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2018.06.17

【ミラノメンズ2019春夏 ハイライト1】継続するスポーツミックスと楽園リゾート ドルチェ&ガッバーナにナオミ・キャンベル、竜星涼登場

 最近では「ピッティ最終日=ミラノコレクション初日」という形が定着しつつあるが、今回も6月15日の夜に「エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)」のランウェイショーで、ミラノメンズがスタート。今回はその前に「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」がウィメンズのリゾートコレクションとリミテッドコレクションのショーを開催。あわせてフェレッティのデザインによるアリタリア航空の新ユニフォームもお披露目も。

 本格的なスタート(というかもはや2日目というべきか)の16日は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」、「マルニ(MARNI)」、「ニール バレット(Neil Barrett)」、「ヴェルサーチ(VERSACE)」、「マルセロ ブロン カウンティ オブ ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」などのショーが開催された。

エルメネジルド ゼニア(Ermenegildo Zegna)

 

 今回の「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」のショーは、ブラジル人建築家オスカー・ニーマイヤーが1968年に作った、ミラノ市外にあるモンダドーリ出版社の本社の庭が舞台。その庭の池の部分に長いミラーのキャットウォークが作られた。

 ラグジュアリーやテーラードテイストとスポーティーやリラックスとの融合というのは、ピッティでも見られた傾向だが、それはまさにクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・サルトリの真骨頂。この部分に注力したかのような今回のコレクションでは、堅いビジネススーツやタイドアップは全くナシ。

 全体的に軽く流れるような雰囲気は防水加工のセンチュリーカシミア、天然素材のタッサーシルクやコットンサテンリネン、極薄レザーなど、軽くて光沢感のある上質な素材たちが醸し出す。一見ハイテク素材のように見えるため、それもスポーティーテイストを与えるが、その質の高さによって同時にエレガンスが共存する。またアイテムにはパーカーやワークパンツ、ジョッパーパンツ、メッシュなどスポーティーなテイストを揃え、色使いもニュアンスのあるペールトーンが多く、またテニスやトロフィー、またはヨットや海のモチーフのプリントや大柄チェックも登場する。

 最後にバックに並んだ全モデルの姿が、この建造物と共に池の水に夕暮れ時の空と共に水に移りこみ、最高の幕切れとなった。

 

「エルメネジルド ゼニア」2019春夏コレクション メンズ

ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)

 

 このところミレニアル時代のインフルエンサー達をモデルとして起用することが多かった「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」、もちろん今回もミレニアルズは重要だが、今回は年齢、体系、または性別さえも超えた、自由で革新的な世界観で“ドルチェ&ガッバーナ愛”を提案する。

 そんな意味を込めて、テーマは、“DNA EVOLUTION”。ランウェイには年配のモデルたちや、身長低めやぽっちゃり体型、または家族で一緒に、はたまた男同士女同士のカップル…などなど、通常のランウェイモデルの範疇ではないモデルが続々登場し、それぞれが自分らしくドルチェ&ガッバーナを着こなす。

 それは同ブランドのアイコン的なテイストのオンパレード。王冠、金糸やビジューを施したフロックコート、ガウン風コートなどのロイヤルテイスト、フラワーモチーフやパスタプリント、エンジェルやマリア像などの宗教的要素、レースやタッセルなどのシチリアモチーフもふんだんに使われる。また今回のテーマの“DG DNA”とともに、“Devotion”“Love is Love”など過去のコレクションのテーマ達もロゴとなって登場する。ただし、シルエットやアイテムはあくまで今シーズンのムードで、ボトムは全体的にワイドめになり、ジョガーパンツ、ミリタリーパンツ、ベースボールシャツやバスケットショーツなど、時代のキーワードであるスポーツテイストのアイテムが多数登場する。

 コレクションでは新しい物だけをこれからの若い層に向けて提案するのはブランドとしては当然のことなのだが、実際には様々な年代にドルチェ&ガッバーナファンはいて、往年の名コレクションを今でも愛している人達もたくさんいる。その辺りをきちんと理解して、あえて前面にそれを打ち出したのは小さな革命かもしれない。そしてそれを思い出させてくれるかのように、同ブランドのシンボルだった、モニカ・ベルッチとナオミ・キャンベルがランウェイに登場。また、日本からは、俳優の竜星涼がモデルとして登場したことも付記したい。

 

「ドルチェ&ガッバーナ」2019春夏コレクション メンズ

ニール バレット(Nel Barrett)

 

 「ニール バレット(Neil Barrett)」のテーマは“SEA/FLOWERS”。 前回のコレクションではメンズウエアの原点としてのユニフォームを軍隊、学校などの“制服”的なイメージで提案したが、今回はそれをスポーツウエアとして展開する。テーマである“SEA”というのは、「地球上の95%の海がまだ未開である」という事実から連想されたアイデアだったから。ゆえにそんな海への挑戦のための、ハイパフォーマンスでテクニカルなダイバーウエアのような生地をトレンチコートやジャケットなどスポーツウエア以外のアイテムにも多用している。

 そこにアクセントで加わるのがアネモネのフラワーモチーフ。大柄をフロントや胸元に施したものから全身プリントまで、スポーティなアイテムと絶妙なバランスでマッチする。ニール・バレットには珍しいカラフルさとフラワープリントには正直なところ一見驚きを感じるが、シルエット自体はシンプルなため、大げさになり過ぎずクリーンにまとまっている。

 

「ニール バレット」2019春夏コレクション メンズ

マルニ(MARNI)

 

 今回の「マルニ(MARNI)」のショーは、会場をこれまで行ってきた自社ショールームから市内の地下パーキングに移し、客席はバランスボールというセッティング。BGMにはピンポンやテニスボールのようなボールの音たちが。クリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソが選んだムードはオリンピック。スポーツというキーワードは今シーズンの一大トレンドだが、リッソはスポーツのユニフォームからヒントを受け、それを解体し再構築。

 テニスウエアのようなストライプ使い、ランニングシャツにバスケットショーツ、ラガーシャツやベースボールユニフォーム、ジョガーパンツにスケーターパンツ、アクセサリーとしてスイム用キャップやベースボールキャップ・・・そして更衣室で纏うバスローブやスリッパに至るまで。それをお得意のコクーンシルエットで仕上げ、原色、パステル、蛍光色と言った様々の色のミックスとプリントやストライプ、チェックでマルニらしさを強調する。ここにも年配モデル、ぽっちゃり系や身長低めの素人?モデルが登場し、“みんなが参加できる架空のオリンピック”を盛り上げていた。

 

「マルニ」2019春夏コレクション メンズ

ジミー チュウ(JIMMY CHOO)

 

スポーツ的なトレンドはアクセサリーにも。「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」もスニーカーやスリッポンを強化し、スポーツ&ストリートテイスト溢れるコレクションを展示会形式で発表。それを天然素材とハイテク素材をミックスし、ステッチやディテールの部分で職人技を強調している。和裁のかがり縫いやノルベジェーゼ製法のようなモチーフをデザインとして入れているアイテムも登場。

 

取材・文:田中美貴

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