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2019.01.14
【2019秋冬ミラノメンズ ハイライト1】中央駅の荘厳なホールで行った「エルメネジルド ゼニア」のショーで開幕
画像:エルメネジルド ゼニア
今回のミラノメンズも、ピッティ最終日11日の夜に「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」のランウェイショーにてスタート。2日目の翌12日は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」、「マルニ(MARNI)」、「ニール バレット(NEIL BARRETT)」、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」、「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」などのショーが開催された。
エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)
今回の「エルメネジルド ゼニア」のショーの舞台はミラノの陸の玄関、ミラノ中央駅。荘厳なファシズム建築の広大なホールにランウエイが作られた。欧州他都市を含めた国内外主要都市への発着駅として、様々な人生の歩みの舞台となるこの駅は「WALKS OF LIFE」という今シーズンのテーマを絶妙に演出する。
今回、アーティスティックディレクター、アレッサンドロ・サルトリが表現したのは、アーバンジャングルを駆け巡るコンテンポラリーでメトロポリタンな男たちだ。
クラシックなビジネススーツの代わりに幾何学模様やポップアートのような柄が入ったスーツ、またはテーラーカラーのブルゾンやシャツジャケットとのセットアップ。レザーとニットなどの素材ミックスや、ボアやポケットなどでカテゴリーミックスを盛り込んだハイブリッドアイテム達。サイクリングスタイルを意識したかのような、裾をいくつものバンドで止めたようなジョガーパンツが多く登場し、それには厚底のジップつきブーツやスニーカーを合わせている。
世界中のどの都市でも通用し、かつコーディネート次第で様々な着回しができそうなアイテムが揃う。が、それがイージーにならずに独特な品とラグジュアリー感を保てるのは、エルメネジルド・ゼニア社の特権である自社開発のエクスクルーシブな高級素材と、そのテーラリングの技術が背景にあるからこそだ。
ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)
このところミレニアル時代のインフルエンサーやダイバーシティモデルを起用したり、ショーをツイッターやセルフィ画像と連動させるなど時代の流れをいち早くキャッチしたショーを展開してきた「ドルチェ&ガッバーナ」。
だが、今回は正統派、いやそれどころか、いわゆるファッションショーの前身である、昔のアトリエでの新作お披露目会のような雰囲気。舞台にはサルトリアが作られ、職人たちが手仕事で作業する脇では、当時の“ファッションショー”で行われていたように、解説者がそれぞれのルックの説明をするという構成だ。
今回のコレクションのテーマは“ELEGANZA(エレガンス)”。登場するルックたちは1940年代の古き良き時代のエレガンスを象徴するかのような王道スーツのオンパレード。それにガウンコートやファーロングコート、フロックコートなどが加わる。幕開けはまさに「ドルチェ&ガッバーナ」の真骨頂と言えるオールブラックのスーツスタイル。
それにオールホワイトのシリーズが続く。またフラワー、イタリア的アイコン、宗教的アイコンなど「ドルチェ&ガッバーナ」お馴染みのモチーフや、ステッキ、傘、指輪などジェントルマン的アイテムがプリントや刺繍のモチーフとして登場するが、控えめにあくまで遊びとして使われている感じだ。金糸やスパンコールをあしらったアイテムも多く、シルクやベロアなどの上品な素材も多用されている。
シルエットに関しては、スーツのジャケットはピークトラペルでショルダーを強調、3ピースもしばしば登場し、まるで時代の流れに逆らうかのよう。一方、パンツはタック入りのかなり太めだが、これはトレンドよりは古き良き時代を意識してのことか。
アウトドア、ストリート、リラックスといった流れが相変わらず続く中にも、クラシックやエレガンスへの回帰の予兆はピッティでも少し感じたが、そんな流れを具現化し牽引するような、全くぶれのないショーだった。
ニール バレット(NEIL BARRETT)
今シーズンの「ニール バレット」のテーマは“Born in Britain”。ただ、“英国”といっても今回の主役はパンクスタイル。
これまでも「ニール バレット」は、メンズウエアの原点という視点で、ユニフォームをインスピレーションソースとして使ってきたが、今回はパンクスタイルも一つのユニフォームであるという考えから、そこにスクールブレザー、ミリタリーなどのいわゆる“制服”的な要素をミックスして、ハイブリッドなパンクスタイルを作り上げた。チェック使い、細くて茸短めのパンツ、レザーなどのパンク的なアイテムと、トレンチやチェスターなどのクラシックなアイテムが交錯する。さらにアジアのイメージを添えることでミックスカルチャー的要素を加える。
会場には東京のネオンサインや夜景のビデオインスタレーションが流れているが、それがコートやパンツなどの様々なアイテムのプリントになって登場する。また各所に登場するカラフルなアニマルプリントも、アジアのストリートスタイルを連想させる。これまでの「ニール バレット」からはちょっと想像できないような、かなりユニークでパンチのあるコレクションは、よい意味で衝撃的だった。
マルニ(MARNI)
今回の「マルニ」のショー会場は、オープンスペースの中に、いくつものスピーカーを積み上げて囲うようにして作られた小さな空間。様々な音が交錯するのは、コレクション全体に流れる爆発的ミックスカルチャーの雰囲気を反映してのことか。
ブルーノ・ボッツェットの「ALLEGRO NON TROPPO」という実写とアニメをミックスした映画(アニメ部分はディズニー映画のイタリア版とでもいう感じの動物たちのエピソードが描かれている)のインスピレーションで、様々なアイテムにおいてカラフルなアニマル柄が多用され、また同アニメのプリントがレイヤードされて使われている。
無地のシンプルなスーツやモレスキンコート、またはグレンチェックやウインドーペーン、ストライプなどのクラシック素材はオーバーボリュームだったり、マキシロングのマフラーやモヘアセーターを上から重ねてバランスを崩す。全体的にオーバーシルエットなのと、ブクレ、モヘアなどの起毛素材やダウンによって3Dのボリューム感が強調されていることで、すべてのピースが大きな存在感を放っていた。
マルセロ・ブロン・カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)
「マルセロ・ブロン・カウンティ・オブ・ミラン」のランウェイは暗い倉庫にサイケデリックなネオンをバックにした舞台設定。それと同様の雰囲気の煌びやかなピースが、無地のトータルブラックのルックと交錯する。
ネオンカラーやグリッター、早くも今シーズンのキーワードになりそうなアニマル柄がカラフルに各所に登場。また丈の短いトップにロングコートやボリューミーなアウターを合わせるなどバランス感の遊びも見られる。
とはいえ、このような強い色使いやアグレッシブなアイテムたちがトータルブラックやシンプルなカッティングのアイテムとミックスされることで、今回のコレクションでは真骨頂のストリートテイストに大人感が漂っているのが印象的だった。
ジミー・チュウ(JIMMY CHOO)
初日の展示会で注目だったのは、60~70年代のレトロフューチャーをイメージした「ジミー・チュウ」のコレクション。近未来的雰囲気と当時の宇宙への憧れがポジティブな雰囲気で反映されている。主流はスニーカーやスリッポン。ダイアモンドスニーカーやダイアモンドソールを進化させたシリーズ。またその当時のアメリカンテイストを加え、カレッジジャケットからのインスパイアでサテン生地をつかったりワッペンをあしらったアイテムや、同ブランドのアイコンであるスターをあしらったアイテムも。
ブリオーニ(BRIONI)
今回、ミラノに戻ってコレクションを発表した「ブリオーニ」。クリエイティブ・ディレクターを掲げず、デザインチームによってブリオーニの原点に戻ったクラシックな世界観を展開。“パーソナルラグジュアリー”というテーマで、例えばベルトの裏などの見えない部分にクロコをあしらったり、ライニングにゴージャスなプリントを施すなど、外にひけらかすことなく自分だけがわかるラグジュアリーなディテールを入れている。