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2019.02.26
【2019秋冬ミラノコレ秋冬 ハイライト5】エレガンスを追求した「ドルチェ&ガッバーナ」、堂本剛氏とのコラボルックを発表した「アツシ ナカシマ」や「ウジョー」でフィナーレ
5日目は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」、「ウジョー(UJOH)」、「アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)」などがショーを行った。
ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)
「ドルチェ&ガッバーナ」の今シーズンのテーマは「ELEGANZA(イタリア語で、エレガンス)」。1月に行われたメンズコレクションと同じテーマを掲げ、真正面から正当派で勝負、という感じ。
ショーの演出に関してもメンズのショーと同様の雰囲気で、古き良き時代の「ファッションショー」の前身である顧客のための新作御披露目会のように、一体ごとに司会者のルック解説が流れる。インフルエンサーやダイバーシティモデルを起用したり、SNSと連動させたりと時代の流れにマッチした仕掛けがなされていた、ここ数年のショーとはがらりと趣向が変わった。
コレクションは1930年代から1960年代までの様々な要素をミックスして“エレガンス”を表現。それを11の章に分けている。まずはオープニングのトータルブラックのメンズスーツに続く、白と黒のマスキュリンスタイル。スリーピース、ハット、フロックコートなどの究極の紳士的アイテムが逆にフェミニンさを引き立てる。続くはペールトーンのケープやガウン、ソフトな素材にフェザーのディテールが効いたナイトウェアのシリーズ。そして同ブランドらしいレオパードプリント。フリンジや金糸の刺繍が施されたアイテムと絡み合いセクシーな女性像を表現。
続いてこちらも「ドルチェ&ガッバーナ」のアイコン的なフラワーモチーフ。これはプリント、ラミネート、フロッキ—素材やラミネート、そしてコサージュや髪飾りなど様々に登場する。そしてツイードを使った1940年代風のマスキュリンスタイル。ヘリンボーン、千鳥格子、グランチェック、ピンストライプなどメンズスーツに使われるような素材の中にドットを加えるなどフェミニンさを。
次は一転して1950年代風のシルエットをシルク、ベロア、エアリー素材など様々なマテリアルとインパクトのあるカラフルな色揃えで表現。その後には、写真家マン・レイや画家ジョルジョ・デ・キリコなどダダイズムのアートピースが洋服の中に。
その後は突然、ウエディングドレスたちが登場。チュール、シャンティーレースなどを使った正統派オールホワイトのドレスたちはやはり女性たちの永遠の夢だ。そこからまた一転して同ブランドお得意のブロケード、ブラックのシリーズ、そしてシークイン・・・といった、ゴージャスなシリーズが続き、「ドルチェ&ガッバーナ」の黒のウエディングドレスでフィナーレへ。
同ブランドの強みをうまく前面に押し出しながら、モノ作りの本質や、上質なスタイルとは何たるものかを示したコレクション。先日、「ドルチェ&ガッバーナ」は今後、広告戦略としてWEBよりも再び紙媒体を強化する、というニュースが発表されていたが、常に時代を先読みする同社がこのような決断をしたのを見ると、今のようなスピードと見た目だけを重視する時代はそろそろ終わりで、クオリティの高い本質を見つめ直す時代が戻ってくるのかもしれない。
ウジョー(UJOH)
コンスタントにミラノコレクション参加を続け、ミラノにおいても知名度上昇中の「ウジョー」。今シーズンはデザイナーの西崎暢の「布の動きに身をゆだねてその時に感じる心地よさを味わってほしい」という想いからスタートしたと言う。そのためにはオリジナルで最新技術を駆使して開発した日本製の生地にこだわったのだとか。
もちろん「ウジョー」お得意のカッティングの技が効いたテーラードテイストは健在なのだが、オープニングから繰り返し登場するサコッシュ、スナップでスリット部分が作られているパンツや袖部分にスナップが施されたトップ類、サイドシームの入ったパンツやジョガーパンツ、キルティング素材のアウター類など、テイストとしてはぐっとスポーティな要素が感じられる。
そんな中に今回特にデザイナーがこだわった独特の布の動きが活かされていたり、部分的に登場するアシンメトリーなディテールだったりが独特の雰囲気を醸し出す。UJOHのロゴが入った大判ストールや、カラフルなライニングなど目を引くディテールが時々登場するのも印象的だ。
また今回はメンズのルックも登場するが、これはデザイナー本人が着たい服だそうで、混合ショーの際によくあるウィメンズとのコンセプトのシェアはなく、あくまで男性的なルックになっている。ここで登場したブルゾンなどのアウター類のカプセルコレクションには、イタリアのサルダリーニ社というメーカーが、モンゴルで調達したカシミヤ素材を社内でフレーク状に加工を施したカシミヤフレークスという素材が使われており、またそれがグースダウンを使用しない100%エシカルな素材であることも追記したい。
アツシ ナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)
もはやミラノコレクションの常連となった「アツシ ナカシマ」。公式カレンダーでは明日までだが、最終日はパリコレクションの初日と重なるため、実質上はミラノコレクションのフィナーレを飾るショーと言ってよいだろう。
今シーズンのテーマは「EROSION」。その「浸食」している様子は、部分的に異素材が使われたピースたちによって表現されている。それはパッチワークのように明確に繋ぎ合わせたというよりは、まさに入り込んでいるような感じの独特なものだ。オーセンティックなトレンチにはデニムや透け素材が、ダッフルコートにはN2Bのミリタリーテイストが、テーラードジャケットには対極をなすモッズコートが食い込んでいる。またマスキュリンなアイテムに透け感のある素材が食い込んでいたり、ルーシュやボアなどのディテールを効かせたりすることでコントラストが光る。それが片方だけ履いたハイソックスや手袋などユニークなスタイリングにマッチしている。
このところアイコンとして前面に出しているAをモチーフにしたロゴがモノグラムになったピースも多く登場。オプティカル模様となってもはやロゴを超えたインパクトだ。そしてここでもモール糸を織り込むことで、生地が浸食されるイメージを表現したと言う。
また富士山から流れる80年前の水を使って描いた、デボン紀から姿や形、機能を変えずに存在し続ける古代魚エンドリケリーや龍のアートペイントがなされているピースにも注目。「ENDRECHERI」として音楽では初回のショーの際からコラボを続けている堂本剛と、今回はこのアートペイントやスタイリングでもコラボしている。この水彩画モチーフに合わせて、後半部分では日本の半纏のようなルックも登場した。それはメタリック加工の未来的なイメージのスカートや、トレーニングウエアのスポーティなイメージとコーディネートされてコントラストを放つ。
もはやマニアの域に達するような、こだわりにこだわりを重ねた「アツシ ナカシマ」のコレクション。すべてのルックが印象的というコレクションはなかなかないのだが、このショーはまさにそれだった。
エムエスジーエム(MSGM)
今シーズンの「エムエスジーエム」のテーマは「ALICE IN WONDERLAND」。「不思議の国のアリス」に登場するようなハートやチェッカー柄のプリントがふんだんに使われている。中でもメインで登場するハート柄はところどころに割れたハートが混じっているのがご愛敬だ。
また「不思議の国のアリス」のイメージに通ずるように、トロンプルイユを各所に使ったり、左右やパーツごとに色を変えたりなど、視覚を紛らわすようなディテールが各所に使われている。あわせて、FLASHARTというロゴのプリントや未来派の絵のようなプリントも登場。
フォルム自体はテーラードスーツやスラックス、レザーパンツなどマスキュリンな要素と、バルーンスカートやルーシュやリボン使いのガーリッシュな要素の両極だが概ねシンプルで、プリントが引き立つような仕組みだ。一方、前回に引き続き、ロゴ使いは少なく、お得意のカラフルイメージもやや控えめ。今シーズンのキーカラーである黒、赤、白をベースにトレンドも盛り込んだコレクションに仕上げている。