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2019.02.22

【2019秋冬ミラノコレ ハイライト1】グッチの凱旋、ベネトンの初参加、MM6など…充実のラインナップでスタート

 このところ一気に暖かくなったミラノでは、初日から好天の中ファッションウィークがスタートした。今回は、初めてランウェイショーを行う「ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON)」が、公式スケジュールの前日である19日の夜に幕開け。前回、不在だったいくつかのビッグメゾン達もミラノに復活すると同時にアップカミングブランド達も多く、密度の濃い1週間になりそうだ。

 20日は「アルベルト・ザンベッリ(ALBERTO ZAMBELLI)」に始まり、「アルトゥール・アルベッサー(AUTHUR ARBESSER)」などのミラノの注目株から、ミラノに戻った「グッチ(GUCCI)」、「ジル・サンダー(JIL SANDER)」、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」、「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」といった初日の常連組が続いた。夜には「モンクレール(MONCLER)」が、「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」の次のステージ、「モンクレー ジーニアス ワン ハウス ディファレント ヴォイスィズ (MONCLER GENIUS ONE HOUSE DIFFERENT VOICES)」を発表した。

ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON)

 ファッションウィーク中のランウェイショーは初となる「ベネトン」。引退した創業者ルチアーノ・ベネトンが昨年エグゼクティブ・プレジデントとしてグループの経営に復帰し、今シーズンよりアーティスティックディレクターにジャン・シャルル・ド・カステルバジャックを起用した新体制の御披露目的なショーだ。

 会場の真ん中ではニット工房にて作業する職人達が。そしてその周りをぐるりと囲むようにランウェイが組まれ、壁にはベネトンとの長年のコラボで世に様々な衝撃を与えた写真家オリヴィエロ・トスカーニによる商品のディテール写真が映し出される。

 テーマは“RAINBOW MACHINE”。テーマ通り、虹のようにストライプ状に層になった原色のカラフルなダウンに始まり、ロゴやブランドネームを各所に使ったアイテム、ブランドを象徴するカラフルニットやデニム、マルチカラーのアーガイルチェックやストライプといった「ベネトン」を象徴するアイテムに加え、カステルバジャックがアイスバーグ時代に一世を風靡し、愛してやまないカートゥーンキャラクター達(今回はミッキーマウスやスヌーピー)、透明素材とカラフルアイテムのミックスなど、デザイナーゆかりのモチーフもふんだんに登場する。

 またカステルバジャックがかつて自分のコレクションで発表したテディベアの縫いぐるみをつなぎ合わせたコートを彷彿させるアイテムは、ニットメーカーとして始まったブランドゆかりの羊で表現。またかつてコミュニケーションにおいて社会性の強いメッセージを発信して世を震撼させた「ベネトン」の姿勢は、カステルバジャックが過去のコレクションで発信していたエコロジーメッセージで再現し、その共通性や連結が各所に感じられる。

 まさに「ベネトン」らしくもあり、同時にカステルバジャックの個性も爆発するコレクション。確固たるルーツは守りつつ、新しいクリエーションで大いに攻める新体制のベネトンは、同ブランドが破竹の勢いで世界を征服していった80~90年代を知らないミレニアル世代の若者たちの間で、再度大きなブームになりそうだ。

「ベネトン」2019秋冬コレクション

グッチ(GUCCI)

 前回、特別にパリでコレクションを発表した「グッチ」は、今回はミラノの拠点「グッチ・ハブ」に戻ってのランウェイショーを行った。いつもインビテーションに趣向を凝らしている「グッチ」だが、今回のインビテーションは木箱に入った仮面。

 これは今シーズンのテーマ“THE MASK AS A CUT BETWEEN VISIBLE AND INVISIBLE”に直結する。コレクションノートでは、「『人(person)』の語源は、役者個人の顔を覆う仮面に由来し、観客に対する役者の役と役割を示すラテン語の『ペルソナ(persona)』からほとんど変わらずに伝えられてきた」という哲学者ハンナ・アーレントの説を引用しているが、今回のコレクションは、仮面は隠すものではなく、本来の自分を自由に開放するものあり、それによって個々の多様化の表現を可能にするためのものだという解釈の基に、仮面(または眼帯であったり大きな眼鏡だったり耳カバーだったり)をキーとして登場させているらしい。

 今回も様々なテイストが同居するが、今回は特にアイテムそもそもの形をデフォルメしたり崩しているものが目立つ。クラシックなジャケットは大胆なピークラペルに肩を強調したボックスシェイプ、クラシカルなチェックのスーツはパンジャビスーツのようなエスニックなフォルムに。ドレスやシャツ、スカートにはボリューミーなフリルやルーシュ、ビッグプリーツが使われる。そこに攻め具のような釘付きのボンデージネックレスが使われているかと思えば、膝用のサポーターやプロテクターなどのスポーティアイテムも。クラシックとスポーティ、ロマンチックとダークが共鳴し合っている。

 刊行物やアート支援など様々な方法でダイバーシティを謳っている「グッチ」。フェティッシュな部分が目立つ今回のコレクションは一見挑発的に見えるが、その多様性の大切さを訴えるメッセージは一貫している。

「グッチ」2019秋冬コレクション

アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)

 今シーズンの「アルベルタ フェレッティ」はお得意のロマンチックなイメージを(良い意味で)完全に裏切った、マスキュリンと80年代風パワフルセクシー。前半部分はチェスターコート、ワイドラペルのパワーショルダージャケット、金ボタンやスタッズ、フリンジなどでミリタリーやウエスタンテイストを入れたジャケットやシャツ、ライダースジャケットやジャンプスーツなどマスキュリンなアイテムのオンパレード。カラーもオープニングのオールホワイトに続くのはブラック、グレー、そして一部登場するチェリーピンク。ところが中盤からは一気にゴールド、シルバー、ラメ、ミラーにビジュー…といったゴージャスセクシーな雰囲気に。ドレスはお得意のロングシフォンドレスからは程遠い、ボディコンシャスなものやモンロードレスなど。前回の現代的なデイリーウエアの提案に続き、今回もこれまでのイメージを打ち破るようなチャレンジングなコレクションだった。

ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)

 今回の「ヌメロ ヴェントゥーノ」の今回のテーマは“SUSPENS”。ブライアン・デ・パルマ監督の80年代の作品「DRESSED TO KILL(殺しのドレス)」からインスピレーションを受けていると言う。

 それは完璧なドレスやクラシックなコートをざっくり切りさくと、そこからはお茶目なガーリッシュスタイルが顔を出す……、という感じで、決め手はバックスタイル。正面から見るとミニマルなアイテムの背中部分がジップで大きく開くか、後ろで全開して、ガーリッシュなショーツを見せる。ベアトップのドレスの後ろには帯のように結んだ大きなリボン。ブルゾンの後ろの部分に長いトレーンがついたアイテムも。時にはトップはマニッシュなトレンチコートを半分に切り落とし、ボトムはトランスペアレントなスカートにショーツという組み合わせをしたり、カーディガンの方を落としたり、反対にして着たりといったコーディネートの遊びも。

 マスキュリンとフェミニン、セクシーとガーリッシュといった二面性の遊びはデザイナーのアレッサンドロ・デラクアが常に大切にしているテーマだが、それが特に強調された今回のコレクション。ドラマチックだけど曖昧……、そんな匙加減はデラクアならではの技だ。

「ヌメロ ヴェントゥーノ」2019秋冬コレクション

ジル・サンダー(JIL SANDER)

 クリエイティブ・ディレクター、ルーシー&ルーク・メイヤーの舵により好調な「ジル・サンダー」。場所は前回同様のパネトーネ工場の廃屋を使っているが、今回はその雰囲気をそのまま生かした演出。

 そんな中、全体的に流れるのは、オリエンタルなリラックスした雰囲気だ。アオザイのようなドレスやカンフー着のようなセットアップ、チュニック、キモノスリーブなどがさりげなく登場する。Aラインのシャツやコートをワイドパンツとあわせたり、コクーンライン、またはボックスタイプのジャケットにワイドプリーツのスカートやドレスなど、コーディネーションはロング+ロング。縦に長いシルエットのロングコートやロングドレスも登場するが、あくまで流れるようなシルエットやカーブを活かした作りになっている。東洋的と言っても押しの強いエスニック感はなく、露出していないのに官能的な絶妙なバランス感が漂う。

「ジル・サンダー」2019秋冬コレクション

 

モンクレール(MONCLER)

 「モンクレール」は、ちょうど1年前に発表されて大きな話題をさらった新プロジェクト「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」のさらに進化したステージとして、「モンクレー ジーニアス ワン ハウス ディファレント ヴォイスィズ (MONCLER GENIUS ONE HOUSE DIFFERENT VOICES)」のプレゼンテーションを行った。継続組に新加入デザイナーを加え、今回も世界で活躍中の8人のデザイナー達が、モンクレールのプロダクトや価値をそれぞれのパーソナルな視点から提案するカプセルコレクションを発表。今回は、「リチャード・クイン(RICHARD QUINN)」、「ピエールパオロ・ピッチョーリ(PIERPAOLO PICCIOLI)」、「1952」、「グルノーブル(GRENOBLE)」、「シモーネ・ロシャ(SIMONE ROCHA)」、「クレイグ・グリーン(CRAIG GREEN)」、「1017 アリクス 9SM(1017 ALYX 9SM)」、「フラグメント ヒロシ・フジワラ(FRAGMENT HIROSHI FUJIWARA)」、「パーム・エンジェルス(PALM ANGELS)」の9コレクション。駅の高架下のトンネル部分を使い、一般公募の招待客も含めたプレゼンテーションは大盛況となった。

・「0 モンクレール リチャード・クイン
・「1 モンクレール ピエールパオロ・ピッチョーリ
・「2 モンクレール 1952
・「3 モンクレール グルノーブル サンドロ・マンドリーノ
・「4 モンクレール シモーネ・ロシャ
・「5 モンクレール クレイグ・グリーン
・「6 モンクレール 1017 アリスク 9SM
・「7 モンクレール フラグメント ヒロシ・フジワラ
・「8 モンクレール パーム・エンジェルス

 

エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 Maison Margiela)

 今シーズンは、ミラノでプレゼンテーションを行った「エムエム6」。今後は様々な都市に発表の場を移すことになるようだ。スピガ通りのブティックで行われたこのプレゼンテーションでは、アイテム、そしてインテリアまでがオールホワイトのパデッド(パッド入り)が施されている。コレクションに関しては、「エムエム6」のクラシックなアイテムをパデッドにしており、アウターやパンツもさることながら、Tシャツやシャツなどのアイテムにいたるまでパデッドになっている。オールホワイトの中にもメッセージ入りだったり、ミラノのドゥオモのモチーフだったり、デコラティブな要素も。

 モデル達はミラノで一般の人たちからセレクトしたシニア世代の女性たちを起用することによって、コレクションはより自由で深みのある表現がなされている。

 また、今回発表したうち象徴的な5つのパデッドアイテムは“see now buy now”カプセルコレクションとして限定販売される。

「エムエム6 メゾン マルジェラ」2019秋冬コレクション

ブルネロ・クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)

 「ブルネロ・クチネリ」は、プレゼンテーション形式でコレクションを発表。“MINIMAL ALLURE”というテーマで、同ブランドのヘリテージを抽出して、ニュートラルカラーをメインとしたミニマルなスタイルの中に現代的で洗練された女性らしさを強調したコレクション。90年代風のイメージを活かしつつ、タートルなど70年代のイメージやハイウエストパンツなどの80年代イメージのアイテムも入れているが、いずれも上品な部分だけを抽出したようなバランスの良い展開。優しい色を使ってシンプルなデザインに仕上げているがゆえに同ブランドならではの素材のよさや仕上げの美しさがより強調される。

2019秋冬コレクションを見る

 

取材・文:田中美貴

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