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2018.09.10
【NY2019春夏 ハイライト2】ソフト&フェミニンが広がる 新クリエイティブ・ディレクターを迎えた「ケイト・スペード ニューヨーク」、「トリー バーチ」などがコレクションを発表
中盤に差し掛かった2019春夏ニューヨークファッションウィーク(NYFW)。「ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)」は新クリエイティブ・ディレクターを迎えてショーを開催。来年2月に“See Now Buy Now”形式のショーを行うことを発表した「ケンゾー(KENZO)」が、今回はフィルム作品のイベントを行った。その2日目と3日目のショーから、フェミニンなスタイルを提案したブランドをピックアップして紹介しよう。リラックスした、ソフトなフェミニンスタイルが波に乗ってきているようだ。
トリー バーチ(Tory Burch)
「トリー バーチ」は、クーパーヒューイット国立デザイン美術館の美しい中庭で、2019春夏ランウェイショーを打った。
今季のインスピレーション源は、彼女の両親であるロビンソン夫妻。よく旅に出かけていたという彼らのスタイルにオマージュを捧げて、カフタン、チュニック、ゆったりとしたドレス、サファリシャツにパンツといったリラックスしたスタイルが繰り広げられた。
「トリー バーチ」らしいプリントも見られたが、今季はソリッドなオフホワイト、ベージュ、カーキといった色彩が目立つ。素材にはポプリンが多く使われ、クリスプな清涼感をもたらす。いかにもバカンスに行くジェットセッターのオフスタイル、という雰囲気だ。
BGMにはサイモン&ガーファンケルの「ミセス・ロビンソン」がかかったが、じつはロビンソンは、トリーの旧姓であり、何より大切なファミリーネームだ。
ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)
今年6月に創始者であったケイト・スペードの自殺が世界を大きく揺るがせたのは記憶に新しい。
2007年にケイト・スペードが自分の名前がついたブランドをタペストリー社に売却。その後ガーリーな路線で同ブランドを大きく発展させたクリエイティブディレクターがデボラ・ロイドだった。そのデボラ・ロイドが退任して、今季は新たにクリエイティブディレクターとなったニコラ・グラスによる初のコレクションとなる。
場所はニューヨーク公立図書館。美しいドームのある空間で、ランウェイが開催された。ニコラは「オリジナルに立ち返り、それをさらに独自の方法で洗練させた」という。
ファーストルックは、黒地にピンクのグラフィックな花柄で彩ったミディドレスで、スカーフを頭に巻き、レトロなタッチを添えている。40年代、そして70年代のビンテージにヒントを得ながら、モダンに仕上げ、パンツスーツやトレンチコートなどワーキングシーンに使えるアイテムが多く提案された。なかでも半透明のPVC素材を使ったピンクのレインコートを重ねたスタイルが目を引いた。色調はピンクからグリーン、マルーン、イエロー、ネイビーなど美しい色彩パレットを展開して、組み合わせ方がシックだ。
ニコラによる「ケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)」は、ガーリー路線から大きく転換して、ソフトなフェミニン路線へとシフトしてみせた。
ケンゾー(KENZO)
ファッションウィーク期間中に、「ケンゾー」はウンベルト・レオンの脚本による短編映画「ジ・エブリシング」(The Everything)をプレミア上映した。同作品には、ミラ・ジョヴォビッチも出演。プレミア上映会場には、ミラも登場して舞台挨拶をした。
内容は、ふしぎな超能力を持つマルチレーシャルな一家の話で、テーマはファミリーだ。なにより目を奪うのは、出演者たちが着こなす「ケンゾー」の服で、物語にうまく溶けこんでいる。ウンベルトの独創的な世界観と、ユーモア溢れるセンスが光る作品となっていた。
アディアム(ADEAM)
前田華子が手がけるブランド、「アディアム」は8日にランウェイショーを開催した。90年代のクラブシーンをインスピレーション源として、ニューヨークの伝説のクラブ「ザ・トンネル」をショー会場とした。
肩パッドの入ったジャケット、ウエストをクリンチしたシルエット、コルセット、PVC素材のコートなどのモチーフがクラブ感を演出し、デコラティブでフェミニンなトレンチコートがキーアイテムとして光っていた。
オフショルダーのジャケットやオーバーサイズのボウタイ、構築的なスリーブといったフェミニンなモチーフと。かっちりとテーラードされたパンツやジャケットのマニッシュさの組み合わせは、「アディアム」の得意とするところだ。また今季は日本刺繍をあしらったアイテムが登場して、ジャポネズムの色も添えた。
取材・文:黒部エリ