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2022.03.12

【2022秋冬パリ ハイライト3】日本独自の伝統・文化・自然、未来的な要素をミックス

 2022年2月28日から3月8日にかけて開催されたパリコレクション。コロナ禍が続くなか、「サカイ(sacai)」や「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」のようにパリ現地でショーを開催するブランドも出てきた。まだ海外渡航の規制が残る中で厳しい判断であったに違いないが、やはり現地においてリアルで見せることの意義を感じさせていた。

 

 エレガント、セクシュアリティ、サステナビリティなど世界的なトレンドは踏襲しつつも、やはり日本のブランドは独特の世界観を持っているブランドが多く、それが世界を魅了する要因にもなっている。日本独自の伝統・文化・自然、未来的な要素などを盛り込んで、ブランドの世界観を表現していた。

シーエフシーエル(CFCL)

2020年に高橋悠介クリエイティブディレクターが設立した「シーエフシーエル」は初日にパリでインスタレーションを行った。

 

 「CFCL」は、Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)の頭文字で、3Dコンピューター・ニッティングの技術を中核に据え、時代に左右されない衣服を提供している。また、環境への配慮、最適な国産素材の選択、流通経路の透明性を追求した今の時代に合った製品作りの姿勢を貫いている。

 

 今シーズンは“Knit-ware Outline”をテーマに、生活に則した器を意味する言葉「ware」を引用し、一人ひとりの個性に人体の形状を超えた「outline」を描く、現代社会を包む新しいニットウェアを表現した。陶器のようなシームレスで丸みのあるシルエットが特徴的なのは、ブランドのアイコニックな「POTTERYシリーズ」。年代・性別を問わず柔らかく体を包み込む。そして今シーズンを象徴するアイテムは、大胆な7配色ボーダーのシリーズ。地層を意味する「STRATUM」と名付けられたこのシリーズは、再生ポリエステルを用いた嵩高のあるピンタック編みを全面に施すことで、柔らかな張り感をあたえ、バルーンのような独特のフォルムを生み出している。

マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)

 「マメ クロゴウチ」は、東京・台東区の法隆寺宝物館でランウェイショーを開催し、その映像をパリ・ファッションウィークで発表した。テーマは先シーズンから続く“Land”。黒河内真衣子デザイナーの故郷である長野に立ち返り、生まれ育った場所の豊かな自然の中で採集した様々なテクスチャーやカラーパレットをコレクションで表現した。

 

 今シーズンは、前回春夏のフレッシュなイメージから一転、秋冬の重厚さや冷たさ、夜の美しさに似た景色を紡ぎだした。長野の美しい山々を思わせるニットやドレス。カーキやグリーン、ブラックなどのシックな色合いにハッとするような鮮やかなオレンジやイエローをのぞかせて立体的なスタイリングに仕上げていた。

 

 また、今シーズンの大きな特徴は縄文時代をキーワードに縄文土器の文様をあしらったアイテム。この斬新な表現は、オリエンタルな美しさをより一層際立たせていた。

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)

 「イッセイ ミヤケ」はオンライン形式で発表。パリ現地ではインスタレーションも行った。テーマは“Sow It and Let It Grow”。今シーズンの構想は、植物の形態に感じる野性とその美しさから始まった。種が根を張り、芽生え、土の中から突き破って、光を追い求めるさまにインスピレーションを得たという。

 

 土の中で曲がりくねって伸びる根と、そこから芽吹く植物の生命力や野性を表現したシリーズでは、再生ポリエステル糸で曲線状に編まれたリブニットが、力強く有機的な表情を見せる。また、京都の職人による手描きの「引き染め」を使って野菜や果物の断面を表現したシリーズや伝統的な染色技法「絞り染め」を施したプリーツシリーズは、色鮮やかなみずみずしさをコレクションに与えていた。

ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)

 「ヨウジヤマモト」は、昨シーズンに続きパリでフィジカルのショーを行った。会場はパリ市庁舎大広間。コロナ禍で渡仏することすら厳しい状況の中、それでもパリでランウェイショーを行うというところにブランドの気概と心意気を感じずにはいられない。

 

 黒一色に染まった昨シーズンだったが、今シーズンは真っ白なルックやネイビーのアクセントも加えていた。印象的なのはデニム使い。退色したようなディテールがアイテムの表情に豊かさをもたらした。時代の流れを汲んだクロップド丈のジャケットやテーラードジャケットのラペル部分だけがデニムになっているなど、シルエットやディテールなど多様な表現を繰り広げた。

アンリアレイジ(ANREALAGE)

 森永邦彦デザイナーが手掛ける「アンリアレイジ」は、デジタルプラットフォームでコレクションを発表。なんと今シーズンは「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」の協力を得た。コレクションの舞台となるのは、JAXA相模原キャンパスにある「宇宙探査実験棟」。同施設は、宇宙探査にかかわる技術研究開発、オープンイノベーション事業の拠点となっている施設だ。

 

 テーマは“プラネット(PLANET)”。JAXAから宇宙探査活動に関連する映像データの協力を受け、宇宙で人類が活躍する「未来のファッション」を提案した。

 

 月の上を軽やかに歩くモデルたちが着ているのは体を大きく包み込む宇宙服。だがよく見るとそれはドレスであったりアランニット、ダッフルコート、フレアスカートであったりと、ディテールが通常の洋服になっている。さらには光る宇宙服も登場。青い電飾は母なる地球を表現したかのように見えた。

 

 常に新しい試みで驚きをもたらす「アンリアレイジ」。常識の枠にとらわれない発想の進化が止まらない。

ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)

 「ビューティフルピープル」は映像作品でコレクションを発表。一人の女性が部屋の中で衣装を次々と着替えていく様子のスライドショーで構成し、字幕でアイテムの説明を加えた。コレクションは、1 世紀前に起こったスペイン風邪のパンデミックの最中、小さなマネキンで何度も新しい衣服の裁断を探り、バイアスカットの女王と呼ばれた「マドレーヌ・ヴィオネ(Madeleine Vionnet)」にオマージュを捧げたという。

 

 8シーズン目となる「Side C」シリーズ。今シーズンは“essayage(フランス語でフィッティングの意)”をテーマに、「Side C」つまり表と裏の間を探る型紙作りの考え方と、「DOUBLE END」の裁断コンセプトをさらに拡大し、衣服を構築する型紙を通して東洋と西洋の対話を図った。前から後ろ、左から右、上と下、表と裏様々な方向に入れ替えることで一つの衣服が着物とドレスを行き来する。刺し子、帯縞、袴、紬、こぎん、ちぢみ、絣といった伝統的な日本のテキスタイルが、ドレスに姿を変える。着物の特徴的な直線ラインとドレスの立体的な構造がひとつのアイテムを通して表現し、衣服が持つ無限の可能性を示唆した。

 

サカイ(sacai)

 「サカイ」が2年ぶりにパリに戻ってきた。パリ現地でランウェイショーを開催した「サカイ」はセンシュアルに進化した様相を見せた。

 

 ブラック、ホワイト、レッドのモノトーンで表現されるコレクションは、スポーティーかつドレッシーという相反する要素を見事に融合させた。ヘルシーなタンクトップドレスは上半身の透け感とスカート部分が大きく広がるシルエットで女性らしさを演出。大きなスリットがついたスカートからはショートパンツをのぞかせてアクティブに。

 

 印象的なのはトレンチコートやテーラードジャケットの胸から上を潔くカットしたかのようなアイテム。ベアトップで着用し、ウエストをベルトで絞ることで、トラディショナルなアイテムをエレガントなドレスへと昇華した。また、今シーズンは後ろ姿にも注目したい。ムートンコートやベストなどペプラムを採用したアイテムがスタイリングを立体的にしてよりエレガントなムードを漂わせていた。

 

 さらに表現の幅を広げた「サカイ」。日本を代表するデザイナーとしての貫禄を見せつけた。

タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)

 「タカヒロミヤシタザソロイスト.」はデジタル形式でコレクションを発表。テーマは“THE ERA”。ルールに囚われることなく、自由に、カラフルにメロディーを奏でていた1960年代後半のアメリカを生きた黒人たちにインスピレーションを受けた。中でも最も重要な役割を果たしているのが、ビートルズの「5番目のメンバー」と形容されることもあるビリー・プレストン。彼らの創り出したカラフルな音楽や装い、ファッションへの真摯な眼差しから大きな影響を受け、デザイナー宮下が捕らえようとしても捕らえることのできない、今この時代への複雑な想いを表現したのだという。

 

 1960年代を強く意識したブラックスーツ、オッドベスト、ラッフルシャツ、多様なセーター、パファーベストや6ポケットジーンズ。そこに、独創的なバルーンシルエットや大きなポケット、カラフルなヘッドウェアを合わせることで、モダンで洗練されたスタイリングへと昇華させていた。

ウジョー(Ujoh)

 「ウジョー」はデジタル形式でコレクションを発表。自然光がたっぷりと降り注ぐ会場でモデルたちが歩く様子を映像にした。様々なアングルで引きとアップを繰り返し映し出す様子は、ブランドの強みを打ち出す最適な方法に思えた。パターンの美しさとそこから生み出される立体的で動きのあるシルエットが次々と登場する。テーラリングを軸にブランドらしい複雑なカッティングとパターンで紡ぎだされるアイテム。セーラーカラーのテーラードジャケットや襟の立ち方が美しいジャケット、スカートとパンツが一体となって彫刻作品のように構築的なシルエットを描き出すボトムスなど、独創的なアイテムが揃う。印象的なのは透け感のあるアウター。シックで重くなりがちな秋冬に、エアリーでセンシュアルなムードを付け加えた。

 

各コレクションは開催順に掲載 

2022秋冬パリコレクション

https://apparel-web.com/collection/paris

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