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2022.03.18

中国巨大プラットフォーマーから、スポーツブランドまで
一斉に参入 中国で幕開けたNFT、メタバース戦国時代

アパレルウェブ「AIR VOL. 55」(2022年1月発刊)より

中国百度(Baidu)が展開するメタバース

 世界的にNFTやメタバースに関連する新興企業が相次いで登場する中、中国でもこの2つの領域が熱を帯びてます。米国金融専門誌「Barrons」の報道によると、中国では2021年9月~11月の期間だけで約3,000社のNFT、メタバースの関連の新規企業の登録があったといいます。さらに、直近では2022年1月にアメリカで開催されたCES(世界最大の技術見本市)にて、中国の家電メーカーのTCLがメタバース向けのスマートグラスを発表したことで注目を浴びています。今回は盛り上がりをみせる中国のNFT・メタバース市場について紹介していきます。

主要なプラットフォーマーがNFT市場へ参入

 NFTの取り組みに関して、中国では「NFTアート」の流れから始まっています。これから紹介する各社の共通点として、独自のブロックチェーンを開発し、その基盤で新しいサービスを提供しています。例えば、2021年5月に発足したアリババ傘下のリアルオークションサービスでは、初めてNFT商品が取り扱われたことで話題になりました。その翌月、同社は中国のアート作品とコラボし、AlipayのデジタルスキンをNFTとして限定16,000枚、1枚1,000円程度で販売、そしてたった数時間で完売しました。一方、ライバル企業のテンセントは、昨年8月に中国国内初のNFTマーケットプレイスアプリ「幻核(げんかく)」をリリース。NFTアートを中心に取り扱い、新規ユーザーが徐々に増えています。また、同じくテンセント傘下の音楽ストリーミングサービス「QQ音楽」でも楽曲をNFTで提供しており、音楽業界にもNFTの波が広がりつつあります。

Alipay が発表した NFT スキン
QR コード画面の着せ替えることが可能

 さらに、検索エンジン大手企業の「百度(Baidu)」では、近年ビジネスモデルをAIや自動運転にシフトしています。同社は実はすでに2018年にブロックチェーンを自社開発し、NFTを絡めたオンラインゲームに参入しており、中国で600万人のユーザーが集まるほど人気を博しています。そして昨年12月末、同社は中国初のメタバースプラットフォーム「度宇宙(どううちゅう)」を発表しています。“近未来の宇宙社会“をメタバースのコンセプトにしており、現在約10万人のユーザーを受け入れる体制を整えています。デベロッパー向けのカンファレンスをこのメタバース内で実施したことも話題を呼びました。同社では、ブロックチェーン、ビックデータ、エンターテイメント、コミュニティといった要素を「度宇宙」に活かして、独自バーチャル経済圏を構築しようとしています。

テンセントが発表したNFTマーケットプレイス「幻核」

メタバース元年各社がバーチャル経済圏に照準

 

 先述したNFT以上に、中国ではメタバースが次世代ビジネスとして注目され、ゲーム、IPビジネス、投資といった領域で盛り上がりを見せています。メタバースというと「Roblox(ロブロックス)」、「Decentraland(ディセントラランド)」など有名なプラットフォームの仮想空間におけるゲームとコミュニティがメインのビジネスモデルですが、この領域にテンセントは早くも布石を投じています。同社の主力ビジネスはゲーム事業と知られていますが、中でも、メタバースの代表的ゲームプラットフォーム「FORTNITE(フォートナイト)」、ゲームコミュニティプラットフォーム「Discord(ディスコード)」など多数のゲーム、メタバース関連企業に資金を重点的に投入しています。狙いは、これら企業間の相乗効果を高めることでゲーム事業、メタバース、IPビジネスを横断した巨大な生態系を構築することにあります。ゲーム以外にも、中国ではアパレル領域でメタバースの活用事例が頻出しています。

メタバース上で行われたANTAの新商品発表会

 2022年2月に開催を控える北京冬季オリンピックに向け、1月10日には、オフィシャルスポンサーブランドで以前本誌でも取り上げた中国スポーツブランド大手「ANTA」が、オリンピック委員会やメタバーススタートアップ企業と連携し、オリンピックの開幕に向けたエンターテインメント番組と、新商品の発表会をメタバース上で行いました。それだけではなく、AIやXR(エクステンデッド・リアリティ)といった技術を活用し、著名スポーツ選手を3D技術で再現したバーチャルヒューマンを登場させ、メタバース内で対談を実施。そして、この新商品の発売に合わせて、同社はTモールと提携し期間限定のメタバースをオープン。ユーザーが専用デバイスを持たずとも、通常のウェブブラウザでメタバースを楽しめるよう新しい購買体験を提供しています。欧米諸国に比べると、中国のNFT・メタバースの取り組みはやや遅れていますが、IT企業からスポーツブランドまで、それぞれがNFTとメタバースに絡めたビジネスモデルの可能性を着実に構想し始めています。また、社会インフラという観点では、1月上旬に中国デジタル人民元と専用の電子ウォレットが正式に市場に投入されました。このようにブロックチェーンを活用し、一国の法定通貨がデジタル通貨として正式稼働できることが証明されたことで、今後、中国のNFT・メタバース関連のバーチャル経済の拡大が一気に加速するという見方も出ています。

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