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2024.09.13
「ラッドミュージシャン」ブランド30周年ショーを開催 ドラえもんとのコラボも
「ラッドミュージシャン(LAD MUSICIAN)」は、9月11日に恵比寿ガーデンホールで、ブランド30周年を記念した30th ANNIVERSARY SPRING SUMMER 2025 COLLECTION「STILL ALIVE」を開催した。
10年ぶりとなるランウェイ形式でのコレクション。1万日以上継続してこられたことへの感謝の気持ちを込めた今回。黒やベーシックなデザインを通して、デザイナー自身や現代の若者の内省的な気分、そしてショーを発表してこなかった10年間の集大成を披露した。
1995年のデビューコレクションからブランド名そのままの、ド派手なショーを開催。見る人をトランス状態に追い込むような映像などを背景に、プリントやグラフィック、色、さらにレコードを入れるカバンなど、独創的なデザインや見せ方を続け、疾走感のあるコレクションを発表していた「ラッドミュージシャン」。六本木で発表したイベント的なコレクションも強く印象に残っている。前回の20周年コレクションでも、宇宙的あるいは未来的なムードのプリントや演出でコレクションを発表した。30周年のコレクションではどんなショーが見られるのか。
しかし、今回のコレクションは全く異なるものだった。受付で渡されたノベルティは、ギターを肩にかけて俯いたドラえもん。会場はステージのカーペットからカーテンまで全て黒で、足音や鳥の声、風の音が流れている。
syrup16g(シロップ16g)のライブ演奏を背景に登場したのは、黒、黒、黒。ダークトーン。黒のフーディやパンツを着た少年のようなモデルは、フードで顔を隠し、うつむきながら歩く。そこに疾走感はない。ジャケットやパンツ、ニットなどは全て黒。ミニマリズムあるいは寡黙と呼べそうなデザインが続く。未来的ではない。
「10,738DAYS」や「ラッドミュージシャンは健在だ」などと英語で書かれたプリントがあっても、服は黒。黒いバッグには、ノベルティにも使われたドラえもんが小さく描かれていた。花畑のようなプリントや、花と猫のプリントも、夜の風景やモノクロ写真のようなムードだ。流れるようなラインが美しいジャケットやコート、パンツ。「ラッドミュージシャン」のデビューや当時のコレクションも、1990年を知らないであろう少年のようなモデルたちは、激しい演奏の中をうつむきながら歩き続けた。
フィナーレには、ドラえもんとのコラボレーションによる黒や白のTシャツが登場した。うつむいたり、物思いにふけったようなドラえもんや、壊れてしまったようなのび太。2002春夏コレクション「NEW FUTUR」で発表したコラボレーションでは、漫画のプリントを使いながらセリフを書かないことで不思議なムードを作り出したが、今回のプリントも独特なムードで、デザイナーの今の気分や時代性を表しているように見えた。
今のラッドミュージシャンを見せた今回のショー。寅壱など、様々なコラボレーションを行ってきた同ブランド。コレクションを続けていた当時とは全く違う、寡黙とも言えそうなデザインだが、ブランドコンセプトを守りながら、気負わずデザイナー自身の気分や時代性に合わせて変わっていくからこそ、30年間続いているのだろう。
デザイナーは今回のショーについて「コレクションをしていた頃は、色を使っていたのですが、コレクションを行わないと、内省的になるといいますか、ショーを行わなかった期間は自分自身を見直す期間のようでした。服を作っていても、次第により内省的になっていきました。今回のコレクションはその集大成のようなものです。
10年間ショーをやらなかった理由は、単純に飽きたから。20年間で40回ショーを行い、少し飽きてしまいました。それから10年が経ち、まだブランドが続いていることに感謝しています。続けさせていただいたので、何かお客さまに恩返しをしなければと思いました。お客さまが最も喜ぶのはショーだと思い、再びショーを開催しようと決めました」と説明。
「ドラえもんとのコラボレーションは、2002年頃に初めて行いましたが、今回はそのリバイバルです。23〜24年ぶりに再びコラボレーションを行いました。当時はニューフューチャーという企画で、渋谷のクラブでパーティー形式のコレクションを開催しましたが、そこから、このようなブランドに変化していったということがデザインを通じて、より分かりやすく、明確に表現できると感じ、今回登場させていただきました」などと話した。
文・取材:樋口真一