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2023.07.12
「ヴェイン」2024春夏コレクション こだわりやテクニックは残しながら、そぎ落とし、フォーカス
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「ヴェイン(VEIN)」は2023年7月11日、東京・江東区のGARDEN新木場FACTORYで、2024春夏コレクションを発表した。
「ヴェイン」単独でのランウェイショーとなった今回。一回的な現象を意味する“アウラ(AURA)”をテーマに、ギャザーなどの同ブランドらしいこだわりやテクニックは残しながら、そぎ落とし、フォーカスしたコレクションを見せた。
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倉庫のような会場。ショーはフラジルという言葉を思い出させる、洗いざらしたような、しわ加工の生成りのシャツに、アシメトリーなスカートにも見える、ショートパンツとバッグのような大きなポケットを付けた巻きスカートのコーディネートからスタートした。
続く、シルバーのジッパーの光が目を引く黒のジャケットと黒いシャツ、切りっぱなしの白いジャケットとパンツには、植物や英文の描かれたスカーフやショートパンツをプラス。ランダムに小さな穴をあけたグレーのブルゾンにも濃いグレーのショートパンツと巻きスカートを合わせる。
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手やハート、植物やイルカ、手書きの文字などを描いた黒いシャツも腰から下しかボタンは閉めず、ボトムスはショートパンツ。袖にギャザーを使った白いシャツと黒のパンツ。そして、フーディのシルエットチェンジ、大きなトラウザーズをウエストを基点に折り畳んで再構成したようなカッティングで足元に広がるリサイズシリーズ。
ディテールや素材変化などはあるものの、全体にはミニマリズムと呼べそうなデザインで、リラックスしたムードやリアリティ、涼しげな雰囲気が強調されている。前回のブルーのようなアクセントカラーは使わず、白、黒、生成りなど色も絞り込んだ。切りっぱなしの白いTシャツと白いパンツでショーは終わった。
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シャツのVゾーンを大胆に見せた着こなしやショートパンツなど、体を見せるデザインはあるものの、ここ数シーズン、ウィメンズを中心に増えていたアフターコロナのニュールックとでも呼べそうなクチュール的な美しさとは対照的。いい意味でのノンシャランとも言えそうなデザイン。コロナ禍で快適性やリラックス、機能性のある服を経験した後に求められる、アフターコロナの新しいミニマリズムやメンズデザインを提案したようなコレクションだ。
「今回はデザイン、スタイルともポイントをフォーカスし、カラーパレットやテクニックも取り払って、楽観主義というか、これくらいでいい、気楽に行こうという自由な発想をヴェインで表現したかった。それはアタッチメントではできなかったし、合同ショーでも難しかったこと。最後のルックは、白いパンツと白いTシャツでいい、それだけでかっこいいし、みんな着飾ることもないじゃん、というメッセージも含めている。今回は単独ショーだったので、その辺もすべて開放することができた」と榎本光希。
また、落書きのような文字やドローイングについては「(テーマの)AURAを象徴しているのだが、昨日何食べたとか、犬飼っているんだっけとか、そういう会話を書いて、つなぎ合わせたもの。1回きり、2~3時間の会話がコレクションピースになった。コロナでできなかった人と人とのコミュニケーションが1番のぜい沢だということを象徴していると思う。絵も葉っぱの天ぷらとか、適当なんだけど、それでいい、その時間を共有したことに意味がある。そういうグラフィックを作りたいと思った」と話した。
文:樋口真一