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2019.03.01

【2019秋冬パリコレ ハイライト2】“日常やリアル”“パリのストリート”…脱ロゴでファッションを楽しむ

 2019秋冬パリコレクション前半戦では、“日常やリアル”、“パリのストリート”などがキーワードになっている。クラシックやベーシックの流れは数シーズンに1度定期定期に現れるトレンド。だが、今シーズンはカジュアルなアイテムやマニッシュなスーツなどをベースにしながら、ウエストをマークしたり、アシメトリーやオーバーサイズなどトレンドの80年代的要素を取り入れたり、民族的なムードをプラスしたりすることなどで、ロゴマークなどに頼らずに、ファッションを楽しむパリの女性たちのように日常と非日常を共存させ、新しさを出している。こうした傾向から、色も黒や白などのモノトーンが中心となっている。

アンリアレイジ(ANREALAGE)

 「モエヘネシー・ルイ・ヴィトン(MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)」が創設した「LVMHプライズ」の2019年のショートリストに選出された「アンリアレイジ」。今回はディテールをテーマに、ここ数年続けてきたハイテク素材を中心とした取り組みとは違う、形を中心とした新しい方向性、あるいは原点に返ったアプローチとでも言えそうなコレクションを見せた。

 ショーの前に、ブランドオフィシャルInstagramにすべての洋服を発表。それを見たことを前提としたショーという実験的な仕掛けを試みた今シーズン。Instagramに掲載したトレンチコートの襟部分をクローズアップした写真にある作品は拡大されることでケープジャケットに生まれ変わる、あるいはTシャツの袖に見えた画像は実はワンピースだったという仕掛けだ。ネームタグはブランケットやマフラーに、アーガイルニットもポンチョコートに。さらに、MA-1の袖はドレスに変身する。そして、「GOD IS IN THE DETAILS(神は細部に宿る)」と書かれた缶バッチ。それは、Instagramで服が伝わるのかというアンチテーゼのよう。

 日本のハイテクを駆使した、ドラえもんの漫画に出てくる未来の服を目指すデザインから、パリや世界からも理解されやすいシュールレアリスム的なデフォルメや、発想法の基本である、大きくしたらどうなるのかなどのストレートなアイデアに変わったように見えた今回のアンリアレイジ。だが、それは前シーズンの東京でのショーでこれまでの代表作を見せた同ブランドが新素材主義とでも呼べそうな実験を始める以前、ブランドスタートからの原点に返りながら、次のディレクションを探る取り組みにも見える。「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」同様に、数シーズン、数年というサイクルでデザインを行う森永邦彦だけに、今回のアプローチがどう発展するのかも注目したい。

マリーン セル(Marine Serre)

 「マリーン セル」は、これまでの未来的な要素と民族的なムードにアンダーグラウンド的な力強さをプラスした。

 入り口からショー会場まで、グリーンのレーザー光線を走らせ、まるで未来に引き込まれていく映画のワンシーンのような演出が施された今シーズン。レーザー光線とスモークの中から現れるのは、それとは対照的なファーやレザーなどを使ったコート、クラシックなチェックを使ったデザイン、得意とする民族的なムードや三日月のモチーフ。そこにボンデージ風ラバーやマスクなど、SMチックな強さをプラス。フューチャーリスティックな演出や未来的なムードと、原始的なものや80年代のティエリー・ミュグレーをほうふつとさせる力強さやタブーともいえる要素をミックスした。

コシェ(KOCHÉ)

 「コシェ」はクチュールとパリのストリートの境界線をなくしてしまったような、独特のミックス感覚によるデザインを更に進化発展させた。これまでも人種のるつぼ、モザイク、グローバルビレッジなど、様々な言葉で表現されるニューヨークと同様に、様々な文化と人種、才能が入り交じるパリとその街を象徴するようなコレクションを見せてきた「コシェ」だが、今回もそれを継続。

 世界中の才能が集まるサッカーチームのように、一人一人のモデルにユニフォームを着せて紹介した今回。デザインも、フラワードレスからサッカーボールをモチーフにしたデザイン。更にこれまでも見せたレインボーモチーフやサッカーのユニフォームや国旗からのインスピレーションなど、同ブランドがこれまで発表したモチーフやデザインを再構築したかのようなデザインも登場した。

ヴィクトリア/トーマス(VICTORIA/TOMAS )

 「ヴィクトリア/トーマス」は、パリのストリートからインスパイアされたコレクション。ウエスタンの要素をプラスしたチェックのシリーズ、フェミニンな花柄とマニッシュなストライプをドッキングすることで仕事にも日常にも対応できるようにしたというデザイン、そして、80年代の雰囲気を少しだけ残したオーバーサイズのニット。そして、「PARIS WEAR」と書かれたデザインやデニム。リアルクローズとコレクションの境界線をなくしたようなデザインだ。

ネヘラ(NEHELA)

 クリエイティブな女性からインスピレーションを受けたコレクションを発表したのは「ネヘラ」。ウエストを絞ったコートやニットと異素材のドッキング、マニッシュなパンツスーツやアシメトリーなコート。80年代的なデザインから余計なボリュームや無駄な要素をそぎ落として、クリエイティブな女性が日常生活で着られるように仕上げた、ミニマリズムとアバンギャルドが共存するコレクション。

 

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取材・文:樋口真一

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