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2016.01.27

アナログとデジタルが共存する“ワンダーランド”――「ターゲット」の事例

 「ターゲット(TARGET)」のホリデーポップアップイベント「ターゲットワンダーランド(TARGET WONDERLAND)」が昨年12月9日からクリスマス直前の12月22日まで、マンハッタンのチェルシー地区で開催されました。会場は、空中公園ハイラインの入り口近くにあるイベントスペース。昨年夏には「シャネル(CHANEL)」もポップアップイベントを開催した場所です。

大人も子供も楽しめるアトラクション・イベント

 イベントが開催されたチェルシー地区は、ガンズヴォートマーケットやチェルシーマーケットなどの飲食店が集まる施設や、有名レストラン、バー、カフェが多く、またブランドのリテールも並び、大人にとっては昼間から夜のシーンまで楽しめるエリアとして知られています。ターゲットはそんなエリアに、子どもが中心に楽しめて、しかも大人も懐かしい気分にさせてくれるアトラクションのイベントを2015年のホリデーイベントとして開催したのです。

入場後は、Eメール登録

  イベント会場に入場すると、設置されたパソコンで、まずはEメールなどの簡単な個人情報を入力。バーコードの付いたバッジもスキャナーにかざして一緒に登録します。会場内にはアトラクションがあり、そのバーコード付きのバッジがまさにアナログの世界とデジタルの世界を繋げる役割をしてくれるのです。  その脇には、スナック菓子やチョコレートなど子どもに人気のお菓子が無料でもらえるお店があり、「ターゲットワンダーランド」の世界へと味覚からも引き込まれていきます。

 巨大な電気のスイッチでワンダーランドの世界へのスイッチをオン!クリックやスワイプが当たり前となった今、スイッチのレバーの演出はノスタルジックさを感じさせます。

アトラクションはバーコードと連動でシェア

 会場内の様々なアトラクションの中でも面白かったのが、実際の玩具として購入することもできる「エッチ・ア・スケッチ(Etch a Sketch)」を実体験できるコーナー。まず写真を撮影。その姿がイラストとして転写され、巨大なモニターに映し出されます。体験はそれで終わらず、映し出されたイラストは、入場の際にもらったバーコードのバッジをスキャンすることで、登録しておいたメールアドレスへと送付してもらえるサービスが付いています。もちろん、そのままInstagramやFacebookといったSNSへシェアできるようにもなっていました。

 

 このほかにも大人も子供も楽しめるアトラクションがあり、例えばたくさんのぬいぐるみの壁に幾つか穴が設置され、そこから顔を出して記念撮影してくれるサービスは、プリント写真としてももらえます。これも同じようにバーコードをスキャンすることでメールでも送ってもらえるようになっていました。

アナログなアトラクションもマスト

 リモコンを使い、レーシングカーや先月公開された映画「スターウォーズ」のキャラクターで遊べるエリア、グリッターのパウダーを使い数日間楽しむことができるタトゥーのサービス――。ここ数年の間、リテールでもテクノロジーを活用したサービスが目立つ様になってきているものの、アナログのアトラクションはどこかホッとさせられる部分もあり、どんなにテクノロジーが進化したとしても、こうしたノスタルジックな要素を取り入れることはイベントには不可欠なのではないかと感じました。

購入したい商品はバーコードでスキャン

 点数は少ないものの、イベント会場内では子供へのクリスマスプレゼントに最適な商品を購入することができました。会場内にあるアトラクションの関連商品や人気のキャラクター物はテーブルに並べられ、購入したいものはバーコードバッジをスキャナーにかざすことで、バーチャルなショッピングバッグに保存する形が取られていました。

 支払いカウンターでは再びバーコードをスキャン。購入したいアイテムの情報を確認し、そこで決済を行います。支払いを済ませると番号が渡され、カウンター横にある大きな煙突を演出した受け渡しエリアで待ちます。しばし自分の順番を待っていると、番号がモニターに映し出され、煙突から手がニョキっと出て、私が購入した商品がショッピングバッグに入って出て来ます。思わずクスっと笑ってしまいましたが、サンタさんからのプレゼントとして受け渡されるという演出は、一層ホリデームードを盛り上げてくれました。

 

  Eメールを登録する、バーコードをかざすなど、テクノロジーが苦手な親御さんや、おじいちゃん、おばあちゃんがお孫さんと訪れたとしても、混乱することなく楽しめるよう配慮され、それぞれのアトラクションがスムーズに対応されているのも印象的でした。

 

  「Target.com」では、2015年のホリデーショッピング期間も送料無料のサービスを実施。ブラックフライデーに至っては、店舗のみならず、ECにもアクセスが集中したことで話題になりました。ストアやオンラインでの取り組みのほかに、ポップアップショップやこうしたイベントなど、「ターゲット」は常に、リテールとしてのプロモーションができる機会を最大限に活かす努力を積み重ねているように感じます。

 

  一般的にはこのような規模での取り組みは難しいと最初から諦めず、こうした事例はインスピレーションとして取り入れ、日頃からバズ(BUZZ:話題)を作り、ブランドの発信をするという意味でも米国での事例を参考にして頂ければと思います。


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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