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2025.07.11

ユナイテッドアローズ/辺見えみりディレクションの「conte」、大人女性の共感を呼ぶ「NATURAL MODE」の世界観

 2024年秋冬シーズンにデビューしたユナイテッドアローズ(UA)のウィメンズブランド「conte(コンテ)」。同社との協業経験があり、ファッションブランドを手掛けた実績を持つ俳優の辺見えみりさんがディレクターを務め、自身と同じ40代を中心に30代後半~50代をターゲットに、これまでのUAに無かったテイストでブランドを立ち上げた。女性の美しさを引き立てるベージュに着目し、新しいベージュを意味する「Novel BEIGE(ノーベルベージュ)」の多様なトーンを軸にコレクションを構成。フェミニンなシルエットにメンズライクなディテールを掛け合わせ、上品な「NATURAL MODE(ナチュラルモード)」を体現する。昨年8月にECで発売し、UAの店舗でポップアップを展開すると瞬く間に対象世代の支持を集め、計画を上回る実績を上げた。その後の数カ月間で青山、新宿、博多、丸の内と立て続けに直営店も出店し、共感の輪を広げている。

 

ベージュを起点に体現する「comfortable」「contemporary」「continue」

 ユナイテッドアローズ(UA)は2033年3月期までの長期ビジョン「美しい会社 ユナイテッドアローズ、真善美を追求し続けることでサステナブルな社会の実現に貢献し、お客様に愛され続ける高付加価値提供グループになる」へ向けた戦略の一環で、アパレル以外の領域も含めた業容と顧客層の拡大を進めている。主力のアパレル領域ではこれまでに無かったテイストで、30~50代の大人の女性をターゲットに新たな客層の開拓を目的として立ち上げたのが「conte(コンテ)」だ。

 

 ディレクターは、様々なウィメンズブランドを手掛けた実績があり、現在はスキンケアブランド「mizuka(ミズカ)」を運営する辺見えみりさん。自身は40代後半になって「年齢を重ねて以前は似合っていた服が似合わなくなってきた」と感じ、同世代の女性たちからも「何を着ればいいのか分からない」という声を多く聞くようになったことから、自分たちの世代が本当に着たいと思え、新しい自分と出会えるような服を模索していた時期だったという。UAと辺見さんの思いが一致し、新たなブランドの立ち上げに至った。

 

辺見えみり(へんみ・えみり)

conteディレクター 1993年に女優としてドラマデビュー。以来、数々のバラエティー番組、舞台に出演。2013年にアパレルブランドを立ち上げ’、18年までコンセプターを務める。現在は化粧品ブランド「mizuka(ミズカ)」代表。Instagramのフォロワーは46万人(24年10月現在)。

 コンテで辺見さんが焦点を当てたのは「ベージュ」の可能性。「ベーシックではあるけれど、コーディネートが難しいと感じている人も多い色。でも、自分に合うトーンのベージュを選べば、すごく女性らしく着こなせると辺見さんは話していました。そこで今までに無いベージュを追求したんです」とUA本部の樋口詠一PR部長は話す。辺見さんをディレクターとするMDチームを編成し、「Novel BEIGE(ノーベルベージュ)」をブランドステートメントとして、ブランドが表現するベージュのカラーパレットを設定した。ブランドコンセプトは「NATURAL MODE(ナチュラルモード)」。フェミニンなシルエットをベースにメンズライクなディテールや素材を取り入れ、年齢や経験を重ねた自立した大人の女性たちが快適かつ都会的な装いを楽しめ、凛としながらも自然体でいられるスタイルを提案する。ブランド名は「comfortable(快適な、心地良い)」「contemporary(現代的な、今の)」「continue(続いていく)」に共通する「co」をキーワードに発想した。

 

  • 2024年秋冬シーズン、ファーストコレクションのキービジュアル

  • 2025年春夏コレクションのキービジュアル

MDはオリジナルとセレクトで構成、新作をほぼ毎週投入

 昨年6月に24年秋冬コレクションでデビューし、8月にUAのオンラインストアにブランドページを開設して先行予約販売を開始、「ユナイテッドアローズ」の店舗でポップアップストアも展開すると計画を超える実績を上げ、早々から反響を得た。9月6日には南青山の骨董通りに旗艦店を出店し、翌週にはルミネ新宿 ルミネ1、今年3月にアミュプラザ博多、5月には丸の内の丸ビルと、続々と直営店をオープンさせた。

 

  • 2024年9月にオープンした「コンテ青山店」

 フラッグシップとなる青山店は青の濃淡のタイル壁が印象的な建物の1階、写真館の跡に立地する。約115㎡の奥行きのある空間を生かした、エントランスから店奥までを見渡せる造りが特徴だ。壁面や床、天井はベージュが映えるグレージュを基調とし、壁やレジなどの角は全て丸みをつけ、壁面やフィッティングルームにも円形の鏡を採用することで、柔らかく包み込むような空気感を醸し出した。照明やハンガーなど随所に施したゴールドは、辺見さんがアクセサリーで取り入れる好みの色だ。フィッティングルーム前に設けたガラスブロックは照明を受けて自然光が注ぐような優しいムードを生んでいる。このガラスブロックは、コンテの各店舗に共通するマテリアルでもある。什器には辺見さんが買い付けたビンテージ家具、天然の一枚板や大理石で製作したテーブルを使い、新旧を混在させることで高級感と親しみを演出している。

 

  • 円形の鏡など内装は柔らかで落ち着いた印象

  • 店奥はサロンのような空間。オリジナルの照明の下、一枚板のテーブルにはこだわりのセレクトアイテム

  • 大理石のテーブル

 現時点で最も新しい丸の内店では、また異なる空間作りのアプローチを見せる。東京駅直結の立地であることから、「旅」をコンセプトに、ホテルのコンシェルジュカウンターをイメージした什器などを配し、高級感のあるラウンジのような空間を設えた。

 

  • 「コンテ丸の内店」の外観

  • 丸の内店はホテルのラウンジのような空間

 実店舗ではほぼ毎週、新作が入荷されるようMDが組まれ、「お客様が来店したときにいつも新しいものがある」店作りをしている。オリジナルが約80%、セレクトが約20%で構成するが、そのパーセンテージ以上にオリジナルと変わらないこだわりが別注やセクトアイテムにも凝縮されている。

 

 バッグでは「JIL SANDER(ジルサンダー)」や「FRENZLAUER(フランツラウラ)」、シューズでは「NEBULNIE(ネブローニ)」や「il Sandalo of Capri(イルサンダロ オブ カプリ)」、ジュエリーでは「YON(ヨン)」や「Otiumberg(オティウムバーグ)」、フレグランスでは「KITOWA(キトワ)」……。「Blurhms(ブラームス)」別注のTシャツやスエット、「upper hights(アッパーハイツ)」別注のデニムパンツ、「NICENICE MOMENT(ナイスナイスモーメント)」別注のニットインナーなど、創意と作り込みで定評のあるブランドのプロダクトが並ぶ。いずれも辺見さんが好きなブランドで、他にも陶芸作家の伊藤環の器などもあり、理想とする女性像のライフスタイルを体現した。

 

  • 「ジルサンダー」のバッグや「イルサンダロ オブ カプリ」のサンダルも

  • 「オプティウムバーグ」のフォールドジュエリー

  • フレグランスやスキンケア用品も揃う

  • 伊藤環のよるプロダクト

  • 「ブラームス」別注のTシャツ。表にコンテのロゴ、裏にコンセプトをプリント

  • 「アッパーハイツ」別注のデニムパンツ

フェミニンにメンズライクを掛け合わせ、自然なモードを創出

 オリジナルウェアで、デビュー以来のヒットを続けているのがオールインワン。25年春夏シーズンは前季に発表したVネックオールインワンの夏仕様として、ノースリーブに。高密度の先染めヘリンボーン生地に特殊洗いをかけ、自然で柔らかい雰囲気と快適な着心地を生んだ。ウエスト脇のボタンでサイズ調整ができるのもうれしい。ワンピースのように1枚でもスタイルが決まり、ジャケットを合わせてきれいめに、カーディガンを巻いてカジュアルに着ても素敵だ。素材はデニムやリネンなどもあり、選択肢が増した。25年春夏の展示会で一番人気だったのが、「エンブロイダリー レース ベスト」。定番モデルのベストにコロニアル調の刺繍を全面に施したオーガンジーベースの生地を採用し、透明感とともに繊細で大人なムードを生み出した。コーディネートの主役になる1着。

 

  • コンテのヒットアイテム「ヘリンボーン Vネック オールインワン」

  • 25年春夏の展示会で一番人気「エンブロイダリー レース ベスト」

  • 25年春夏の展示会で一番人気「エンブロイダリー レース ベスト」

 ボトムスでは「アセテート サテン タック ワイドパンツ」が好評だ。光沢感のあるサテンをメンズライクなデザインで表現し、そのマニッシュなスタイルから通称「社長パンツ」と呼ばれ、ファンに浸透している。お腹回りがすっきり見え、体型カバーもしやすいと人気なのは「アシンメトリー タックパンツ」。ウエストの後身頃がゴム仕様、サイドジップではきやすい。手洗い可能でシーズンレスに活躍するイージーパンツだ。

 

 前季にリリースして完売となった、ザラッとした素材感とベージュカラーのノーカラージャケット(通称「砂壁ジャケット」)は、今季は和紙生地バージョン「ペーパー ノーカラージャケット」が登場。マットでドライな表情を持ち、柔らかな生地の特性を生かし、ノーボタン、袖口のスリット、肩パッド無しというシンプルなデザインで堅苦しさのない上品なスタイルに仕上げた。

 

  • 「アセテート サテン タック ワイドパンツ」(社長パンツ)

  • 「アシンメトリー タックパンツ」

  • 和紙生地による「ペーパー ノーカラージャケット」

 新作をリリースするタイミングで辺見さんやスタイリスト、スタッフがインスタライブやYouTubeチャンネルで商品やスタイリングを紹介しているが、その中で砂壁ジャケットや社長パンツなどの愛称が生まれ、店頭にも「社長パンツ、ありますか」といった問い合わせが来るという。実物を見る前からアイテムへの愛着が育っている様子が窺える。

 

 「パン粉シャツ」なんていうアイテムもある。「ハンバーグのパン粉のように、いろんなアイテムに合い、コーディネートを成り立たせる」ことからネーミングされた。正式には「キュプラシルク シャツ」という。上質感のある素材を使い、シンプルでリラックス感のあるシルエットにこだわったシャツで、袖口のカフスをなくして軽やかに仕上げ、ボタンを開ければスリットのように抜け感が漂う大人な着こなしができる。

 

 コンテのマストバイアイテムになっているのが「カップ キャミソール」。程よいフィット感のあるベア天竺素材を使ったキャミソールは、トップスのインナーとして着用すればデコルテラインをヘルシーに見せる。カップは取り外し可能。他のアイテムとセットで購入する顧客が多く、当初は白と黒の2色だったが、ベージュやネイビーも追加した。

 

  • マストバイの「キュプラシルク シャツ」(パン粉シャツ)

  • 「カップキャミソール」

ハイブランドのビンテージ、親和性あるブランドのポップアップも

 ブランドデビューから1年が経過し、辺見さんと同世代の40代を中心に、ターゲットとする30代後半~50代の女性客を着実に集めている。「辺見さんのファンやUA CLUB会員はもとより、直営店の出店やインスタライブやYouTubeのプロモーション効果もあり、普段はあまりUAで買い物をしていなかった新規のお客様が増えている」と樋口さん。

 

 直営店もさることながら、ECはブランドページを開設して以来、好調を続けている。コンテは現在、4店舗の直営店のほか、有楽町や二子玉川、大阪、神戸、名古屋など一部のユナイテッドアローズの店舗にショップ・イン・ショップ形式で常設しているが、実店舗が無いエリアをECがフォローしている形だ。
青山店はフラッグシップだけに、ここでの顧客の反応を見て実売期の需要に見合った商品量を確保するなどしてきた。インスタライブも含め、顧客の生の情報をMDに生かすスキームを今後も磨いていく。

 

 インストアイベントもコンテの世界観をより体感する機会として各店舗で実施している。「CARIER(カルティエ)」のビンテージ時計、「Hermès(エルメス)」のビンテージのジュエリーやベルトといった、ブランドとカテゴリーを絞り込んだイベントを定期的に開催。コンテの服に合う辺見さんセレクトによるアイテムが揃う。直近では8月に「自然体の自分を引き立てる」ことを重視したプロダクトをジュエリーを軸に展開する「IRIS 47(イリスフォーセブン)」のポップアップストアを計画している。今後もコンテと親和性のあるブランドのポップアップが注目される。今年はブランド設立1周年のイベントやコラボレーションなども予定しているので、ぜひチェックしたい。

 

写真/野﨑慧司、ユナイテッドアローズ提供
取材・文/久保雅裕

 

 

 

■関連リンク
conte公式サイト:https://store.united-arrows.co.jp/brand/conte/

久保雅裕(くぼ まさひろ)encoremode コントリビューティングエディター
 

 ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。一般社団法人東京ファッションデザイナー協議会 代表理事・議長。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremode コントリビューティングエディターに就任。2024年3月まで杉野服飾大学特任教授/杉野学園「ファッション力」編集長を務めた。

 

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この記事は「encore(アンコール)」より提供を受けて配信しております。

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