NEWS
2019.03.25
【2019秋冬東京 ハイライト3】ファセッタズム、サルバムに続け 「TOKYO FASHION AWARD」第5回受賞者がショーを開催
「アマゾン ファッション ウィーク東京2019秋冬」が閉幕。最終日である3月23日には、「TOKYO FASHION AWARD」第5回受賞者たちがショーを行った。同アワードは、世界での活躍が期待されるデザイナーを選定表彰し、海外での活動サポートするもの。これまで、「ファセッタズム(FACETASM)」や「サルバム(sulvam)」などが受賞し、海外コレクションシーンで活躍している。第5回受賞者は、2019年1月のメンズコレクションシーズンに、伊フレンツェで開催されたピッティ・イマージネ・ウォモやパリ・メンズ・ファッションウィークでコレクションをすでに発表しており、今回は凱旋ショーとも言える。
アーネイ(ANEI)
(c) JFW Organization
最終日のトップバッターで登場したのは「アーネイ」。ブランド初のランウェイショーは「First」をテーマとし、経験したことのないような緊張感の中での様々なチャレンジを表現した。ショーのキャスティングから構成、音楽など、服作りとはまったく異なる経験だったが、楽しんでできたという。コレクションは、一切の柄を使用せず、ニュートラルカラーの無地で、カッティングやフォルムのディテールや美しさを強調した。フーディーやフリースジャケットなどスポーティーなアイテムが中心だが、日本全国から選りすぐったというこだわりの生地が上質な質感を生み出し、コレクションにエレガントな表情を加えていた。日本製にとことんこだわるのは、「次や、その次の世代にまで日本の良いものを残していきたい、繋いでいきたいといく気持ちでやっているから」とデザイナーの羽石裕氏は語った。
ノブユキ マツイ(Nobuyuki Matsui)
「ノブユキ マツイ」はユニークな発想でショーを繰り広げた。コンセプトは「Air-cushion/緩衝材」。このコンセプトの発想も独特だ。アマゾンファッションウィークに参加するということで、アマゾンに関係のあるものを考え、コンセプトである緩衝材を思いつき、そして、ファッションにおける緩衝材とはなにかを考えた時に第2のコンセプトであるダウンに辿り着いたのだという。ただ、ダウンがテーマのひとつとはいえ、テーラードに強いブランドとしてダウンを使用しすぎると立体的になりすぎるため、ウエスト部分や後ろ身頃のみに配置するなどしてメリハリのあるシルエットを作り上げた。
ランウェイには羽毛が入ったエアクッションが敷き詰められ、モデルがウォーキングするとパチパチと弾ける斬新な演出をしたのだが、羽毛を透明な緩衝材の中に入れて可視化することによって、ダウンがどのようなものなのか、着る人に認識してもらいたかったのだという。また、裏返しやデフォルメされたステッチのディテールも、洋服がどのように作られていて、どれほど手が込んだものなのかを認識してもらうためのもので、服を大切に着てもらいたくて考えられた表現なのだ。
ランウェイ直後には、併設する会場で羽毛と緩衝材で作られたジャケットのインスタレーションを見せるという演出も行った。初めてのランウェイながら、コレクションや見せ方は成熟している印象があるが、デザイナーの松井信行氏は、「すべてアトリエで手作りをしているためコストも上がるし量産もできない。パリなどの展示会を経験して、理想と現実のバランスをとることが今後の課題だと思った」と語った。
レインメーカー(RAINMAKER)
(c) JFW Organization
2013年秋冬コレクションでブランドを立ち上げ、京都を拠点にしている「レインメーカー」は、ブランドらしい和と洋のモダンなミックスを見せた。
端正なセットアップに作務衣のようなガウンを合わせたり、アランニットの編みを斜めに交差させて着物の襟合わせのように見せたりと、エレガントなコレクションのディテールに遊び心を忍ばせている。ブルゾンやガウン、サコッシュに乗せられた鮮やかな蝶は、京都在住の画家、木村英輝氏とのコラボレーション。
同ブランドのデザイナーとクリエイティブ・ディレクターである渡部宏一氏と岸隆太朗氏は、「アーティストや工芸作家らが身近にいて、関係を構築してコラボレーションできるというのが京都という土地の強み。地元の関係を大切に、これからもコラボレーションしていきたいという」と語った。
チノ(CINOH)
「チノ」は、グランジをテーマに、クリーンなシャビールックを創り上げた。パターンはペイズリーやオンブレー、レオパードなど、グランジらしいものを用いたが、素材をシルクやビスコースにすることで、動くたびに揺らめく滑らかな光沢で、エレガントな大人の装いに仕立てていた。
同ブランドも、ピッティやパリで展示会に参加したが、今後、ラグジュアリーブランドとして確立していくため、北米やアジアですでにあった取引をいったんすべてストップし、今回ゼロからのスタートを切ったという。「こだわって作った本当に良いものを届け続けていきたい」とデザイナーの茅野誉之は語った。
ポステレガント(POSTELEGANT)
2017年秋冬コレクションよりスタートした「ポステレガント」。もともとユニセックスを意識してコレクションを作っていたが、初のランウェイとなる今回のショーでは実際にメンズモデルも登場し、男女問わずに着られるアイテムを多数発表した。
シーズンごとのテーマは設けていないが、今シーズンはアウターを中心にコレクションを組み立てたという。チェスターやステンカラーコート、モッズコートなど、ベーシックなアイテムながらも素材の張り感や独自のパターンで、印象的なエレガンスを紡ぎ上げた。「意味のあるディテールが好き」と語ったデザイナーの中田優也氏。真っ赤なアウターにつけられた特徴的なポケットはその”意味のあるディテール”の代表だと言う。実際、エレガンスの中に見せる遊び心としてひときわ映えていた。
パリやピッティで展示会を経験し、「クオリティや日本製への信頼を得られたことは大きな手応えだった」と同氏はコメントした。
ジエダ(JieDa)
「アマゾン ファッション ウィーク東京2019秋冬」のフィナーレを飾った「ジエダ」。1990年代のレイヴ・カルチャーを現代風にアレンジした。会場をクラブに見立てたかのような光や音の演出、そして縦横無尽にウォーキングするモデルたち。疾走感と勢いを感じさせるショーを行った。
二面性を持たせたというコレクションは、左右で異なるパターンを用いたり、トレンチコートなどトラディショナルなアイテムにブルゾンというスポーティーなアイテムをレイヤードしたり、正面から見ると普通のジャケットなのに背面はケープ風になっていたりと、カルチャーやアイテムのカテゴリーを飛び越え自由な発想で生み出した表現が多数見られた。また、「ディッキーズ(Dickies)」、「フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)」、「エレッセ(ellesse)」などとコラボレーションアイテムも発表した。最後に登場したデザイナーの藤田宏行の背中には「平成最後の東京コレクション」と刺繍が入っており、ファッションウィークのフィナーレにふさわしく、会場を最大限盛り上げていた。
見応えのあるコレクションを発表した受賞者たち。しかし、ショー後のインタビューでは、海外でのセールスについて「オーダーがつかない」と答える受賞者も見られた。海外のプレスやバイヤーに揉まれて、グローバルレベルに洗練されることを期待したい。