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2024.04.24

海外販路開拓の拠点となるか~上海ファッションウイークに赴く日本ブランド 上海トレードショー・コレクティブショールーム 2024秋冬レポート

 上海時装周組委会が主催する「上海ファッションウイーク(SFW)2024秋冬」が2024年3月25日~4月1日に開催され、新天地で開催される「レーベルフッド」のショーの他に、12の主要トレードショーやコレクティブショールーム、単独ショールームが市内各所で開かれた。

 

 中国国内の不動産バブル崩壊に伴う景気後退感が、こうしたトレードビジネスに影を落としているのか。日本から様々なトレードショーやコレクティブショールームに参加した日本ブランドの声を届ける。

 

  • モード上海はじめ、シンショールーム、ウェーブショールームなど多くのショールームが集積するSFWの公式トレードショー会場

  • モード上海はじめ、シンショールーム、ウェーブショールームなど多くのショールームが集積するSFWの公式トレードショー会場

  • モード上海はじめ、シンショールーム、ウェーブショールームなど多くのショールームが集積するSFWの公式トレードショー会場

 SFW公式トレードショーのモード上海及びそれに付帯する形で組織されたコレクティブショールームやミニトレードショーが、地下鉄虹橋路駅近くのIM上海の高層ビル内で開かれた。低層階のモード上海に対して、徐々に上に行くに従って狭くなる四角錐形の構造となっており、中央のエレベーターホールを囲む形で展示スペースが用意される為、上層階ほど幅が狭くなっていく難点があった。

 

  • 羽翼TSUBASAショールーム

  • 「ディウカ」

 モード上海には「羽翼TSUBASAショールーム」が出展し、その半分ほどを「ディウカ(divka)」が占めた。すでにパリでの個展も長く開催しており、中国での販路開拓も継続的に行ってきた。

 

 「ウェーブショールーム」(29階)には、有松絞りの「スズサン(suzusan)」、 ミー(me)を主宰する「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」や「ジェニーファックス(JennyFax)」の参加があった。

 

  • シンショールーム

  • シンショールーム

  • シンショールーム

  • シンショールーム

 「シンショールーム」(30階)には、中国のショールームと合わせて43ブランドが出展し、日本からは「シントーキョー」と「シントラック」の2つのエリアに36ブランドと最大規模の出展があった。特に今回は一般社団法人東京ファッションデザイナー協議会(CFD TOKYO)が助成金を得て会員に対する出展支援を行なったため、27社31ブランドのCFD正会員が参加した。

 

  • 「ミシェル(71 MICHAEL)」(CFD)

  • 「アーネイ(ANEI)」(CFD)

  • 「アトリエピエロ(ATELIER-PIERROT)」(CFD)

  • 「イン-プロセストーキョー(IN-PROCESS Tokyo)」(CFD)

  • 「エムアンドキョウコ(M.&KYOKO)」(CFD)

  • 「オーバーレース(overlace)」(CFD)

 シンショールームを主催するオープンクローズの幸田康利社長は、「昨年10月展と比べ、この3月展では参加ブランド数が30%増え、総受注金額については1.5倍の伸びになりそうだ。このような数字を見ても、現場でのバイヤーの感触からも、景気は底を打ったように思える」と明るい兆しが見えてきたようだ。

 

  • 「ジャンピエール(THE JEAN PIERRE)」

  • 「ビットブルー(BIT BLUE)」(左/CFD)と「サバイ(saby)」(CFD)

  • 「スエサダ(SUÉSADA)」(CFD)

  • 「タクター(tactor)」(CFD)

  • 「タナカ(TANAKA)」(CFD)

 一方で「SFW期間中のショールーム数は増え続け、国内外から参加するブランドも増えており、競争環境は激しくなっている。コロナ禍以降、渡航できるようになったものの、取っ付きにくい市場であることには変わりがない」と慎重さも窺える。

 

  • 「ノマット(Nomàt)」(CFD)

  • 「ノントーキョー(NON TOKYO)」(CFD)

  • 「ハンドベーカー(Handwerker)」(CFD)

  • 「ヒスイ ヒロコ イトウ(HISUI HIROKO ITO)」(CFD)

  • 「ファクトリー(FACTORY)」(CFD)

 「今回、CFD TOKYOによる助成があり、13ブランドが初めてSFWに参加した。次の2025春夏シーズンも予定しており、このような助成を活用すれば、効率良く新しい市場に挑戦できる」とデザイナーの新市場開拓支援政策への期待を改めて指摘した。

 

  • 「ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)」

  • 「ホウガ(HOUGA)」(CFD)

  • 「ボディソング.(BODYSONG.)」(CFD)

  • 「ミューラル(MURRAL)」(CFD)

  • 「メグミウラワードローブ(MEGMIURA WARDROBE)」(CFD)

 「ショールームとしては、2015年から参加してSFWに公式プログラムとして認められ、円安の追風を活かしながら、日本ブランド全体の需要を広げることは達成できてきた。今後はブランドごとの魅力を伝えるべく、きめ細やかなサービスを両立させていく」と次のフェーズへの飛躍を目指しているようだ。

 

  • 「ユウミアリア(YuumiARIA)」(CFD)

  • 「ラグリー(lugly)」(CFD)

  • 「ラ・コラプション(LA CORRUPTION)」(CFD)

  • 「縷縷夢兎(rurumu:)」(CFD)

  • 「ロキト(LOKITHO)」(CFD)

  • 「ディスカバード(DISCOVERED)」(CFD)

 初出展した「ディスカバード」は、「確かな手応えを感じる事ができ、バイヤーがショッピングをするような感覚で各ブランドのサンプルをピックしていく様子が新鮮だった」という。さらに「人口が違うので自ずと期待せずにはいられないのだが、それよりも街と人のファッションを感度的に面白い物として楽しもうとするエネルギーに満ちていると感じられ、今後も積極的にアクションを起こしていきたい」と期待を示した。

 

  • 「ジュンオカモト(JUN OKAMOTO)」(左/CFD)と「パノルモ(PANORMO)」(CFD)

 同じく初出展の「ジュンオカモト」は「日本との違いは、ブランド毎にセレクトするのではなく、アイテムで選ぶ点。バイヤーが様々なブースからアイテムを抜き、その後オーダーするというやり方で、日本にはあまり無く驚いた。日本の場合、ブランドの世界観などを大切にして、ブランドを育てる事も踏まえて、セレクトされる。中国だとその部分はあまり重要でなく、1点だけとしても買い付けるというアクションが起こるので、そこは意味があるのかなと感じた」という。「一方で、ブランドの世界観や販売戦略をきちんと考えているブランドは難しいかもと思ったが、それを大切にするショールームもあると思うので、きちんと調べることも必要かと思う」と知見を高めていく予定だそうだ。

 

  • 「アシードンクラウド(ASEEDONCLOUD)」(CFD)

 継続的に出展する「アシードンクラウド」は、「以前は全く受け入れられなかったワイドパンツが、今は好意的に捉えられ、一方でジャケットなど日本ではマイノリティーなアイテムも中国では以前と同じように好意的に捉えられているなど、中国の女性観の違いとファッションの流れや時間軸、価値観の違い」を感じたそうだ。今後については、「現状は中国の景気が落ち込んでいる状況なので大きな売り上げはしばらく見込めないが、市場の大きさや価値観が多少違えども、欧米に比べるとサイズ感の近さにおいて、まだまだポテンシャルがあると思うので、今後も営業していきたい」と意気込みを語った。

 

  • 「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」(CFD)

 既に中国国内に多くの顧客を持つ「シンヤコヅカ」は、「客数が少なかった印象を受けた」そうで、さらには、パリでのショールームの結果を見ながら、「パリでの中国バイヤーのオーダーを見る限り、長く商売をしている一流店舗は景気の影響を受けて無さそうに感じられ、貧富の差が拡大しているように思える。パリに中国バイヤーが戻ってきているため、十分にオーダーを集められていることもあり、オーダーの締めを特別に延ばすなど生産スケジュール調整を無理してまで、上海に出る必要は無いと感じた」と今まで通り、パリでのオーダー獲得に軸足を置く考えを示した。

 

  • 「リコール(RequaL≡)」(CFD)

 3回目の出展となった「リコール」は、「前回に比べてブランド数が著しく増えた事により、売り上げが分散したように感じ、さらにブース間の距離が詰まった印象を受けた」という。「バイヤーは昨シーズンよりは増えている印象だ。ただバイヤーからするとブランド数が増え、選択技が多いのは良い事なのだが、需要が追いついていない点もあり、今後ブランドをどのように打ち出すべきかをショールーム側と話し合う必要性を感じた」と語る。

 

 ただ「経済状況が良くないとはいえ、中国のファッション性には大いなる可能性を感じており、現に安定した結果が出てきている。そして日本よりも少しだけ強いものが認められる気がしており、中国で現地法人を立ち上げ、ブランドとして中国市場でのデビューを仕切り直したいと考えている」と抱負を述べた。

 

  • クローズドな大型ブースの多いオンタイムショーのメインホール

  • ヤングタレント

 トレードショーではトップレベルと言われている「オンタイムショー」は、西岸芸術センターのオープンスペースと近くの高層ビルで開催した。通常使っていたホール内には大手企業がクローズドな大型ブースを構え、10ブランドのヤングタレントコーナーと中二階の「ルームルーム」という同社がオーガナイズするインターナショナルレベルのデザイナーショールームに約30ブランドが出展していた。本来、ワンフロアで一気に見られる小規模ブランドがビル内の個室に入る形になったことから、今までのオープンな雰囲気から一変してしまい、「たくさんの人が見渡せる雰囲気の良さが損なわれた」と話す出展者も多くあった。

 

  • ショールームキャッツ

 静安寺に日本ブランドのセレクトショップを持ち、15ブランドほどの日本ブランドのセールス、PR、マーケティングを行う上海の「ショールームキャッツ」は、オンタイムに9回目の出展となる。4月中旬までのオーダー締めが間に合う「ネイプ(NAPE_)」「ウィザード(WIZZARD)」「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」「フィル・ザ・ビル(FILL THE BILL)」など5ブランドをリアル出展させ、この他受注時期の遅い「フランキーグロウ(frankygrow)」や既に受注を締めた「メアグラーティア(meagratia)」などをバーチャル出展させていた。同社は、50ほどのアカウントのうち半数以上が地方で、「既存店はそれほどトーンダウンしていない」と好調を維持しているようだ。

 

  • セピアショールーム

ショールームのウェン・アイ・ラブ・ユーには「イェンス」と「バイオレットルーム」が出展

 

 

 外灘近くの「セピアショールーム」内の一角を借りて日本の「イェンス(Jens)」「バイオレットルーム(VIOLETTE ROOM)」の2ブランドを出展させた「ウェン・アイ・ラブ・ユー」は、蘇州に開設されたショールームだ。本体の蘇州でも同時期に日本の「ヌヌフォルム(nunuforme)」「エルフィンフォーク(eLfinFolk)」「デコ・ドゥプュイ・1985(DECO depuis 1985)」などとともに展示会を行った。

 

  • ハイプルームに出展した「インターナショナルギャラリービームス(International Gallery BEAMS)」

  • ハイプルームに出展した「インターナショナルギャラリービームス(International Gallery BEAMS)」

  • ハイプルームに出展した「インターナショナルギャラリービームス(International Gallery BEAMS)」

 延安西路駅の東側のビル内でメディアの「ハイプビースト」が開いた「ハイプルーム」に「インターナショナルギャラリービームス」が出展した。広々とした空間に多くのラックを並べて披露し、オリジナルレーベルの中国販路開拓に結びつけていく戦略のようだ。

 

  • ショールーム上海

  • ショールーム上海

 このほか、上海展覧センターで行われた「ショールーム上海(時堂)」も比較的大規模なトレードショーで約140ブランドが出展。日本からは、コネストショールームが「ナインティーン・ブルーム・カラー(nineteen bloom color)」「ファブリス(FABRICE)」など5ブランドを出展させた。

 

 パリと比べても遜色ない規模感は、やはり中国というスケールの大きさに由来しているのだろう。ただパリは世界のプラットフォームだけに、その質の高さと国際性では敵わない。だが一方で、欧米人と比べて近いサイズ感は、国内と同じサイズ展開のままで対応可能という利点となり魅力的だ。一方で政治的関係や通関の不透明さ、中国経済の先行き懸念など、不安材料も垣間見える。しかし、デザインに対する受容度の高さから、日本に無い市場性を大いに感じるところだ。国内需要の縮小による海外販路開拓の必要性に鑑み、アジアに対する日本ブランドのプレゼンスを示す場所としての上海の重要性が益々高くなっている事に気づかされた。次回のSFWは、10月10日からの開催予定だ。

 

 

 

写真/文 久保雅裕

アナログフィルター「ジュルナル・クボッチ」編集長/東京ファッションデザイナー協議会(CFD TOKYO)代表理事・議長

 ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。「senken h」を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

 大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア「Journal Cubocci」を運営。2017年からSMART USENにて「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」ラジオパーソナリティー、2018年から「毎日ファッション大賞」推薦委員、2019年からUSEN「encoremode」コントリビューティングエディターに就任。2022年7月、CFD TOKYO代表理事・議長に就任。この他、共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。

 コンサルティングや講演活動の他、別会社でパリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアの開催、合同展「SOLEIL TOKYO」も主催するなどしてきた。日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

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