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2020.12.03

ヤマトHD 相次ぎ新たな取り組み、「ECエコシステム」構築に向け

 

 ヤマトホールディングスがECの物流を支え豊かで持続的な社会を実現するという「ECエコシステム」の構築に向け相次ぎ新たな取り組みに乗り出している。11月19日に千葉県市川市で次世代集配モビリティの実証実験に着手し、11月25日にはスーパーやドラッグストアなど約1000店舗でEC商品の購入者が受け取れるサービスを開始。次世代集配モビリティは免許なしで多くの荷物の集配が行えることに加え二酸化炭素の排出がない電動自転車によりEC商品の配送の効率化を図り、店舗での受け取りは購入者が生活導線上でストレスなくEC商品を受け取れるようにする取り組み。6月に始めた置き配などに対応する新たなEC向け配送「EAZY(イージー)」に加え、EC商品の集配・受け取り手段の一層の進化を進めている。

 次世代モビリティの実証実験は、ドイツのRYTLE社が開発した電動自転車を日本向けにカスタマイズして活用。自転車後部に取り外し可能なコンテナを積載するもので、1コンテナ当たり通常のEC商品であれば50個程度(重量120キログラムまで)を積載でき、これまで利用している電動自転車より20~30個程度多く配達が可能。コンテナを変えることで、1日で最大150個程度(3コンテナ分)の荷物を配達できるという。

 欧州では環境保全から都心部で車両の走行を禁止しているところがあり、電動自転車による配送を行っている事例がある。ヤマトはこうした動向を先取りし次世代モビリティによる集配を行える体制を構築し、EC荷物の配送を持続的に行っていけるようにする考え。

 今後は、今回の市川市といった首都圏を含めた5大都市などでの運用(実証実験)を検討していく。住宅が密集している住宅街のほか、ターミナル駅など自動車が侵入しにくい場所、渋滞が多いところなどでの配送の効率化を図れると見ている。

 RYTLE社の電動自転車は、1回の充電で7時間走行することができる。充電には3~4時間を要するものの、スペアの電池を用いての連続走行も可能になる。

 コンテナの詰め替えは営業所・ターミナルで行うが、将来的には一般の駐車場などでコンテナを引き渡すといった構想もある。最終の集配地により近いところで効率的な運用が行えると見ている。

 なお、今回の次世代集配モビリティによる配送は、「イージー」だけでなく、通常の宅急便も運ぶ。

 

 一方、約1000店舗でのEC商品の受け取りは、英国のDoddle ParcelServicesが提供する「Click&Collectシステム」を導入して展開し、特定のECサイトで購入した商品を受け取れる。これまでもコンビニやヤマト運輸の営業所といった場所での受け取りが可能だったが、今回はスーパーやドラッグスとアをはじめ、米屋、酒屋、パン屋といった各種の小売事業者での受け取りを可能にした。

 デジタル化の進展で様々な店舗でも商品受け取りが行える仕組みづくりができるようになったという。ECの利用者は日々の生活導線上で受け取ることができ、一方の店舗側は来店促進や今後開始するクーポン提供で店舗での購入につなげることができるサービとしている。EC利用者の自宅で配達を待つストレスを解消するほか、コロナ禍で限られた外出で用事を済ませたいとのニーズにも応じるサービスとの位置づけもある。

 店舗側はヤマトから貸与された専用端末だけでサービスの提供が行える。店舗に届いた荷物のバーコードを専用端末でスキャンして荷物を保管。受け渡しは、当該商品を専用端末でどこに保管してあるかを知ることができ、受け取りに来た顧客のスマホの2次元バーコードを専用端末でスキャンし、名前を聞き本人確認して荷物を渡す。

 同サービスの最初の荷主となったのはZOZO。今後新たな荷主を増やしていく。また、個人会員制度「クロネコメンバーズ」の会員は、不在で受け取れなかった荷物について受け取り先として今回のサービスを展開する店舗での受け取りを指定できる。

 店舗のクーポンを作成する機能はこれから取り組む。割引券の提供をはじめとした各種販促を行えるようになり、受け取りに来た際のついで買い、新規顧客の集客などを強力に後押しできるとしている。英国の事例では、受け取り顧客の年齢や受け取り商品の内容、受け取り時間といったデータに基づいたクーポン提供を行っている。

 サービスを提供する店舗は年内に累計2000~3000店舗に増える見込み。

 将来的には返品も店舗で受け付けるサービスを見据えている。また受け取り荷物のダンボールなどの資材回収なども行うことを検討している。

 

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