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2000.10.27

「ジュン アシダ」が2026春夏コレクション発表 “Dual Motion”をテーマに伝統とモダンを融合

 「ジュン アシダ(jun ashida)」は2025年10月24日、東京・渋谷のブティックアシダ本店内「Flair」で2026春夏コレクションを発表した。テーマは“Dual Motion ― Fluid Harmony(流動する調和)”。長年受け継がれてきたブランドのオリジナリティとエレガンスを礎に、現代女性が求める軽さや快適さ、リラックス感を加え、クラシックとモダンを自然に融合させたコレクションを見せた。

 

 ここ数シーズン、映像や鏡を使った幻想的な演出などを行ってきた「ジュン アシダ」。今シーズン、会場にはカーペットが敷かれ、椅子には作品解説のリリースと白い鉛筆が用意されるなど、1940年代のオートクチュールのサロンショーを想起させる趣向が凝らされた。モデルが番号札を掲げる代わりに、背景のディスプレーに「#1」といったルック番号や素材、柄、デザインのクローズアップ画像が映し出され、来場者は服を間近で確かめながら観賞できる仕掛けだ。芦田多恵は「素材の良さや細部のこだわりを立体的に感じてもらいたかった」と狙いを語る。

 

 コレクションは、コットンローンにアニマルプリントを施したカーキのブラウスとフレアパンツからスタート。サファリやミリタリーの要素を取り入れながらも、全体を貫いたのは「軽やかさ」だ。リネン混のワンピースには共生地とレザーを組み合わせたリバーシブルベルトを合わせ、ストレッチコットンリネンのパンツスーツはクチュール的なディテールを備えつつもすっきりとした仕上がりを見せた。

 

 ペイズリー柄のパジャマパンツや、スカーフプリントを取り入れたセットアップ、ハンカチーフヘムのワンピースなども登場。ドローストリングやフリルといった要素が動きを添え、日常に取り入れやすいリアルクローズでありながら、リゾート感や華やかさを感じさせる。

 

 中盤では、ストレッチリネンビスコースのパンツスーツが登場。切り替え部分から襟を断ち出す立体的なデザインは、クラシックなオートクチュールやかつての「ジュン アシダ」を想起させながら、複雑になりがちな構造をシンプルに仕上げ、軽快さを実現した。コットンジャージーのジャケットは装飾を排し、女性の体の美しさとパターンの精緻さを際立たせた。

 

 グラフィカルなプリントのブラウスやパンツも取り入れられ、都会的で洗練されたムードを演出。リネンやコットンなどの天然素材に、シルクやジャージーを組み合わせることで、素材感のコントラストを生かしている。

 

 後半は、クチュール要素を強めた華やかな構成。シルクカットジャカードのミニドレスは羽をまとったようなデザインで軽やかさをさらに加速させた。ラメジャージーにスパンコールを散りばめたドレス、繊細なリバーレースを組み合わせたカクテルジャケット、透明感あふれるシフォンやオーガンジーを重ねたイブニングドレスが続く。

 

 シルバーのオーガンジーを用いたカクテルドレスや、鮮やかなオレンジのドレス、オーロラを思わせる白のイブニングドレスなど、光や影、色彩をテーマにした作品群がフィナーレを飾った。派手さや奇抜さではなく、服の美しさと着る人の美しさを両立させた表現が際立ち、「ジュン アシダ」らしいエレガンスを体現した。

 

 軽さを実現する背景には、アトリエの丁寧な仕事がある。裏地は必要のない部分では省略し、必要な場合も極力重くならないよう工夫。素材の選び方にも細やかな注意が払われ、薄く軽やかなのに、裏地で重さが出てしまうといった不均衡を避けている。猛暑の夏にも快適に過ごせるように配慮し、ストレスなく着られる仕立てを徹底している。

 

 全37体で構成された今回のコレクションは、前半がコットンやリネンを中心とした都会的な夏服、中盤がペイズリーやグラフィカルなプリントを取り入れたスタイル、後半がスパンコールやレースを用いたカクテル・イブニングドレス群という流れ。日常とクチュールを橋渡しする構成によって、ブランドの進化を明確に示した。

 

 「ジュンアシダは個人名の付いたブランドとしては日本で最も長い歴史を持つブランドです。そうした伝統を大切にしながらも、ファッションですから伝統だけで続けるのではなく、モダンな考え方を本当の意味で融合させたいと思いました。ここがクラシックで、ここがモダンと区切るのではなく、自然に融合していくことを表現したい。その思いを込めて“デュアルモーションDual Motion”というテーマにしました。暑い夏でもおしゃれを楽しめるよう、軽く快適でストレスのない服を、素材選びから細部にまでこだわって仕立てています」と芦田多恵。

 

取材・文:樋口真一

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