【2025メットガラレポート】ブラック文化におけるテーラーリングにフォーカス

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2025.05.09

【2025メットガラレポート】ブラック文化におけるテーラーリングにフォーカス

メトロポリタン美術館服飾研究所で2025年の新展覧会「スーパーファイン」が開幕

　メトロポリタン美術館の服飾研究所は、2025年5月5日、春の展覧会「スーパーファイン・テーラーリング・ブラックスタイル（Superfine: Tailoring Black Style）」を発表した。

　今展覧会は2025年5月10日から10月26日まで、5番街にあるメトロポリタン美術館で開催される。

Photo by Eri Kurobe

　今展覧会は、20年以上ぶりとなるメンズウェアに特化した内容で、ダンディズムのコンセプトを通して、18世紀から現在に至るまでのブラックスタイルの文化的、歴史的な検証をする企画展だ。

Photo by Eri Kurobe

　展覧会のコンセプトは、ゲスト・キュレーターのモニカ・L・ミラーが2009年に出版した著書「Slaves to Fashion（奴隷からファッションに）」からインスパイアされたもので、黒人が服装やファッションをもちいて、自分たちのアイデンティティを変容させてきた方法を紹介している。

　会場は12のセクションで構成されており、「所有」、「自由」、「チャンピオン」、「尊敬」、「美」、「クール」など、ファッションだけでなく、絵画や版画、写真などを用いて、深く文化と軌跡を探求している。

　古くは、奴隷であった黒人が召使いとして着用させられていた服から、奴隷制度廃止運動家のフレデリック・ダグラスたちが身だしなみや服装を権力や同化の方法とした過程、モハメド・アリらスポーツのチャンピオンが獲得していった尊敬、そして現代の「ルイ・ヴィトン（LOUIS VUITTON）」のヴァージル・アブローなどのデザイナー作品まで網羅されていて、文化的にとても見応えがある。

ガラにはテーラーリングが光るルックでセレブリティが集結

画像左から：ロゼ（サンローラン）、リアーナ（マークジェイコブス）、モニカ・バルバロ（ディオール）、リサ（ルイ・ヴィトン)

　さて、その夜に開催されたのが、米ファッション界最大の祭典といわれるメットガラで、多数のセレブリティが集結した。今季のテーマである“テーラーリング”に合わせて、卓越したテーラードのスキルが光るルックが目を奪った。

　そのため女性セレブリティたちも、メンズ仕立てに寄せたスタイルが目立ち、リサ（「ルイ・ヴィトン」着用）やヘイリー・ビーバー（「サンローラン」着用）は、メンズライクに美しく仕立てられたジャケットに、ボトムレスというトレンドのスタイル。ジェニー（「シャネル」着用）はブラックレザーサテンのジャンプスーツに、オーバースカートを合わせて華やかに登場。

　リアーナ（「マークジェイコブス」着用）は、曲線を生かしたビスチェに、スペンサージャケット、スカートにはバッスルと、伝統とモダンを掛けあわせた。モニカ・バルバロ（「ディオール」着用）は1947年に世界を感嘆させた「ディオール」の「ニュールック」にオマージュを捧げるジャケットとスカートのスタイルで。

　豪華さでは、ミーガン・ザ・スタリオン（「マイケル・コース」着用）がまとったイヴニングドレスにはクリスタルが75,000個以上縫い付けられており、クチュールの技が魅了した。

　また二度目立つスタイルもトレンドで、今季のコーホストとなったコールマン・ドミンゴ（「ヴァレンティノ」着用）は豪華なケープ姿で登場して、それを脱いだスーツを披露。ダムソン・イドリス（「トミーヒルフィガー」着用）はレーシングスーツに身を包み、そのスーツを脱ぐと、下から深紅のタキシードスーツ姿が現れて喝采を浴びた。

　そして圧巻だったジャネール・モネイ（「トムブラウン」着用）は、四角ばったスーツに身を包み、階段途中で外側を取ると、あっと驚く内側のスーツが現れるというパフォーマンスを披露。

　まさにオートクチュールナイトともいうにふさわしい、メットガラの一夜となった。

シャネル（CHANEL）