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2015.06.03
オンラインもオフラインも楽しい 進化するMACY’S(メイシーズ)のサービス
早くからオムニチャネルビジネス、そしてミレニアル世代の取り込みに積極的な動きを見せてきた百貨店、「MACY’S(メイシーズ)」。マンハッタンのヘラルドスクエアにあるフラッグシップストアは、数年に渡り大改装を行い、ブランドのバッグ、コスメ、ジュエリーの売り場が続く1階フロア、メザニンフロアにはカジュアルバッグ類や帽子、スカーフなどの装飾雑貨などを集約しました。そして、大改装の中で最も注目を集めたのは、すべてが靴フロアとなった2階です。
メイシーズ本館にはエスカレーターが2箇所あります。ルイヴィトンのショップ・イン・ショップがある正面玄関から入ってすぐのエスカレーターを上ると、Louis Vuitton(ルイヴィトン)、Gucci(グッチ)、Burberry(バーバリー)やMichael Kors(マイケル・コース)などの来店するお客様を瞬時に惹きつけるブランド靴が並ぶエリアに出ます。もう一つのエスカレーターから2階へ上がれば、Nike(ナイキ)、Adidas(アディダス)、Puma(プーマ)、New Balance(ニューバランス)などのスポーツシューズや、今年も流行りのBirkenstock(ビルケンシュトック)といったコンフォートシューズなどのエリアへと繋がっており、今回の改装によって、広々とした綺麗な売り場になっただけでなく、目的によって買い物しやすいフロア作りが実現されています。
しかも2階フロアには、ちょっとおしゃれなカフェも設営。すでに休憩できる場として存在してきたマクドナルドとかではちょっと、というお客様も、このスターバックスが運営するカフェであればゆっくりとお茶も楽しめるというわけです。こうした改善だけでもメイシーズに行ってみようと興味が湧いてくると思いますが、これだけではないんです。
ゲーム感覚でポイントを貯める
メイシーズは2013年11月より「shopkick(ショップキック)」のBeaconサービスを試験的に導入し、現在も継続してサービスを提供しています。ショップキックのサービスは簡単で楽しい!事前にショップキックのアプリをインストールし会員登録しておくと、メイシーズの店舗近くに来た場合、そのことをプッシュメッセージで表示してくれます。また、入店の際にアプリを起動すれば、メイシーズの入り口に設置されたショップキックの小型デバイスが感知し、来店キック(ポイント)を獲得できるのです。
つまり来店してキックを獲得、そして買い物してキックを獲得(事前にクレジットカードをアプリにリンクしておく必要あり)、また商品のバーコードをスキャンして更にキックを獲得出来るという、なんだかゲーム感覚のように面白いことが体験できるのだ。一定のキックが貯まると様々なギフト券に交換できるのがこのサービスの魅力。
私もショップキックが米国でサービスを開始した際にすぐに会員となり、サービスの利用分析のリサーチとしてもよくテストしてきましたが、プライベートでも機会さえあれば、メイシーズや、量販店のTarget(ターゲット)、電気屋さんのBest Buy(ベストバイ)、American Eagle Outfitters(アメリカンイーグルアウトフィッターズ)などの加盟店でコツコツとキックを貯め、すでに何度かNikeなどのギフトカードに交換させて頂いています。
Eコマースの優れたサービス「マイウォレット」
メイシーズといえば、Eコマースサイトも充実。常になんらかのお得なプロモーションを行っているのですが、これまでは決済をする際にいちいちプロモーションコードを入力しなければなりませんでした。パパッと入力できる短いコードがほとんどですが、もちろんたまに入力ミスをすることもあります。
今ではそうした面倒もなく、「my wallet(マイウォレット)」という新機能を活用すれば、ディスカウント情報を紹介しているページから利用したいプロモーションコードをマイウォレットにクリックひとつで保存でき、それでアカウントに登録したということになります。決済の際に再びプロモーションコードを入力する必要がなくなったのです。(*従来通りプロモーションコードは手入力でも出来るようには残してあります。)
この情報はもちろんメイシーズのアプリにも反映され、また同じように、アプリからマイウォレットにプロモーションコードを追加することも可能。ストアに行って買い物をしている時も、マイウォレットにコードが保存されていれば、お会計の際にそれを表示すればOK。オンラインそしてオフライン問わず、お客様に少しでもお買い物をスムーズに完了できるよう改善が行われているのです。
アメックスのポイント提携「プレンティ」に参加
そしてこの春からは、更にアメリカンエキスプレス社が開始した新サービス「Plenti(プレンティ)」にも参加。このプレンティというサービスは、メイシーズの様な大手小売りや、電話会社の「AT&T」、石油会社の「Mobil」、ドラッグストアの「RITE AID」、動画配信サービスの「Hulu」などの企業がすでに参加しているロイヤリティプログラムで、それら提携企業でサービスを利用した際にポイントを付与・利用できるというもの。「Tポイント」などがありますから、日本人にとっては馴染みのあるサービスだと思います。
■Macy’s Plenti サービスについて: http://www.macys.com/plenti
巷では、アメリカンエキスプレス社が2016年に大口取引先であるコストコとの長期に渡ったパートナーシップが終了することから、新たな顧客獲得も踏まえてプレンティを開始したのでは?とも言われています。
私個人もそれは理由のひとつにあるのではと感じています。クレジットカード社会のアメリカでは、コストコのように顧客が常に数百ドルまとめ買いするような場所において、「利用できるのはアメックスのみ」というのは企業にとっては大きかったでしょう。
そして今回誕生したプレンティ。そのサービスの大口顧客となるのはやはりメイシーズ。マンハッタンのヘラルドスクエア店ではサービス開始と共に店内の至るところにプレンティのサービスを告知。新規顧客獲得を図っています。
レジに説明書が置かれているのはもちろんですが、入り口のドアに告知されていたり、また商品と共に加入を促進するプラカードが棚に置かれているなど、こんなに?というくらい、どこを向いても、プレンティの文字が目に飛び込んでくるほど、宣伝がされているという状況です。
メイシーズでプレンティのサービスが開始されたニュースについて、某ロカールニュース局では、サービスが開始された5月4日から1週間ほどで200万人の人が会員登録をしたと伝えていました。因みに、メイシーズではもともとカード会員を対象としたポイント制度がありました。今回プレンティと提携することで、そのサービスはプレンティのサービスに申し込むことで移行することが出来るのだそうです。新サービスというものは、便利さや得だということをお客様に理解してもらえるまでに時間がかかるもの。メイシーズくらいの大手小売業であっても、これでもかというくらいメッセージを繰り返しお客様へ伝えていかなければならないのかもしれません。
この他にもSNSを使ったソーシャルマーケティングにも注力していることは皆さんもご存知だとは思いますが、このようにしてストアの大改装からテクノロジーをフルに活用したサービスをオフラインの場にも繋げ、ストアへの来店の機会を増やす努力を行っているメイシーズ。
様々な米国の小売業が時代やニーズの変化に合わせてサービスの見直しを図っている中で、やはりメイシーズはその中でもオムニチャンネルビジネス化を実現しているリーダーとしてますますその位置を確立していくでしょう。
Macy’s Heard Square
151 W 34th St, New York, NY 10001
Hours: Mon-Fri 9:30am – 10pm , Sat 10am ? 10pm , Sun 11am ? 9pm
website: http://www.macys.com
R I N A 90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。
以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。
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