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2019.06.07

【2020春夏NYメンズ ハイライト】NYで2020春夏メンズコレサーキットが幕開け 「アレキサンダー ワン」にはローラも登場

 米ニューヨークのメンズファッションウィークが今年は1ヶ月繰りあがる日程となって、6月に行われた。ちょうど2020年クルーズの展示会時期とも重なり、プレゼンテーションやショーが5月30日から6月5日の期間に行われた。その中からランウェイとプレゼンテーションをピックアップしてハイライトとしてレポートしよう。

アレキサンダー ワン (Alexander Wang)

 「アレキサンダー ワン」は、ニューヨークの名所であるロックフェラーセンターで、メンズ、レディースの2020春夏コレクションのランウェイを打った。冬にはスケートリンクになる中庭を使い、道路からは一般客も鈴なりになって見物するという賑わいぶりだ。

 今回のコレクションはブランドのDNAであるアメリカン・スポーツウェアをカジュアルラグジュアリーに再定義して、そのパイオニア達への敬意と未来への想像に想いを込めて作られたという。

 ランウェイは4つのパートに分かれて展開された。ファーストルックはブラウンのロングコートで、張りだした肩とリーンなシルエットが力強い。続くルックもレザーコートやパンツスーツなど、80年代後半から90年代のワーキングワードローブをカジュアルにアップデートしてみせた。

 第2のパートは女性のためのリラックスウェアだ。アンダーウエアをアウターウェアとして着るトレントを掘りさげ、ロゴのウェストバンドやスリップドレス、官能的なスタイルを提案。90年代を思わせるハイレグのショーツや極端にアシメントリーに仕上げたスカートもセクシーに攻める。

 第3パートでは、ブレザーやデニム、フリンジのレザーといったアメリカンカジュアルを、「アレキサンダー ワン」の流儀で解釈してみた。極端に絞ったウエストラインやフレアアウトしたクラシックブレザーにオーバーサイズのデニムやコーデュロイのパンツを合わせて新しいプロポーションを提案してみせた。胸元に大きな星条旗を編み込んだニットもいかにもアメリカンでいながら、逆さまにしているのが、このブランドのスピリッツを感じさせる。

 フィナーレは、ホワイト一色で、アメリカンスポーツウェアをアップデートして、強い女性像を打ち出した。ラストルックはホワイトのボディコンシャスミニの胸元にロゴをあしらったルックで、かつてのアメリカンカジュアルを今や新たに牽引する、「アレキサンダー ワン」の立ち位置を示すかのようだ。

 ランウェイにはタレントのローラがモデルとして海外コレクション初のランウェイデビューを果たした。一般人も鑑賞できるという、パブリックに還元したショーであったのも、良い試みだろう。

「アレキサンダー ワン」2020春夏コレクション

N.ハリウッド(N.Hoolywood)

 尾花大輔が率いる「N.ハリウッド」は、BMCC大学内のパフォーミングアーツセンターで、2020春夏コレクションのランウェイを打った。

 プレイドのスーツ、キルトスカートを思わせるボトムズ、ピンストライプのジャケットにスクールボーイパンツ、トレンチコートといった英国のモチーフが展開される。さらにパンクを彷彿とさせる赤のプレイドに、スーパーロングな袖というスタイルも登場した。

 ミリタリーやワークウエアという同ブランドがシグネチャーとしてきたスタイルを守りつつ、全体的にクリーンにまとめられている。カラーパレットには、多くがカーキやブラウンの同系色コーディネイトでありつつ、ブルーのオールインワンやイエローのパーカ、タイダイのように鮮やかな色を生かしたスウェットなどが目を引いた。また錠剤をカラフルにプリントしたピースは、チャイルディッシュ・テイストのトレンドへの目配りも感じさせた。

「N.ハリウッド」2020春夏コレクション

NYMD(New York Men’s Day)

 NYMDでは午前と午後にわけて、さまざまなデザイナーたちのプレゼンテーションが行われた。出展者ブランドは、「ティモ ウェイランド(Timo Weiland)」、「アブシム(Absym)」、「フェイン(Feign)」、「デイヴィッド ハート(David Hart)」、「アミロック(Amirock)」、「ヴァシリス ロアジデス(Vasilis Loizides)」、「トッド ヘッサート(Todd Hessert)」、「タナカ(Tanaka)」、「カワキイ(Ka wa key)」、そしてNYMDの常連ブランドである「クラマ−&スタウド(Krammer&Stoudt)」、「ディセンダントオブシーヴス(Descendant of Thieves)」、「プライベートポリシー(Private Policy)」らも合同プレゼンテーションを行った。

 2010年にデビューして、エッコ・ドマーニ賞やCDFAのインキュベータープログラムに選ばれた「ティモ ウェイランド」。今季はカラフルなスーツにシャツという、フォーカスを絞ったコレクションを発表した。ジャケットはシングルとダブルス、ボトムはすべてテーパードされたスリムなシルエット。スーツはレッド、ピンク、ホワイト、パステルブルーといった鮮やかな色彩で、プリントTシャツと合わせて軽快さを演出する。アイウエアリテイルの「ゼニ(Zenni optical)」でのサングラスコレクションも同時に披露した。

 「デイヴィッド ハート」は、ICP(インターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィー)の協力のもと、アイコニックなニューヨークのストリートを写した写真を、ジャケットやシャツとパンツのセットアップに印刷したピースを登場させた。

 ロンドンを拠点とする「カワキイ」は、今季初めてニューヨークに進出。花柄や透け素材を多用したジェンダーレスなスタイルを、舞踏をまじえた形式で披露した。「ヴァシリスロアジデス」もフリルをあしらったドレスやデコラティブなスタイルで、ジェンダーレスなルックを提案する。

 「ヨウジヤマモト」や「ユニクロ」でのデザイナー経験がある田中さよりが、2017年にNYを拠点にしてローンチしたブランド、「タナカ」。「時代、性別を超えて永く愛される衣服作り」を信条としている。ジェンダーレスで機能的なワークウエアに、ブラックライトに浮かびあがる染料をあしらって、新しさを加えてみせた。

 多くのブランドでジェンダーレス、あるいはダイバーシティが打ち出されていて、インクルーシヴを好むアメリカのZ世代(10代〜20代)に向けたマーケットを感じさせる。

アンタイトルド コレクティブ(Untitled Collective)

 2シーズン目を迎える「アンタイトルド コレクティブ」。ニューヨーク大学卒のジェイソン・チェン(Jason Jeong)と、パーソンズ卒のミン・キム(Min Kim)によってローンチされた同ブランドは「機能的で心地良い服作りをモットーとしている」というコンテンポラリー・スポーツウエアだ。2020春夏は、予想のつかない天候の変化をテーマとして、機能的なウェアを提案した。

 4つのポケットつきのジャケットやカーゴパンツ、パーカなど、ミリタリーからインスパイアされたピースは、非常に軽量な素材で出来上がっている。カーキ、オリーブ、ブラック、オフホワイトという控えめな色彩が、アジアらしい抑制された雰囲気を醸し出していて、「そういう服がニューヨークにはないから作りたかったのです」とジェイソン・チェンは語る。

 

グランジー ジェントルマン(GRUNGY GENTLEMAN)

 

 ジェイス・リップスタインが率いる「グランジー ジェントルマン」は、ランウェイ式のショーを打った。ジェイスはNFLのスタイリストとして活躍してきた経歴があり、スポーツウェアとしての同ブランドを立ちあげ、ニューエラとのコラボによるNBAのベースボールキャップ・コレクションも出している。

 シグネチャーになっている6本のストライプをモチーフとして施したトラックスーツなどスポーティヴなスタイルを展開して、今季はカラフルなカラーブロックも目についた。

フリーマンズ スポーティング クラブ(FREEMANS SPORTING CLUB)

 2005年に創設しニューヨークらしいレトロなクロージングで人気を集めてきた「フリーマンズ スポーティング クラブ」。日本の商社である八木通商の傘下となり、新体制のもとコレクションを発表した。

 デザイナーに就任したのは、ブランド創設時代にクリエイティブ ディレクターのアシスタントを務めていたニコ・レンチェッコ・イナガキ(NIKKO LENCEK INAGAKI)。彼のデビューコレクションとなる今季は、カリフォルニアの砂漠リゾート、パームスプリングから着想を得た。コンパクトな街でありながら様々な表情を持つ点に注目し、様々な要素をミックスしたという。

 大きなプレイドのシルクセットアップスーツ、ガンクラブチェクのスポーツジャケット、ざっくりとしたサファリジャケットなど、USメイドのしっかりした作りながらも、リッチでリラックスしたムードが漂う。カジュアルアイテムは、マドラスチェク、ウエスタンシャツ、ヘンプコットンのデニムジャケット、アロハシャツ、そしてオリナジナルパターンのリーフやフラワーモチーフなど、ピースフルなフィールを感じる。またイージーケアのキルティングのセットアップなどコンテンポラリーなアイテムも魅力。様々なスタイルの男性たちが集っているリゾートと都市をイメージさせるコレクションだ。

「フリーマンズ スポーティング クラブ」2020春夏コレクション

 

2020春夏ニューヨークメンズコレクション

 

(取材・文:黒部エリ、アパレルウェブ編集部)

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