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2018.10.17

「ミント神戸」が6年ぶりの改装 “上質感を求める大人”を照準にした幅広いラインナップへ

 2006年、神戸・JR三ノ宮駅前に開業したファッションビル「ミント神戸」。セレクトショップや個性派ブランドを集積した商業施設として、ファッション感度の高い20-30代をターゲットにしてきた。前から一度、取り上げたかった施設で、今年10月4日、6年ぶりに実施した大規模な改装を機に、お邪魔することができた。改装の狙いについて、お聞きした。

ターゲット層を再設定、本物志向を意識

館内の内装も一新した(2階フロアから吹き抜け状の空間を見上げられる)

 神戸・三ノ宮駅界隈は、そごう神戸店やマルイ、地下街の「さんちか」などが集積する繁華街。「ミント神戸」はターミナルの三ノ宮駅とペデストリアンデッキ(歩行者通路)で連絡する駅前の一等地にある。売り場面積は約1万5000平方メートル。1つのコンセプトでフロアを構成するには手ごろな規模感だ。

 今回の改装では5億円をかけて、移転リニューアル、改装、新店を含む計15店舗を新しくした。強みである飲食やファッション関連テナントに手を加えた。2006年の開業時は、25-30代のカップルを主要顧客層に据えてきたが、10年余が経過し、ターゲット層とテナントとの乖離が大きくなっていた。今後、数年の間に周辺へ新しい商業施設の開業や改装が相次ぐ環境変化も考慮に入れた。

 改装するにあたり、改めてエンドユーザーのアンケートを取ったそうだが、「テナントに魅力がない」「仕方なしに来館している」など、「かなり辛辣な回答だった」(神戸新聞会館商業運営本部ミント神戸マネジメントセンター、吉川忠一郎館長)という。「リニューアルに際し、どの客層がターゲットなのか、再考した」(吉川館長)。周辺施設との住み分けも考慮した結果、「ライフスタイルにこだわる本物志向の人達」をターゲットにすることで落ち着いた。良品を求めると結果的に単価も高くなる。必然的に顧客の年齢層も高くなった。

 「高価だがトレンドと品質の伴った商材――ファッションにこだわらず生活雑貨も含めた――を集積した。客単価を高めることを考えた」(吉川館長)。売り上げの25%を占める“強み”の飲食もさらに強化した。同館では7-8階の2フロアに飲食テナントを集めているが、駅前の一等地で、これだけの集積は少ないという。こうした点も来館を促す後押しになっている。また、9階フロアにシネマコンプレックスが入っていることも大きい。

ファッション関連はブランド観の演出を重視

2階フロアの「ユナイテッドアローズ」は横浜、新宿に次ぐ新しい内装の店舗へ改装

 前述の通り、新しい顧客層である本物志向の顧客に満足してもらうには、トレンドと品質が伴った商品に加え、しっかりとしたブランド観の発信が必要になる。各ブランドの世界観を可能な限り表現するため、改装では「路面店的な発想になった」(吉川館長)という。その象徴的なテナントが、駅からペデストリアンデッキで連絡する主要導線である2階フロアに改装オープンした「ユナイテッドアローズ」(UA)だ。改装前は「ビューティー&ユース」業態だったが、他フロアで展開していた別業態のUAも集約して、横浜、新宿に次ぐ新しい内装の店舗へ生まれ変わった。そのほか同じ2階には、近隣の路面店から移転した「ドゥーイズィエム クラス」を導入し、グレード感を高めた。

 3階フロアには新たに感度を意識した「アダム エ ロぺ」と、40-50代女性のきれい目カジュアルを加えた大人がターゲットの新業態「ジャーナルスタンダード」を出店。既存の「ル ドーム エディフィス エ イエナ」「アーバンリサーチ ロッソ」と併せて、セレクト系ショップの集積を作っている。4階は、「ビーセカンド」「ビショップ」を核に、スポーツ系テナント「フレッドペリー」「ソラ」(移転オープン)を導入した。5階には、「エヴァム エヴァ」など大人のレディスファッションを採り入れた。「マーキーズ」「ダッドウェイ」など、上質・高感度の子供向けテナントも導入した。

 ファッションや飲食、生活雑貨など、幅広い商材を拡充しているが、その“感度”や“テイスト”は共通している。新しいターゲット層が買い回りできるよう考慮した。顧客はボリューム層ではないため、低い単価で来館客数を稼ぐというスタイルの運営は考えていない。より密接な関係を築いた顧客を囲い込み、ワンストップショッピングで客単価を高めていこうという戦略である。

 ポイントカードを作成しているが、客数を増やして来店を促す目的ではなく、「顧客(の特性や動向)を把握して、大事にサービスを提供することが目的」(吉川館長)だ。月に2回ほど、コンサートやストリートライブなどのイベントも実施している。文化の発信基地として、館の価値観を知ってもらう狙いがある。「ターミナル立地の商業施設だが、1フロアが400坪程度と狭く、客数を増やし過ぎると流れが悪くなる。他施設との住み分けを考えた場合、個性派テナントの集積が効果的ではないか」(吉川館長)と考えている。

「ミント神戸」 公式サイト

 


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

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