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2017.07.12
米国ショッピングモール最前線! ニュージャージーの巨大SC「ガーデンステートプラザモール」をレポート
ニュージャージー州パラマス地区に位置する「ガーデン・ステート・プラザ」は、ウェストフィールド社が運営する米国有数の巨大モール。マンハッタンからもバスで30分ほどと都心に近く、かつては多くのブランドや企業が、新規コンセプトストアのテスト運営を行うアンテナモールとしても知られています。日本からの視察で来られた方も多いのではないでしょうか。店舗縮小や倒産で撤退したブランドのスペースも出ていますが、去る者追わず、新規テナントの導入や改装を繰り返し変化しています。ここ数年で、フードコート以外のレストランやカフェ、新種のスイーツやドリンク店などが充実し、ひと際人気を得ています。
EC特化型ストアの実店舗やデパート勢は、ストアに足を運ばせるため、デスティネーションストアとなるための工夫がみられます。普段と趣向が異なりますが、ファッション企業のサマーセールの様子も含めレポートしようと思います。7月4日の独立記念日目前の土曜日で、店頭では50~60%オフのセールが多く、かなりの賑わい。今年の独立記念日での消費は、昨年から4.4%増加の71億ドルと予測されています。
アマゾン・ブックストアがオープン
マンハッタンのコロンバスサークルにオープンして話題になった「アマゾン・ブックストア」の米国8店舗目がこのモールにオープン。3,000種類もの書籍のほか、キンドルやFire TVなどのテスト使用や、Amazon Echoを紹介するイベントが行われています。店内に巡らされたハイテク仕様は、各種メデイアで取り上げられている通りですが、お客さんを見ていると、やはり実物の本が並んだ本屋の楽しさを実感している人が多いようでした。
注目のアスレジャーEC企業「ファブレティックス」の実店舗
女優ケイト・ハドソンが立ち上げたヨガウエアの定期購入サイト「ファブレティックス(FABLETICS)」の実店舗がオープン予定。昨年の年商は2億3,500万ドルと急成長中の企業としても注目を浴びています。昨年、3年以内に75~100店舗オープンすることを発表し、現在のところ22店舗を構えています。このモールには、競合「ルルレモン」が存在しますが、「ファブレティックス」はレギンスの平均価格が40~65米ドル。VIPメンバーになると、約30%オフ。セール時期には2本で24ドルという超破格値。レギュラー会員は500万人、VIP会員は100万人を超えています。オンライン上で予約・購入した商品の試着や商品のピックアップができ、かつ返品もできる実店舗の存在は、モールの集客力にも影響するかもしれません。
異質でも入り口が勝負 変化するデパート
インターネットで注文した商品を店頭でピックアップすることが買い物の選択肢として注目されるなか、デパートのノードストロームでは「オーダーピックアップ」コーナーを入り口に設置しています。特設のコーナーは、美的には感心しませんが、利便性を重視しているのでしょう。専門のコンシェルジェもおり、受け取りはスムーズです。
メイシーズでは、靴売り場のフロア入り口に、アイウエアチェーンの「レンズクラフター」を設置しました。眼鏡を作るという目的で訪問するお客に、その他の消費を促す効果が期待されています。ゆったりとスペースを取り、落ち着いた雰囲気の売り場の前に、とっ散らかった靴売り場が存在しているのです。TJマックス化したセールラックが人気の様子。店内で見つけることができなかった場合に、別のスタイル・色・サイズをオンライン購入&無料配達できるデバイスもあります。
JCペニーは、33年ぶりに再開した家電製品を入り口でアピール。独立記念日のセールで40%オフのビッグセールとなっていました。見通しがいいはずの入り口に、重量感のある冷蔵庫や洗濯機はやはりVMDの美的センスを度外視した異質な雰囲気があります。
人気のコスメ・ボデイケアブランドが続々登場
売り上げ続伸中のコスメチェーン「アルタ」を始め、ターゲットやドラッグストアでもお馴染みのチープシックコスメ「ニックス(NYX)」の実店舗がオープン。フルラインでの展開は実店舗のみとなり、セフォラのサービスに類似した「ビューティーバー」セクションでは、ビデオチュートリアルを見ながら実際にコスメを試してみることができます。
ニックスのほか、バスボム(入浴剤)で人気の「ラッシュ(LUSH)」やドイツのボディケアブランド「KNEIPP(クナイプ)」、ミラノのコスメブランド「KIKO(キコ)」などの専門店が登場。アーバンアウトフィッターズ、フォーエバー21、アンソロポロジー、フリーピープル等、アパレル商品に代わる題材として拡大しています。
圧倒的人気のザラのセール!
米国郊外店への出店は非常に慎重に進めてきたザラが昨年末オープンした店舗。1階と2階構成の大きな売り場で、レディス、メンズ、キッズを販売しています。セール時期をずらしていた頃もありましたが、現在は競合店と足並みを揃え、同時期に行っています。商品量もさることながら、7ドル、12ドルという激安・赤札・目玉商品があり、整頓が全く追いつかないほどの混雑ぶり。棚もの商品はあらゆる場所で山となっていました。この状態で買い物する気は失せますが、競合店の中では最も集客していました。都心に近い立地とはいえ、この状況を見る限り、郊外の客層もファッションを求めているというのが明らか。
ユニクロは減床して効率化?
米国進出から12年、赤字からなかなか脱却できないユニクロ。1年以上前から、地下のフロアはクローズしたままとなっています。以前はメンズとレディスのフロアを分けていましたが、現在はキッズも含めワンフロアにまとめて販売しています。隣接するザラとは対照的に、商品陳列も整い、品質面も飛び抜けています。しかし、この時期にセール商品はウィークリープロモーションのみ、そして、ファッション性を求める客層は競合店に流れている様子。
唯一人気を保持 アメリカンワークウエア「メイドウェル」
1937年創業の老舗ワークウエアブランドを2006年にJクルー社が買収し姉妹ブランドとして復活させた「メイドウェル(Madewell)」は、アメリカンカジュアルの衰退が伝えられるなか、ガーリーなトレンドエッセンスをプラスし、時代の需要とうまくマッチ。グループの中でも健全なビジネス成長を遂げています。店内奥にはいつものセールコーナーがありますが、それ以外は特別なセールは行っていません。にも関わらず、レジ待ちの様子が見られました。
アメリカのデパート売り上げは、ピーク時には、4,000億ドル(約44兆円)あったのですが、メイシーズやシアーズの縮小が影響し、昨今は700億ドル(7兆7,000億円)に留まっています。オーバーストア、ECへの移行、若年層のモール離れなど、ライフスタイルの変化が複雑に影響し、米国のショッピングモールは変革の時を迎えています。EC企業の導入は今後も増えそうですが、どのような変化があるのか、今後も注目していきたいと思います。
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