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2023.06.03

「ヒロココシノ」2023秋冬クチュールコレクション 相反する要素をリミックスしながら、着る人を美しく見せるデザインを追求

 「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」2023秋冬クチュールコレクションが2023年6月1日、東京・渋谷のWITH HARAJUKU HALLで開催された。「ヒロココシノ」クチュールコレクションは、「ヒロココシノ」ならではの洗練されたエレガンスにシーズンのエッセンスを加え、品格に満ちたデザインに仕上げたもの。

 

黒い壁に飾られた、ビルが乱立する都会の夜景と光を想起させる抽象画を背景に行われた今回。コレクションは鮮やかなジレ(ベスト)と機能的なダウンで作られたワンピースからスタートした。ジレはクラシックなオートクチュールのようなエレガントなムードと1990年代のグランジをほうふつとさせる前衛的なムード、ワンピースはミリタリーテーストとチュニックのような気品を併せ持つ。軽そうな素材で作られたピンクやグリーンのパンツスーツはマニッシュでありながらも、ゆったりとしていて、ストライプのシャツと組み合わせる。

 そして、クラシックな千鳥格子のジャケットとミリタリーテーストのコートや、千鳥格子と機能性の象徴ともいえるミリタリーテーストの素材をドッキングしたコート。千鳥格子とプリーツのコーディネート。クラシックなクチュールドレスのような、ケープ付のワンピースやジャケットとパンツ。さらに、絵画作品を服にしたようなデザインやオリエンタルムードとドレープドレス、構築的ジャケットと陰影を強調したプリーツドレスのコーディネートなど、相反する要素が共存する、ハイブリッドやフュージョンとも呼べそうなアイテムやコーディネートが続く。


 バレンシアガやクリスチャン・ディオールが世界のファッションをリードした、1950年代のオートクチュールのエレガンスや立体感と機能性や東洋的なムード、着物や墨絵、書道の世界、絵画や折り紙の平面性、東洋と西洋など、相反する要素を共存させてきた「ヒロココシノ」 。今回のクチュールコレクションでは、女性の体の美しさを賛美するニュールックの次に現れた、1950年代のクラシックや1990年代の前衛性など相反する要素をリミックスしながら、リアルな分量と着る人を美しく見せるバランスを追求し、体型をカバーすることも考慮したようなデザインを見せた。

 


 コシノヒロコさんはクチュールコレクションについて「大量生産ではなく、その人のための服を作っていければと考えていました。すばらしいスタッフがいることでクチュールコレクションができました。エレガントなものをカジュアルに着られるコレクション、アートとファッションが同じというレベルのコレクション、いつまでも古くならない、いつまでも着られる服を作りたい」とコメント。



 また、コロナウィルス感染症以降デジタル形式で発表しているプレタポルテコレクションについては、「今日のようにリアルなショーは大切。ですが、ショーを大きくしても見られる人は限られている。何か新しいことができないかと探っているところです」と話した。

 



 コロナ前には大規模なショーを開催し、ファッションデザイナーとともに画家としてアートとファッションの境界線を超える表現にもチャレンジしてきたコシノヒロコさん。世界のファッションウィークが正常に戻るとともに、サスティナブルに取り組んでいるように見せかけた取り組みがグリーン・ウォッシュとして否定され、ファッションでも本質が求められている中で、今後のプレタポルテコレクションとクチュールコレクションの展開も注目されそうだ。

 

取材・文:樋口真一

Courtesy of HIROKO KOSHINO

 

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