PICK UP

2016.10.12

10年連続成長!米国キッズとティーンが心躍るプチプラショップ「ファイブ・ビロー(FIVE BELOW)」

 この世知辛い世の中に、41四半期(10年)連続で既存店のプラス成長を続けている驚異的な企業があります。5~19歳のキッズを対象にした「ファイブビロー」というチェーン店で、5ドル以下の商品を販売するストアです。2002年にペンシルバニアで創業、2012年にIPOを果たし、2013年には244店舗、その後、強行な出店を続け、今年の8月末には遂に500店舗目の出店を実現しました。典型的な出店による成長を遂げてきた企業と言えますが、多くの企業が閉鎖・縮小する中、将来的に2,000店舗というとてつもない目標を掲げています。売り上げは伸びているものの、投資家達からは急激な拡大に対する懸念の声が挙がっています。それでも、驚異的な成長と出店を続けキッズ達を魅了している「ファイブビロー」をケーススタディーとして紹介したいと思います。

ファイブビローの売り上げ推移と出店場所

2013年 2014年 2015年 2016年
$535M $680M $832M

$1B(予測)

244店舗 347店舗 418店舗 500店舗(8末)

 2011年の2億9,700万ドルから、2015年は、8億3,200万ドルに成長。今年は10億ドルに達すると予測されています。既存店の売り上げは年間3~4%増で、1店舗あたりの売り上げは、$1.9M~2M(190-200万ドル)といったところ。現在のところ、東海岸と南部、中西部を中心に出店しており、来年、カリフォルニア州に初出店が予定されています。出店場所は、家賃の安いモール中心、車で走っていると道路沿いに見かける、スーパーマーケットやクラフトショップなどと一緒に入っている中小規模モールです。大型ショッピングモールから数マイル範囲内、住民が多く住んでいるエリアを狙っているのでしょう。2,000店舗達成は難しいにしても、閉鎖店舗の増加、米国の西半分は未進出の状況から、ファイブビローが出店できるスペースはまだまだありそうです。

ファイブビロー・パラマス・ニュージャージ州店(9月初旬撮影)

キッズが寄りたくなるワクワクする品揃え!

所狭しと並んだキャンデイやスナックは米国版の駄菓子屋風

 ファイブビローの売り場面積は平均で7,500sqft(約695平米)。取り扱い品目には、テック・ビューティー・コスメ・スポーツ・おもちゃ・ファッション・本・文房具・お菓子・パーティーグッズ・レジャー・ハロウィンなどのシーズン商品があります。それに加えて注目したいのが「New & Now」のカテゴリー。一時的なトレンド商品を逃さずキャッチ、常にアップデートしています。現在、ショップキンズ(Shopkins)という、食品を擬人化した様々なフィギュアシリーズや、折りたたみ式のヘッドフォン、iPhone7のケース、ハロウィングッズなどがこのコーナーに登場しています。ファッション系では、Tシャツ、スカート、スニーカー、ハット、バックパック、バットマンの靴下、スポーツブラなど全て5ドル以下。その時の正しいトレンド商品をコンスタントに取り入れ、子供達がついつい寄りたくなる商品構成が特徴です。市場の流れからECもスタートしましたが、売り上げの大半は店舗からの収入です。

お小遣いでまかなえる駄菓子屋感覚!

Tシャツも5ドル

 ファイブビローが成功している一番の理由として、親が子供に買ってあげる為の店では無く、子供自身がお小遣いの範囲で買い物できる店であることが大きいでしょう。移動手段は車なので、親が店に連れて行き、小さい子供たちは親が支払うのですが、あくまでもキッズ目線のお買い物は駄菓子屋に入った時のあの感覚に近い。所狭しと置かれた雑貨やお菓子は、宝物の様に、目の前に広がり、どれを買おうかわくわくする、そんな心理です。中高生であれば、テック系のガジェット、ネイルなどのコスメ、部屋のインテリア用品など、5ドル以下であればお小遣いで十分に賄える範囲です。昨今のキッズ達が求めるパーソナリティーの表現も実現しています。

最大の競合店との決定的違いは!? プチプラ!トレンディ!エキサイテイング!

 米国100均ショップの大手「ダラージェネラル(Dollar General)」や「ダラーツリー(Dollar Tree)」と比較されることが多いですが、インテリア、品揃えともにクールなイメージとはほど遠く、客層のほとんどが、食料品や洗剤などの日用品を買いに行く店です。しかも、キッズ・ティーン向け商品はごく一部で、トレンド商品に関してはないに等しいのです。ファイブビローと競合店が決定的に異なる点は、キッズに特化したトレンディなプチプラ商品を扱っていることにあります。キッズやティーンが喜ぶジョークやウィットに富んだデザインの商品も多く、女子向けのアクセサリーチェーン「クレアーズ(claire’s)」やティーンターゲットの「スペンサーズ(Spencer’s) 」を合わせ、プチプラにしたような感じでしょうか。

移り気なキッズ達がターゲット プチプラ雑貨の盲点と成長のポイント


420店舗目となるフィラデルフィア店のグランドオープニングの様子(動画)

 プチプラ雑貨といえば、デンマークの「フライング タイガー コペンハーゲン(Flying Tiger Copenhagen)」がマンハッタンに3店舗目をオープンし、米国全体では4店舗となりました。この手の雑貨店の拡大や、例えば、イケアがキッズとティーンに特化した雑貨ショップをオープンしたら、移り気なキッズ達は夢中になってしまうかもしれません。他にも、競合店は現れるでしょうし、雑貨商品は、とにかくいつかは飽きるものなので、ファイブビローの成長は、トレンディでユニーク、そしてキッズが飽きない品揃えを如何にコンスタントに投入していくかにかかっているのではないでしょうか。投資家が懸念している急激な拡大のスピードよりも、キッズ達が飽きるスピードの怖さがあるのだと思います。


 

 

マックスリー・コーポレーション
MAXRE Corporation

 

マックスリー・コーポレーション ( CHIZU NISHIDA )
米国ブランドの輸出及びビジネスコーディネート、マーケット調査などを承っています。

■ビジネス関連のお問い合わせ:小林まで
■市場調査レポートのお問い合わせ:西田まで

 

【公式サイト】http://www.maxrecorp.com/
【ブログ】マックスリー・コーポレーション

メールマガジン登録