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2019.02.16

【2019秋冬NYコレ ハイライト4】新人にスポットがあたる一方、エスタブリッシュブランドは独自性を訴求

 全体的に規模が縮小されたニューヨーク ファッションウィークで、明るいニュースといえば、日本人デザイナーの「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」が、著名スタイリストにインスタで見出されて、いきなりNYコレクションのデビューを飾ったことだろう。インスタから世界につながる時代になったのが興味深い。今季も何人かのデザイナーがNYコレクションでのデビューを果たしている。

 一方、長くNYでエスタブリッシュしてきたブランドにとっては、どうターゲット層に訴求しつづけていくのか、そのブランドらしさを打ち出すところが多かった。最終日にかけてのハイライトをレポートしよう。

3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)

 「3.1 フィリップ リム」は11日にコレクションを発表した。オープニングはブラックのトレンチコートで飾り、シンプルな方向性を位置づけた。張りのあるデニムを使って、シルエットでの遊びや予想外のプロポーションを見せたピースが続く。

 丸みのあるダブルフェイスのウールを使用したコクーンコート、オーバーサイズのウエストベルト付きケープ、タイトウェストのワイドなパンツ、同素材のウールデニムを使用したベルト付きユーティリティジャケットなど、ボリュームを強調したアイテムが多い。袖をオープンにして腕を出せるアイデアも目についた。

 色彩はブラック、ホワイト、ブラウン、カーキ、グレーといったベーシックカラーが主流を占めて、さらにグリーンが色彩パレットに加わっている。

 今季は、モダンでワードローブとして不可欠なアイテムに、上品な実用性、そして“エレガントなスポーツウェア”“ユースフルなテーラーリング”といった、相反する要素を加えていると、フィリップは語っている。「3.1 フィリップ リム」の持ち味である、スポーツウェアの機能性を持ち、シンプルかつクリスプなコレクションとなった。

 また今シーズンから同ブランドは“ファーフリー”、すなわち脱ファー宣言をした。今後はエキゾチックスキン、および毛皮(フォックス、ミンク、オオヤマネコ、チンチラ、アストラカン、パイソン、アリゲーター、ワニ、トカゲ)を使用しないという。

 「バランスを大切に、自分たちの小さい一歩一歩が最終的に大きなシフトを作る」というフィリップの哲学から、「サスティナブルなファッションの取り組みをしていく」と語っている。

「3.1 フィリップ リム」2019秋冬コレクション

アナ スイ(ANNA SUI)

 ランウェイの背景にはヴィクター・モスコソを始めとする、サイケデリックなロックやアートのポスターが掲げられていて、また実際のポスターを集めた一角では、来場者たちがポスターを購入することもできる。

 今季のテーマは“POPTIMISTIC”。意訳すると“ポップな楽観主義”といった意味だろう。ランウェイにカラフルなウィッグをかぶったモデルたちが登場すると、たちまちサイケなロックの時代に誘われる。

 のっけからツイードジャケットとミニのワンピースという60年代初頭のスタイルをカラフルに仕立てて、そこからプリントと色彩を自在にミックス&マッチさせていく。

 「アナ スイ」は今季、画家のメアリー・ブレア—がディズニーのために描いたストーリーボードで、中でも「不思議の国のアリス」と「ピーターパン」から色を選んだと言うが、あたかも夢を見ているように、暗いなかに明るい色が弾けるファンタジックな色彩の取り合わせが独特だ。

 カラーパレットはサファイヤブルー、ティール、アンバー、ボルドー、フーシャ、アメシスト、マゼンタなどのジュエルトーンが展開され、ことにオレンジ系が多いのが特徴だ。

 フェイクファーコートやプリントで飾られたパッファーコートなど、アウター、もカラフルでポップだ。素材では、光沢のあるジャガードやシェニールなどが印象的だ。

 「アナ スイ」らしい解釈のサイケデリックな世界が広がった。

フーン ミー (PHUONG MY)

 ベトナム出身のフーン・ミーは、初のNYコレクション参加で、12日にランウェイデビューした。フーン・ミーは1988年生まれ。雑誌編集者やファッション業界でのクリエイティブディレクターを務めて、2013年にブランドをローンチ。旗艦店はホーチミン市にあり、世界20ヶ国で扱われている。

 今季のコレクションは“サヨナラ”と名づけられており、彼女にとって、ローカルなファッションからの別離と、また仏教学者である金子大栄からの影響だという。

 スタート前の会場では、薄物の布が扇風機で空中を、ふわりふわりと舞っていたが、布の持つ面白さに、フーンは着目したようだ。

 カラーはホワイトから始まり、背中に折りたたんだボウから長いトレーンが流れている。布を巻きつけたり、ボウを前や後ろで結んだり、オリガミに発想を得たという通り、布の畳み方や立体的な構築の仕方は、さまざまな工夫とアイデアが盛りこまれている。

 素材はシルク、コットン、オーガンザ、シルクチュール、レースやウールニットを使用しており、ことにイヴニングドレスは動くにつれて流れるようなチュールが美しい。色彩はホワイト、レッド、ブラックとソリッドで、布の見せ方とフォルムに徹底している。布の可能性に挑戦する意欲を見せたコレクションだった。

「フーン ミー」2019秋冬コレクション

マイケル・コース (MICHAEL KORS)

 13日に、「マイケル・コース」はウォール街にあるチップリアーニで、メンズ、ウィメンズのコレクション、全74ルックを発表した。

 “ドリーミング”と題して、会場には巨大なミラーボールとシャンデリアをつり下げて、ランウェイをディスコに仕立ててみせた。そこに登場するルックは、70年代のNYのナイトシーンを彷彿とさせるグラマラスなスタイルだ。きらめくラメやメタリックカラーのロングドレスがセクシーさを香らせる。

 今季は“50年代のNYウエストサイドの文化を取りこんだ、70年代”をイメージソースにしたという。マイケルのノートによれば、劇場や映画、休日のダンサーたち、ディスコナイト、アルヴィン・エイリー、ザ ロシアン ティールームなどをイメージソースに挙げている。

 ワンピースはハンカチーフヘムのスリップドレスや、フリルを施した花柄のジョーゼットのドレスなど、繊細でフェミニンなものが多く、そこにかっちりしたミリタリージャケットやピーコートを組みあわせて、マニッシュとフェミニンをかけあわせてみせる。オースリッチの羽飾りや、たっぷりしたファーコートで、グラマラスさを演出する。見た目は本物に見えるが、すべてビーガンファーだ。ジャケットの肩は、膨らませたレッグ・オブ・マトン・スリーブが特徴的だ。

 パッチワークも70年代調を色濃く出すモチーフとなっていて、パッチワークがコートにもバッグにも見られた。フリンジをつけたバッグや編みあげブーツも70年代らしいアクセサリーだ。

 ダンサー柄のプリントや、バレエセーター、レッグウォーマーやアームウォーマーは、ダンス文化に対するオマージュを感じさせる。

 また特筆すべきは、NYのナイトカルチャーを代表する伝説のクラブ、「スタジオ54」とコラボレーションを組み、カプセルコレクションを製作したこと。ロゴ入りのトップスやアウターが登場した。色彩では、ゴールドやカッパーのメタリックが存在感を放ち、「スタジオ54」のロゴもゴールドに輝く。

 メンズも同じく70年代のテーマがつらぬかれていて、シャツの剣襟を外に出す着こなしやシルバーのラメジャケット、パイソン革のブルゾンにディスコの時代が立ちのぼる。メンズも今季はヒールつきのシューズを履いたという徹底ぶりだ。

 フィナーレでは、往年の大スター、バリーマニロウがサプライズで登場、78年の大ヒット曲「コパカバーナ」を熱唱して、大歓声を浴びた。

「マイケル・コース」2019秋冬コレクション

ボス(BOSS)

 インゴ・ウィルツが手がける「ボス」は13日に、メンズ、ウィメンズのコレクション、全70ルックを発表した。

  ギャラリーのキュレーターにインスピレーションを得たというコレクションは、キャメルカラーから幕をあける。「ボス」のシグネチャーであるテイラードのスーツやコートが提示され、シェアリング、アルパカウール、ダブルフェイスのカシミアといった良質の素材が展開される。

 メンズではパーカやジッパー付きのニット、ジョガーパンツなどが組み合わされて、スポーツテイストが加味されているが、パッファーコートもバルキーにならず、すっきりとしたシルエットにまとまっている。

 カラーはソリッドで、キャメル、ホワイト、ブラックを基調としていて、ダークピンクやイエローが差し色として挟みこまれる。

 ウィメンズではストライプやカラーブロックのモチーフも見られ、キルティングのスカートやパンツも提案された。丸みを帯びたコクーン型のコートや、ロングマントも目を奪った。ラストルックは、ホワイトのプリーツロングドレスで、エレガントさを添えた。

「ボス」2019秋冬コレクション

取材・文:黒部エリ

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