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2024.08.28
「ハルノブムラタ」2025春夏コレクション 彫刻的な形を人に着せることでその本質をあぶり出す
「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」は2024年8月27日、国立新美術館で2025年春夏コレクションを開催した。楽天ファッションウィーク東京に先駆けて発表された今回。“BUT THE IDEA, THE ESSENCE OF THINGS(概念、あるいは物事の本質)”をテーマに、彫刻的な表現や彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの思想を取り入れ、美の本質を追求。静謐なラインや滑らかな素材感を通じて、目に見えない真実を視覚化し、独自の技法や色彩で永続的な美を表現したコレクションを見せた。
現代音楽家キリル・リヒターの生演奏が流れる中、コレクションは彫刻を思わせる白のドレスで始まった。石から削り出されたようなフォルムと素材で輪郭を象るデザインは、リネンに白いプリントを施し、石膏のような雰囲気を出したもの。パターンの工程を楽しむように布を巻き付けたドレスや、一瞬の動きを彫刻化したかのように見えるデザインが続く。彫刻的なデザインとは対照的なアフリカを彷彿とさせる大ぶりの幾何学的な金のネックレスも目を引く。
風になびくようなヌードカラーのドレープドレスや、ジャケットとパンツに合わせるインナー、オレンジのドレープドレスや花のようなドレス、同ブランドらしい透明感のあるシャツ、ソワレのようなエレガントなドレス。ウールでドレープを作り、流れるようなドレープを固定するなど、柔らかな布の流れの一瞬をその場に固定する手法を用いて表現した、ミニマムで現代的でありながら、古代ギリシャやローマ時代の彫刻を彷彿とさせるデザインも登場。対照的なデザインは、オリジナリティと同時に、新しいアプローチや新しい挑戦を強調しているように見える。
また、虹のように光るメタリックな素材を使ったグラデーションのドレスやジャケットは、創業100年を迎える京都の西村商店の工房の協力によって実現した伝統的な焼箔技術が用いられたデザイン。生地の上に銀箔を貼り、硫化させることで化学変化を起こし、色が変化することで、雨にさらされ、時間の経過とともに色が変化していく彫刻のような時間の流れを、1つのドレスの中に閉じ込めるアプローチを試みたという。
彫刻的なデザインや透明感のあるドレープドレス、リアルなアイテムとワークパンツやパラシュートコートなどをコーディネートすることで、削ぎ落とされたピュアなデザインを現代的でリアリティのあるデザインに仕上げている。
「ハルノブムラタ」らしい透明感やピュアなムードのデザインとともに、彫刻的なアプローチやギリシャ彫刻を思わせるドレープの表現など、これまでとは違う新しい表現に挑戦したコレクション。
村田晴信は「日本で開催されたブランクーシの展覧会に触発され、形を作るのではなく、ものの本質を捉える彫刻的なアプローチに興味を持ちました。前シーズンからミニマリズムをテーマに、その本質を追求してきましたが、今回は特に人や衣服の本質を考え、彫刻的な形を人に着せることでその本質をあぶり出すことを目指しました。時間を閉じ込めるアプローチによって、着る人の本質が徐々に浮かび上がることがすごく素敵だなと感じ、今回のコレクションになっています」と語った。
取材・文:樋口真一
Courtesy of HARUNOBUMURATA