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2018.06.16
【ピッティ・ウォモ2019春夏 ハイライト2】クレイグ・グリーン、MCM、ヘルノ、エミリオ・プッチ、フミト ガンリュウ、ベッドフォード――見どころ満載のショーとイベントをラウンドアップ
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例年猛暑の中行われるピッティウォモだが、今回は比較的涼しめで、雨が降ったりやんだりする日も。外で行われるイベントに多少の影響はあったものの、全体的に過ごしやすい4日間となった。
さて、そんな中、今回も様々なイベントやショーが行われた。ピッティ・ウォモのハイライト的な存在である“ゲストデザイナー”として、「クレイグ・グリーン(CRAIG GREEN)」が登場。また同“スペシャルゲスト”として参加する「ロベルト・カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」がメンズの新プロジェクトのローンチをブランドのオリジンであるフィレンツェで発表した。また前回の高橋盾デザイナーの「アンダーカバー(UNDERCOVER)」、宮下貴裕デザイナーの「タカヒロ ミヤシタ ザ・ソロイスト(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」による合同ショーに続き、今回も、「デザイナー・プロジェクト」で選ばれた「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」や「ベッドフォード(BED.J.W. FORD))など日本勢の活躍も目立つ。
また70周年を記念してブランドの歴史を展示した「ヘルノ(HERNO))、トッリジャーニ庭園でミニショーとパーティー形式のイベントを行った「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」、ブランドのリニューアルのお披露目としてブース展示とランウェイショーを行ったMCM、2月に発表した「モンクレール・ジーニアス」のプロジェクト第1弾となる「フラグメント(Fragment)」によるデザインのコレクションローンチイベントを行った「モンクレール(MONCLER)」、マネキン会社のボナヴェリとのコラボでインスタレーションを行った「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」など。
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クレイグ・グリーン(Craig Green)
第94回ピッティ・ウォモ・イマージネのゲストデザイナーとしてボーボリ庭園でショーを行った「グレイク・グリーン」。アイテムの各所に赤のロープをあしらったり、エレクトリックカラーの金魚のひれのような布をパンツや袖のサイドに閃かせたディテールがあったり、ランニングをレイヤードしているようなトロンプルイユを多用したり、はたまた人間のオーラを形どるような木枠を持ったモデルが各所に登場したり…とかなり不思議でインパクトのあるディテールの数々。そしてパステルからヴィヴィッドカラーに至るまでの色や、幾何学模様から印象派の絵のようなプリントまでオンパレード。洋服自体は、実はまるで作業着や囚人服のような感じの、ユニフォーム的なシンプルで機能的なアイテムが多く、逆にそれがディテールや色の強烈さを引き立てている。
最近は様変わりしてきたとはいうものの、基本的にはクラシックな紳士服の見本市として知られてきたピッティとは対極を行く、かつ伝統的メンズファッションの存在自体に疑問を投げかけるようなコレクションだった。
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フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)
コム・デ・ギャルソングループにおいて「ガンリュウ(GANRYU)」のデザイナーとして活躍していた丸龍文人が自分の名を冠して立ち上げた新ブランド「フミト ガンリュウ」。そのお披露目ショーがフィレンツェ郊外に位置するコンテンポラリーギャラリーで行われた。水の滴る音をBGMに、また“WATER”の文字があしらわれたTシャツが登場するなど、水から連想されるクリーンなイメージがコレクション全体に。
ファーストルックから各所に登場した中東の民族衣装のようなロングチュニックや洋服を着ないで垂らしたようなレイヤード、ワイドで長めのジョガーパンツやキュロットパンツなど、インパクトのあるバランス感は強調されつつも、モノトーンをメインにしたシンプルなシルエットゆえにきれいにまとめられている。ネオプレンを中心としたハイテク素材やスポーツウエアのディテールを多用して、快適で機能的なストリートウエアに仕上がっているが、そこにも漂うモード感は、ガンリュウ時代の究極の個性をそぎ落として抽出したからこそ生まれるものなのかも。
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ベッドフォード(BED J.W. FORD)
2017年秋冬コレクションでのランウェイデビューから、たったの1年半で海外デビューを果たした山岸慎平率いる「ベッドフォード」。レオポルダ駅で開催されたショーでは、テーラードの正統派ジャケットや英国調のパターンを使ったメンズクラシックなアイテムを使いつつ、フリンジ、刺繍、レースなどフェミニンなディテールを加えたり、またはメッシュやパーカ、ハイテク素材などのスポーティーな要素を盛り込んだりといったミックスチャーで盛りだくさん。切りっぱなしの裾やレイヤードで作るアシンメトリーなシルエットなども凝っていて、絶妙にテーラードストリートが強調されている。ヨーロッパに向けての好調な滑り出しを果たしたようだ。
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エムシーエム(MCM)
新デザインチームによる初のコレクションを大々的にローンチした「MCM」。ドイツ語で空気・大気を意味する“ルフト”コレクションと名付けられているところから、スカイダイビングなど空に関するスポーツからのインスピレーションが各所に。シルエットはスカイダイビングのユニフォームから、またはパラシュートに使われるような生地やベルトモチーフが使われたり、たくさんの大きなポケットがついている。ドガナ会場で行われたショーではダンスパフォーマンスからパラシュートで降り立つ仕掛けが印象的だったが、そこにも空と地を自由に旅するイメージが込められているかのようだ。
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ヘルノ(HERNO)
ブランド創立70周年を祝い、レオポルダ駅にアーカイブモデルやブランド所縁の品々を展示した「ヘルノ」。また単に歴史的な製品を見せるだけでなく、本社内オフィスにある、CEOクラウディオ・マレンツィの机や先代のクラシックカー、そして実は日本上陸50周年でもあるため、日本の映像やビジネスパートナー奥田商事との親交の歴史の展示など、ヘルノという会社自体の温かさが伝わるような展示になっていた。
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エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)
同じく歴史を物語る展示では、「エミリオ・プッチ」が、プッチ宮を解放して、イタリア随一のマネキン会社ボナヴェリとのコラボで、同ブランドの歴史と今を語るインスタレーションを開催。個性的なモデル達にアーカイブモデルを着せたり、プッチプリントをペインティングしてあるだけでなく、マネキンたちによるショー風景やバックステージなども再現した。
取材・文:田中美貴