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2018.10.19

【2019春夏東京ファッションウィーク ハイライト4】望まれる東京メンズの後継デザイナー

  東京ファッションの魅力の一つとしてあげられてきたのが、メンズデザイナーだ。ストリートの空気をまとったモードは世界から注目を集め、多くの人気メンズデザイナーがパリなど海外のファッションウィークに発表の場を移している。その中で東京のファッションウィークは長らくインキュベーション機能を果たしてきた。

 しかし、今シーズンの東京は、空洞化していると言える状況だ。「N.ハリウッド」や「ベッドフォード&クリスチャンダダ」の凱旋ショーは、確かに見応えがある。イキのいい若手も育ちつつある。しかし、ファッションウィークでコレクションを発表するメンズデザイナーの数が少ないように思える。

 10月にコレクションを発表することは生産スケジュール上の問題があるのだろう。しかし、東京の強みであるメンズデザイナーの層の厚みを感じられないのは寂しい限りだ。東京メンズの魅力を発信する後継デザイナーが増えることが望まれる。

(左から)「ベッドフォード」と「クリスチャン ダダ」

ベッドフォード&クリスチャンダダ(BED j.w. FORD & CHRISTIAN DADA)

 海外でコレクションを発表している新世代のデザイナー、山岸慎平の「ベッドフォード」と森川マサノリの「クリスチャンダダ」が、10月17日にアマゾンファッションの特別プロジェクト「Amazon Fashion “AT TOKYO”」でジョイントショーを行った。「ベッドフォード」は6月にピッティ・ウォモで、「クリスチャンダダ」は同じく6月にパリメンズで2019春夏コレクションを発表済みだ。

 会場は東京・渋谷の道玄坂にある駐車場ビル。同ショーのテーマ “RE:ACTION”をあしらったランウェイには、一方からウィメンズ、もう一方からメンズモデルが登場。ウィメンズは「クリスチャンダダ」、メンズは「ベッドフォード」のルックで、両ブランドが交差しながらショーが進行した。

 「クリスチャンダダ」は、シャツにフォーカスしたコレクションを発表。白いシャツの持つ無垢や清楚といったイメージを「クリスチャンダダ」らしいテクニックでひねりを加えている点が魅力だ。抜き襟や、シャーリング、ブラウジングなどの手法で前衛的なデザインに変換したり、”RE:ACTION”のレタリングやポスターのプリントやタグなどの装飾でパンチを効かせたりした。6月のパリメンズで行ったショーで訴求した写真家・荒木経惟のストーリーは弱めた。

 「ベッドフォード」は、テーラードや英国調をベースにスポーツやニューウェーブ、フェミニン要素をミックス。中でも目をひくのは、ベーズリーのアイテム。シャツとしてのノーカラージャケットの下にのぞかせたり、オーバーサイズシャツでマント状に羽織ったり、総柄ルックにしたりしてフェミニン要素を強めた。

 また、注目は両ブランドのコラボアイテム。コーチジャケットなど、「ベッドフォード」の特徴的なディテールの服に「クリスチャンダダ」によるグラフィックをのせたデザインが魅力だ。

「クリスチャン ダダ」2019春夏コレクション
・「ベッドフォード」2019春夏コレクション

 

ミューズ/パラドックス トーキョー(MUZE/PARADOX TOKYO)

 日本体育大学の伝統の応援パフォーマンス「エッサッサ」で幕を開けた「ミューズ」と「パラドックス トーキョー」のジョイントショー。両ブランドとも今シーズンで、アマゾン ファッションウィーク東京への参加は4シーズン目だ。

 前半は、「パラドックス トーキョー」がコレクションを披露。マリンやマウンテンアイテム、コントラストの効いたカラー、ネオプレインなどの素材など、スポーツ要素が目立ち、それらをストリートモードに転換。このスポーツ&ストリートに、フォトプリントなどのカルチャー要素、宇宙や大地、抽象柄などのスピリチャル要素をミックスし、アクティブなルックを提案した。

 K-1王者の武尊、元車いすバスケットボールプレイヤーの堀江航らアスリートや日本体育大学の現役学生もモデルとして登場した。

 後半の「ミューズ」は、和とクラシカル要素をミックスしたルックを発表。「古き良きもの、伝統あるものを未来に繋げていくということをコンセプトに掲げデザインを行なった。」という。

 なにより目をひくのが、「サッポロラガービール(赤星)」のクラッシックなラベルをあしらったアイテム。「サッポロラガービール(赤星)」のフロンティアスピリットに共鳴し取り入れたそうだ。また、シニア世代には懐かしいブランド「トロイ」のアイコンをあしらったアイテムも登場。誕生50周年を記念し、コラボーレーションしたという。

 また、TVプロデューサーでタレントのテリー伊東氏もモデルとしてウォーキング。会場を沸かせた。

「パラドックス トーキョー」2019春夏コレクション
「ミューズ」2019春夏コレクション

アクオド バイ チャヌ(ACUOD by CHANU)

 レザーとファスナーをキーファクターとしたコレクションを発表してきた「アクオド バイ チャヌ」。これまでのダークなイメージから、ブライトなイメージにシフトした。赤や青、黄ベースの総柄のプリント、ウォッシュブルーのデニム、ブライトブルーやイエローのカラーリングなどが目に飛び込む。レゴで製作したヘッドアクセサリーや球状のバッグなど、ポップな遊びも仕組んだ。

 そして、デジタルネイティブなデザイナーらしく、フォトジェニックな取り組みも面白い。ショー冒頭には、ダンスパフォーマンスを披露。ショーでは、俳優の城田優らモデルたちに、何往復もさせ、最後にはモデル全員がパフォーマンスをした後に整列させ、撮影チャンスを増やした。

 ショーには、世界的インフルエンサーであるキャメロン・ダラスも来場。同ブランドのシグネチャーアイテムであるナポレオンタイプジャケットを身につけてショーを見守った。

「アクオド バイ チャヌ」2019春夏コレクション

ウィーウィル(WEWILL)

 “if”をテーマにコレクションを発表した「ウィーウィル」。「もし自分が画家だったら」ということを想像して、画家の一生を詩情豊かに描いた。

 トップに登場したのは少年モデル。オーバーサイズのプルオーバーシャツとパンツが少年の華奢な体型を包み込む。その後、青年、壮年、老年のモデルが登場し、まさに男性の一生を見るようだ。

 カラーは生成り、白、ミリタリーカラー、ブラックとニュートラルなものが中心で、ワンカラーやトーンオントーンのカラーリーングで素材の表情をストレートに伝えた。全体を通じて、シルエットはオーバーサイズ。あらゆる体型の男性が似合う服を提案している。

 フィナーレでは、モーニングを着用した少年を先頭にモデルたちがウォーキング。人生の思い出を走馬灯のように表現しているかのよう。素材や色、シルエット、テーマ設定、すべてにおいて秀逸だ。ベテランデザイナーの力を見せつけるショーであった。

「ウィーウィル」2019春夏コレクション

取材・文:アパレルウェブ編集部
撮影:土屋航

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