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2015.01.14
苦境の米国ティーン市場で急成長 豪ファストファッション「コットン・オン」の魅力
(左)ニュージャージ州のガーデンステートプラザモールの店舗
2015年がスタート早々、ティーンアパレルの『Delia’s(デリアス)』は会社更生法を申請、『Wetseal(ウェットシール)』は338店舗を閉鎖、トリーバーチの前夫が運営する『C.ワンダー』は11店舗を閉鎖しブランドの継続も停止。その他メイシーズは今年前半に14店舗閉鎖、JCペニーは今年40店舗の閉鎖を発表したばかり。また若年層のトラフィックの低下が伝えられるショッピングモールも、今後10年で全体の15%が閉鎖、もしくは全く異なったサービスへの改装が行われると予測されるなど店舗縮小や閉鎖のニュースが相次いでいる。そんな中、米国で地道に出店をし続ける海外ブランドがあります。日頃から不思議に思っている企業でしたので、今回は趣向を変えて、オーストラリア発のファストファッションチェーン「COTTON ON(コットン・オン)」をご紹介したいと思います。
驚異の出店スピード 売上高140%の成長率
中央図は、現在の店舗数。右写真:オーストラリアらしく、元気なスイムスーツも。
1991年オーストラリア発レディス・メンズ・キッズ向けのファストファッション、オーストラリア最大のファッションカンパニー。世界17カ国に1,300店舗以上を運営。プライベートカンパニーのため売り上げは不明ですが、2014年は全世界に250店舗をオープンしており、1,334店舗から1,584店舗に拡大、売り上げは35~40%の成長率と報告されています。2016年までに2,000店舗を目標としている。現在、オーストラリアとニュージーランドで904店舗と大半を占め、その他、南米、中東、アジアに275店舗を構える。米国にはリセッションのまっただ中の2009年、カリフォルニアに初上陸。いつの間にやら、わずか5年で119店舗(マンハッタンには2店舗)。ユニクロが米国進出13年で現在40店舗ですから、この時期にして、この出店スピードには正直驚きました。米国の出店場所を見ると、ウエストフィールドやサイモンモールなど、そこそこのランクのショッピングモールが目立っています。
下着から文具まで 成功を支える7つのブランド
コットン・オングループが展開する7つの姉妹店。
競合店同様、ティーン向けに低価格のトレンド商品をローマージンでハイボリューム販売。販売方法も、1枚15ドルの商品を2枚で20ドルで販売するなど徹底的なバリュー戦略。Eコマースの成長や、ITとSNSを駆使したテクノロジーを若年層向けに導入している。例えば、試着室に設置された機械が商品に取り付けられたRFIDコードを読み取ることで、服のイメージに合った音楽が流れ、ミュージック+ファッションを融合することで、実店舗へ誘導。また、アフリカ、南米、中東、中国など人口の多いエリアへの進出による積極的なグローバル戦略などが挙げられます。
個人的に興味深いのは、多角経営をしていること。A&F、ギャップ、アメリカンイーグルなど米国企業がかつてトライしつつも、全滅に近い状態で皆断念。本来のビジネスにフォーカスするのが精一杯というなか、コットン・オングループでは、異なるカテゴリーで以下の7ブランドを展開しています。
●COTTON ON KIDS:2005年スタートのボーイズ、ガールズ&トゥイーンファッション
●COTTON ON BODY:2007年スタートのレディスインナー、下着店
●Rubi Shoes:2008年スタート、スタイリッシュでトレンド重視のレディスシューズ&雑貨)
●Typo:2009年スタート、カラフルでユニークなステーショナリー&ギフト商品
●Factorie:2007年、コットン・オンよりもアーバントレンドなスタイルを好むレディス&メンズファッション
●TBar:2006年、パーソナルスタイルを表現するグラフィックが満載のTシャツ専門店
●SUPRE:2013年にコットン・オングループが買収した、パーティーウェアを専門にしたヤングレディスチェーン
米国では、店舗はコットン・オン(レディス&メンズ)のみ。オンラインではキッズとステーショナリーのTYPOを展開。市場や客層が違うと言ってしまえばその通りなのですが、これだけの異なる姉妹店を運営し急進している企業はなかなかありません。逆に考えれば、オーストラリア市場に日本のファッションブランドが進出すれば、大きなビジネスの可能性を秘めています。南米やアフリカも同じことですが、日本企業が二の足を踏んでいるグローバル市場にがんがん進出しているのがコットン・オンの強みと言えます。昨年オーストラリアに出店したユニクロは、為替や輸入コストなどによる内外格差で、日本市場よりも割高で販売されていることが問題視されていたようですが、その他H&Mやザラなど海外からの競合企業にも全く屈せず、多角経営で消費者が楽しめる店を提供し続けている姿勢は学ぶべき点ではないかと思えます。
米国の競合店と比べると、品質はフォーエバー21、価格帯は若干の内外格差があるものの、H&Mに近いでしょうか。米国でのビジネスは、アバクロを始めとするティーンリテイラー同様厳しい局面もありますが、資金力と本国での屈しない態度で淡々とビジネス拡大している印象も受けます。
SNS&ITを駆使 デジタル戦略で10代顧客を掴む
店頭のポスターをスキャンするとファッションショーが見れるスマホアプリは、昨秋に17カ国向けにスタート。
不思議なのは、119店舗もありながら、あまり目立った宣伝を行っていないこと。デジタル世代がターゲットということもあり、米国ではユーチューブチャンネルやSNSでの活動が中心。フェイスブックのフォロワーは66万人、インスタグラムは24万人。最近ではユーチューブのホールビデオで、人気の『ワイルド・フォックス』や『ブランディ・メルヴィル』と同様に紹介されていますので、USティーンの間では知名度が上がって来ているようです。今一番難しいとされるティーン市場がターゲットであり、ゆっくりとした成長ですが、いずれシューズや文房具の姉妹店も米国に進出することになるかもしれません。勢いのある企業ですので、今後の動きにも注目したいと思います。
コットン・オン http://cottonon.com/US
マックスリー・コーポレーション
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