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2018.09.25
【ミラノ2019春夏 ハイライト5】ミラノファッションウィーク閉幕 ミラノの帝王アルマーニ、ドルチェ&ガッバーナ、日本人デザイナーらがコレクションを発表
5日目は「マルニ(MARNI)」、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」アーカイブ展とともに今回はショーも行う「フィラ(FILA)」、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」、「ウジョー(UJOH)」など。またパリコレの開幕と重なる最終日の24日には「アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)」がショーを行った。
マルニ(MARNI)
先シーズンのコレクションでは招待客用シートに掃除機、テレビ、木箱など意外なものを使っていた「マルニ」だが、今回は簡易ベッドからアンティークまで様々な種類のベッドが。コレクションノートによるとこれは「親密の概念を反映したもの。身体と深くコネクトすることへの誘い」でそれらが「古典主義を思い起こさせる円形劇場のように配置」されているのだとか。
つまり今回のコレクションは、古典主義芸術の現代的解釈と言えそうだ。それを具現するのは古代彫刻をポップにコラージュしたプリントや裸像の彫刻やオリーブの葉をモチーフにしたアクセサリー、古代彫刻で女神たちが身に着けているようなドレープの効いたドレスや布を体に巻き付けたようなスカート、またはシルクやジャージーなどソフトな素材を使いボディラインを強調したアイテムなど。それらが原色やネオンカラー、油彩絵の具のハンドペインティング風のプリントなどで彩られていたり、レザーやスエードのコートやバイカージャケットなど現代的なテイストとコーディネートされている。
ちなみに6月のメンズでもコレクションでもモデル体型とはかけ離れた素人モデルを一部に使っていたが、ウイメンズでもぽっちゃり体系モデルが登場して、今回のテーマに繋がる古代の女性性を強調しているかのようだ。
ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)
モデルで女優の三吉彩花も登場(写真下右)
前シーズン、そして6月のメンズコレクションに引き続き、「DNA」をテーマに挙げた「ドルチェ&ガッバーナ」。最近、多くの老舗ブランドが原点回帰をテーマにする中、これまでもずっと自分たちの“DNA”を常に意識し、ぶれることなくそのスタイルを貫いてきたてドルチェ&ガッバーナが強く放つメッセージだと言えよう。
そんな姿勢を見せつけるような今回のコレクションでは、もちろんシチリアモチーフ、王冠、金糸やビジュー、宗教的モチーフやなどアイコン的テイストが続々登場するが、中でも特にブラックとフラワーモチーフが主役となっている。ブラックを強調するように、葬式の行列を模した黒づくめの一団からショーを幕開けし、ショーの中盤はバラ、ピオニー、アネモネなどの花のプリントや花の髪飾りを始めとしたデコレーションが一斉に開花する。素材には今シーズンっぽいシフォンやオーガンジーなどエアリーな素材の流れるようなシルエットを中心に、ビスチエやチューブドレスなど体にフィットしたフォルムのモノも。ただ、それをあえてぽっちゃり体系のモデル(またはセレブ)に着せるというのも、今回の革命的な試みだ。6月のメンズコレクションでもシニアモデルから身長低めやぽっちゃり体系、ファミリーから同性カップルまで、様々なタイプの人たちがランウェイに登場したが、このような外見への偏見なき表現は多分、よりウイメンズコレクションにおいて必要とされるものなのかもし
れない。
今回はこの姿勢をドルチェガッバーナ所縁の往年のスーパーモデルやセレブ達も巻き込んで体現。モニカ・ベルッチ、カーラ・ブルーニ、イザベラ・ロッセリーニとその一家等々…これらの往年のスターたちに最近のインフルエンサーが交錯し、そしてそれぞれが自分らしくドルチェ&ガッバーナを着こなす。ドルチェ&ガッバーナのDNAは過去から現在に受け継がれ、いつの時代もどんな人からも愛されるということを証明するようなショーだった。
ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)
今シーズンの「ジョルジオ アルマーニ」のテーマは「THE SHAPE OF COLOUR」。でもその“色”とは、揺れたり反射したりすることによって生まれる“形を伴う色”、ということらしい。
それは今シーズンによくみられるアースカラーや原色&ネオンカラーとは一線を画する、メタリックグレー、ピンクや薄いブルーのシルキーパステルなど、ごく薄くて優しい色だ。反射する光で色が変化するプレキシグラスのドレスやスパンコールを一面に使ったトップス、動きに合わせて表情が変わる光沢素材のロングガウンやゆったりしたトラウザーズなど、それはまるで水に移ったり反射したりする光のように幻想的な雰囲気を醸し出す。
それらを時にはボディにフィットしたかっちりした素材のジャケットに透け素材のソフトなボトムスを合わせたり、エアリー素材のものをレイヤードしたり、またはパッチポケット付きのワーク風ジレや、アノラックのようなスポーツテイストのアイテムがソフトな光沢素材で作られたり、といったコントラストも見られる。
コレクション期間中には、同社のカルチャー施設、「アルマーニ/シーロス」にて、今回の広告キャンペーンの撮影も担当しているサラ・ムーンの展覧会もオープンした。
ウジョー(UJOH)
イタリアの大手ブランドたちが軒を並べる5日目に進出したウジョー(UJOH)。今シーズンはストリートやスポーティテイストがトレンドとなっている現在において、あえて“現代を生きる女性たちに向けたテーラード・スタイル”を追求したとか。これはデザイナー・西崎暢が“自分らしい”と考えるスタイルであるテーラードなエレガンスを残しながらウェアラブルでモダンなワークスタイルを提案すると言う新しい試みだ。
それは例えば、品のあるサテン素材で作られたオーバーオール、カムフラージュプリントながら長めのエレガントなフォルムのスカート、サスペンダー付きのワークパンツに半分に切り取ったようなテーラードジャケットを合わせたコーディネートなどに象徴される。お得意の解体してアシンメトリーに縫い直すという不均衡な絶妙のバランスは健在だが、そのピースは小さ目で、今回はあくまでアクセントとして登場している感がある。
今シーズンは新しいチャレンジをしたかったと語る西崎は、ウジョーのベースとなる黒、白、ネイビーという色使いの範疇を大きく超え、レモンイエローやミントグリーン、またはグラフィカルなプリントなどカラフルな要素を入れ込んだ。職人技に溢れる確かな服作りの技の土台があるがゆえに、これまでにやったことのないようなチャレンジを加えることで、そのクリエーションはさらに厚みを増していた。
アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)
6回目のミラノコレクション参加となる「アツシ ナカシマ」。そのデザインの根底には、クラシックへのリスペクトや、歴史上、目的をもって作られた洋服(例えば先シーズンのミリタリーウエアのような)への深い探求心があり、それを自分のクリエーションで再構築する、つまり、“ネオクラシック”というアプローチを得意とする。が、デザイナー・中島篤曰く、そんななかでも最近では自分の中でクラシック寄りに意識が高まってきているのだとか。
そして今シーズン中島が“クラッシック”として選んだのが1960年代だ。コレクションのテーマは「REVIVAL」。特にファンク、ディスコ、ソウル、R&B、ロカビリーといった音楽カルチャーからのインスパイアが強い。今回も音楽は堂本剛率いるエンドレケリ―が担当したが、ショーのサウンドもコレクションの雰囲気を反映したものになっている。
中島本人が作った「A」のオリジナルロゴモチーフがキーとなり、60年代のサイケデリックアートを彷彿させるかのようにカラフルな配色の幾何学的なプリントになっている。それがヴィンテージ風のドレスからバッグ類に多用される。通常はあまり使わないフェミニンなカットレースも今回はコレクションの雰囲気に合わせてあえて使用しているが、レースをオリジナルで作ることでナカシマ風テイストをキープしている。そんな中にネオンカラーを各所に使ったり、パタンナー出身という強みを生かした独特なカッティングで、ただのヴィンテージの焼き直しではないシルエットを創り出すことで、コレクションにモダンさを添えている。
素材から製法までオリジナルにこだわる「アツシ ナカシマ」独特の世界観は、ミラノにおいても確固たる位置を築きつつある。
取材・文:田中美貴