庫の効率化が進み、出荷までのスキームが短縮されたことで、ストックスペースを必要としなくなったことから、今回の改装に至ったという。


 まずは、撮影スタジオを開設。企業が独自に所有するスタジオとしては日本最大級の約6000平方メートルの面積を有しており、写真や動画が撮影できる大型スタジオに加え、自然光でも撮影ができるスタジオも開設した。通販サイトで使う商品画像の物撮りや、実店舗で使うPOPといったモデル着用画像の撮影などを行うという。
 同時にウェブ制作部門専用のワーキングスペースも設置しており、最新の商品や着こなしの情報をデジタルに変換できる仕組み。

 カスタマーセンターに関しては、現在運営している山口本社の拠点に加えて、今回の同拠点内にも開設。現在はコロナの感染対策に伴い、1席ずつ開けての使用となるため、まずは60席程度の人員で稼働するが、将来的にはコロナが収束した段階で、100席程度まで増やして運営していく考え。売り場を問わず、顧客から集まった声や要望をダイレクトに経営や本部社員に届け、リアルタイムに商品・サービス開発などに活用する体制を強化していく。そのほか、完成した商品や広告物を実地検証するため、ユニクロの標準店や大型店の仮想店舗も設置。売り場づくりの研究に活用していく。

 なお、同社の今中間期(2020年9月~21年2月)の「国内ユニクロ事業」の内、EC売上高は、前年同期比40・5%増の738億円と大きく伸長。在宅需要にマッチした商品の販売が好調に推移した。

 

今期のニトリはアプリ利用拡大

 ニトリホールディングスでは今期(2021年2月期)はアプリを起点とした経営戦略を強化していく。実店舗とネットの販売チャネルをつなぐ機能を有するアプリの利用者を拡大させることで、2025年にはEC売上高を1500億円まで引き上げることを目指している。

 同社の公式アプリである「ニトリアプリ」はEC機能をはじめ、実店舗とネット共通のポイントや会員証などを有している。また、AIを活用した商品画像検索ツールでは希望商品の写真やスクリーンショット画像を同アプリで読み込むだけで、実店舗や通販サイトにある同一・類似商品が自動検索で表示されて購入もできるなど、実店舗とECを連携させたO2Oアプリとして位置付けている。

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