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2019.03.19

【2019秋冬東京 ハイライト1】アマゾン ファッション ウィーク東京開幕 初日は10周年「ドレスアンドレスド」、12年ぶりの東京開催「ジュンコ コシノ」がコレクションを発表

 徐々に春の日差しに切り替わってきた2019年3月18日、「アマゾン ファッション ウィーク東京2019秋冬」が開幕した。3月23日までの6日間、渋谷ヒカリエを中心に51ブランドが2019秋冬コレクションを発表する。

ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)

 スターターとして口火を切ったのは「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」。ブランド10周年を迎える今年は、昨年より更なる試みとして初のメンズのみに挑戦。テーマに掲げた “Portrait”は、インスタレーション形式で開催された。

 チクタクと怪しげな時計の秒針音からショーがスタート。クロップドのシャツを着た全身を白でまとめたモデルと顔をフェイスマスクで覆った全身黒づくめのモデルが対になるように登場。ランウェイから個室に入ると何やら意味深な動作をして、フェイスマスクのモデルたちは部屋に残り、一方は退室をしていく。

 会場には巨大なプロジェクターが用意され、固定カメラから映し出される映像はさながら取調室のような閉塞感を感じさせる。モノトーンにヌードカラーで構成されたコレクションでは腹部を露出させたクロップドトップス、胸元がシースルーになったシャツ、コートやジャケットのインナーにきたタイトなチューブトップスなど、フェティッシュさが空間の演出と共に漂う。複数の男性による英語での語りは淡々と流れて行き、残された黒いフェイスマスク側の人々の独白を聞いているようだった。テーマを通して自身の男性性を見つめたと言うが、ブランドのスタンスであるユニセックスについても考えたという。

 10年という節目を迎えた「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」。「小さなブランドではあるが、そこからのアバンギャルドを提案していきたい」と話し、インスタレーションの形式に関しても「自分としては面白いと思った。作り上げていくのが楽しい」と、アプローチの見せ方も挑戦的な姿勢を見せた。既存のブランド支持をおさえながらどう舵を切っていくのか。10年の節目から始まるこれからに注目していきたい。

「ドレスドアンドドレスド」2019秋冬コレクション

アオイ ワナカ(AOI WANAKA)

 「休日のご褒美」と銘打った今回のショーは、自身の顧客がインスピレーション。日々仕事や子育てに忙しい女性たちに、「休みの日に思い切った気持ちになる服」をコレクションにのせた。

 序盤の落ち着いたアースカラーは、キレイめなアイテムにもリラックスムードが漂う。中盤の透かしの入ったノルディックなニットは、休日おこもりデーから散歩まで活躍しそうなアイテムだ。ウルトラスエードなど扱いやすい生地を用いたり、コーディネートを引き締めるハーネスベルトは「両手が不自由にならないようにバッグを付けた」と、利用シーンを意識した。休日の中で家でのリラックススタイルから、外でのお洒落着も揃えたという豊富なコレクション。顧客目線を忘れない思いやりのあるデザイナーの提案は、「きっと顧客のリラックスもご褒美も叶えるだろう」と思える大人の女性たちに嬉しいワードローブが揃ったコレクションだった。

「アオイワカナ」2019秋冬コレクション

フクシマ プライド バイ ジュンコ コシノ(FUKUSHIMA PRIDE by JUNKO KOSHINO)

 福島県とのクリエイティブ伝統工芸創出事業により商品及びブランディングプロジェクトを行っていた「コシノ ジュンコ」。3年目を迎えた今回は「新しい風がふく島(服/ふく/服)」をコンセプトに、初の地方自治体によるファッションウィーク参加に至った。

 「新しいことを挑戦することが福島には大事だと思い、ファッションを通じて表現した」と話すコシノは、東京で12年ぶりのコレクション発表だ。基幹コンセプトである「対極の美」は、モノトーンの配色、アシンメトリー、折り紙のように重ねられたり、気泡のようにふくらませた円形であったりと33ルック、全55着で表現された。今回のコレクションでは福島県の10の事業者による生地や素材、手法によって制作され、「コシノ ジュンコ」ならではのパワフルな独自性で「FUKUSHIMA  PRIDE」を強く押し上げた。

「コシノ ジュンコ」2019秋冬コレクション

ジェニー ファックス(Jenny Fax)

 「ジェニー ファックス」は、東京・南青山の2フロアにわたる会場で、螺旋階段を使ったショーを開催した。

 甘いカラーやバルーン型のドレスやアンダーウェアとミニスカートが一体になったようなアイテムなど、ガーリーでドーリーなイメージ。それらのピースをまとうのは、ボサボサのロングヘア、傷メイクの少女風モデルたちだ。被り物や義歯アクセサリーも登場し、ブランドの持ち味である不思議さや毒気は健在。新郎新婦のクマを乗せた「ジェニー ファックス」流マリエでショーを締めくくった。

「ジェニーファックス」2109秋冬コレクション

ザ ダラス(THE Dallas)

 「可愛かった!」とショー後に、女性たちの感想が次々上がった「ザ ダラス」のテーマは“EMO= Emotion(感情) ”。ダンテの長編叙事詩「神曲」の“暗い森”からインスピレーションされた今回のコレクションは、1934年に建てられた西洋館「ロアラブッシュ」で開催。またブランドとして初の「EMO」というオーガニック由来のパフュームも発表し、会場をパフュームの香りにつつんだ。

 アンティークの中に飛び込んだような空間で行ったショー。“暗い森”でたくましく生きる動物のごとく、力強いウォーキングのモデルたちでスタートした。鶏冠(とさか)のようにつけられたヘアアクセサリーのモデルには、ダークベースの花柄やレオパード、パイソン柄がふんだんに用いられた。ショルダー部分の切り替えや光沢のあるレザーはパワフル。ボウタイやビッグフリル、大ぶりのアクセサリーのドラマティックな動きは野性味のあるフェミニンさを見せた。

 市場トレンドで当確の存在となったジャケットはゆとりのあるボックスシルエットがメイン。最後はブランドお決まりのケ・セラ・セラの曲で締めくくり、ブランドのポジティブなアティチュードで締めくくった。

 「SNSによって抑えがちになった感情やなんとなく流されている感情を、ショーを通して揺り動かしたかった」というデザイナーの田中文江。ショーの後には、「今回で日本でのショー形式での発表に一区切りをつけたい」と表明。海外も視野に入れているとの意志もみせており、これからの展開を楽しみにしたい。

ティート トウキョウ(tiit tokyo)

 夜の虹をイメージしたランウェイが印象的な「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」は、思わず夢の中にいるようなハッピー&ピースな世界観。リラックスして目をつむったときに思い描く空想の世界を表現した今回は、パジャマのようなルーミー感がどこか漂う。カラフルな花柄のマキシワンピースもトップス部分はコンパクトにしながら、腕周りはゆったり。ヒラヒラと流れる裾の足元はパキッと映えるネオンカラーのブーツに楽しさをギュッと締め合わせた。中盤から登場するダイヤ柄のニットはレトロなほっこり配色で、レタードで古着のような親しみやすさだ。終盤のキルティングアウターはテントラインで軽やかにランウエイを舞った。

 キャスティングに関しては、「夢の中だからこそ体現できるような様々なキャスティングにし、モデルの個性にあったヘアメイクにした」とダイバーシティーを意識した構成となった。初日の締めを担った「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」。明日からのファッションウィークを楽しみにさせてくれる、まさに夢の中の虹を見たいショーとなった。

「ティート トウキョウ」2019秋冬コレクション

ミューラル(MURRAL)

 2019秋冬アマゾン ファッション ウィーク東京(AFWT)開幕前の3月16日には「ミューラル」がランウェイ形式でコレクションを発表。村上春樹著の「ノルウェイの森」にインスピレーションを受けたという今シーズンは、“エバーグリーン”をテーマにブランドの新しい可能性を追求した。

 ショーは、コレクションのキーワードである「クリアリティ(透明さ)」「イレギュラリティ(不規則)」「バイタリティ(生命力)」を表現するように三部構成で行われた。

 第一部ではノルウェイの森の登場人物である”直子”が実在したらどんな女性かを具現化したのだという。ピュアでクリアなカラーで紡ぎながらも立体感や素材のテクスチャから生まれる陰影によって美しい物悲しさを感じさせる。

 第二部では同作品が持つ奇妙な文体や不思議な空気感を、アウターを重ねるレイヤードやエレガントとスポーティという相反する要素を掛け合わせることによって表現した。そして第三部では、今シーズンのテーマを一番表しているという「ノルウェイの森」の映画ロケ地で撮った写真をコラージュプリントにしたアイテムが登場。そのプリントをオーガンジーにのせることによって雪解けの輝きをイメージし、これまでのブランドのイメージにとらわれない力強さを表現したという。

「ミューラル」2019秋冬コレクション

ユキ フジサワ(YUKI FUJISAWA)

 また、同日にはテキスタイルレーベルの「ユキ フジサワ」が原美術館でインスタレーションを開催した。蚤の市で手に入れた絵や写真から箔プリントを起こし、ヴィンテージのドレスにプリントを施して発表。プリントに用いられた絵は1800年代のものまであるといい、遠い記憶や大切な思い出を現代につなぎたかったと藤澤ゆきデザイナーは語った。2020年に閉館が決まっている原美術館を会場に選んだのも、同館がこれまでに経験してきた物語がその場所に詰まっていて、その記憶もインスタレーションの一環として観客に感じ取ってもらいたかったからだという。

取材・文:じまつむぎ、アパレルウェブ編集部

撮影:土屋航

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