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2018.09.06

【アントネッリCMOに聞く】伊の高級セレクト「Luisaviaroma.com」 成長続ける老舗ショップの“攻める”EC戦略

「Luisaviaroma」マーケティング最高責任者(CMO)のニコラ・アントネッリ氏。オンラインストア「Luisaviaroma.com」では現在、200人以上のスタッフが働く

 ラグジュアリーブランドに特化した伊フィレンツェ発のオンラインストア「Luisaviaroma.com」の販売が好調だ。国内外600超のブランドを揃え、年間約5,300万人がアクセス。同サイトを運営するLuisa Via Roma社の2017年度売上高は1億2,500万ユーロ(約161億円)とこの10年間で15倍の伸びを見せている。昨年10月には日本版サービスもスタートした。成長の背景にある取り組みや戦略について、「Luisaviaroma(ルイーザヴィアローマ)」マーケティング最高責任者(CMO)のニコラ・アントネッリ(Nicola Antonelli)氏に話を聞いた。

「Luisaviaroma」を知るデータ

 1930年フランス人女性ルイーザ・ジャッキャンが伊フィレンツェ出身の夫とともに、ローマ通り(Via Roma)に帽子専門ブティック「Luisaviaroma」を開店。衣類販売など次第に事業を拡大した。2人の孫アンドレア・パンコネージがパリで買い付け業務を行ったことが転機に。バレンシアガやバルマン、ジバンシィ、サンローランといった有力ブランドと次々と取り引きを開始し、「Luisaviaroma」の名前がより広く知られるようになった。新人デザイナーや新興ブランドを積極的に採用して世界的なファッションブランドへと押し上げるイノベーターとしても評価が高い。

 1999年には、「Luisaviaroma.com」を開設。2004年にはサイトを英語化し、全世界へのユーザーへのリーチを図った。現在は日本語を含む9カ国語に対応。「Luisaviaroma」全売り上げの92%を占める事業に成長した。「Luisaviaroma.com」は年間で5,300万人が訪問(約10年間で50倍)し、ページビューは年間2億万PV。インスタグラムやツイッター、フェイスブックなどをはじめ、中国最大のSNSであるWeiboやWechatにもアカウントを開設。SNSを通じて月間900万人の顧客にリーチしている。売り上げを国別で見ると、米国が15%を占め、独10%、中国&マカオ・イタリア・英国9%、フランス・台湾・韓国・香港5%、カナダ3%と続く。

 現在は、物販だけでなく、ブランドとのコラボレーション企画、音楽イベントやシンポジウムの開催などファッションを軸とした幅広い事業に取り組む。

 

「Luisaviaroma」の紹介ムービー(2016年製作)

日本のユーザーはコーディネートより仕様を重視

―「Luisaviaroma」について。

 

 「Luisaviaroma」の歴史は、1930年代前半に伊フィレンツェでコンセプトストアを創業したことから始まります。1960年代後半にはヨーロッパで初の「ケンゾー」(1968秋冬コレクション)販売店になるなど、アバンギャルドなセレクトで注目を集めました。EC事業に参入したのは1999年。そこから徐々に規模を拡大し、現在では売り上げ全体の92%を占める主力事業となりました。レディス、メンズ、キッズのウエアやアクセサリー、シューズを販売しており、インテリアやヨーロッパでのみ取り扱うビューティー関連を含め、国内外から600を超えるブランドを取り揃えています。

―日本語版サービスを昨年10月に開始した。イタリアと、アジア、とりわけ日本との間で、ファッションに対するアプローチの違いは?

 

 私たちには少なくとも、“アジア市場が他の市場と大きく異なる”という認識はありません。好きなブランド、嫌いなブランドは地域によって多少違いますが、私たちがターゲットとするのは、「エッジの効いたラグジュアリーを好むお客様」であるということ。特定の層をターゲットにしているため、地域差が生じにくいのでしょう。

 

 日本市場に関しても、本格参入してからまだ日が浅いため、データは十分蓄積されていませんが、極端にアジア諸国と異なる点はないものとみています。

 

 しかしながら、イタリアに比べ、日本のお客様は、購入前に仕様などビジュアル以外の情報をしっかり入手される傾向は強いようです。ラグジュアリーファッションに限っての話になりますが、スタイリング提案など視覚的に見せるコンテンツより、商品の特徴を細かく説明したレビューがあるようなコンテンツの方を経由した場合の方がよりコンバーション(売り上げなどの成果)が高くなっています。

2008年のオムニチャネル化が成長のフックに


デジタル・テクノロジーの導入に積極的に取り組むLuisaviaroma
現在は、業界人やジャーナリストが登壇するITシンポジウム「LVR summit」も開催している

―イタリアでECに強いラグジュアリー系セレクトショップといえば、ほかに「ANTONIA」や「ANTONIOLI」などもあるが、「Luisaviaroma」の強みは?

 

 その2社は、私たちほどデジタル分野に比重が置かれていません。オフラインでの売り上げがメインのようですし、会社の体制もそのビジネスタイプや状況を反映しています。一方、私たちは、今や“純デジタル”企業と呼べるほど、オンライン販売を主力としています。ビジネスの手法も、市場へのアプローチ方法も、スタイルが全く異なります。

―購買を左右するコンテンツ作成において、力を入れていることは?

 エッジィでアバンギャルドなファッションを特徴とする“Luisaviaromaらしさ”が伝わるようなコンテンツづくりを意識しています。例えば、独占インタビュー記事やトレンドレポートなどがあげられますが、繰り返し訪問したくなるような魅力のあるオリジナル・コンテンツを作ることによって、他社との差別化につなげています。独自性のあるコンテンツを随時アップできるようにも努めています。

 

編集コンテンツをタイムラインにまとめた「LVR DIARY」
トレンドまとめや動画を使ったトレンドまとめや、デザイナーへのインタビューなど幅広い種類のコンテンツが強み

―EC販売におけるユーザー情報や消費動向をどう店頭販売に生かしているか?

 

 10年前にオムニチャネル戦略を採用したことが、当時の成長に大きく貢献しました。LuisaViaRoma本店を2008年に改装したのですが、商品の陳列スペースを少し削り、その代わりにタッチスクリーンやiPadといったデジタル・デバイスを店内に設置しました。実店舗においてもお客様にデジタル体験をしていただくためだったのですが、こうした取り組みに消費者はまだ馴染みの薄かった時代でしたし、大きな反響がありました。

―取り扱いブランドの独占販売は?

 

 独占販売しているブランドはありませんが、商品単位では、様々なブランドの限定アイテムを販売しています。また、こちらも独占販売ではありませんが、イタリアの小規模なアルチザンブランドを世界に向けて発信する取り組みも行っています。例えば、大理石を使ったインテリアやレザー、ジュエリーなど、メイド・イン・イタリーの上質で個性的なブランドのラインナップは、フィレンツェを拠点とするLuisaViaRomaならではでしょう。日本市場ではあまり知られていないブランドや、入手しにくいブランドを数多く見つけていただけると思います。

―チェックしておくべき2018秋冬のトレンドは。

 

 2018年秋冬はレディス、メンズともにウエスタンテイストとチェック柄が外せません。トラックジャケットやスウェットシャツなどのスポーティーなスタイルは、引き続き人気で、セレクションも豊富です。レディスは、スパンコールやラインストーン、メタリック、グリッターなどの光る素材、色はネオンカラーがトレンドに浮上しています。メンズは、特にイエローに注目したいですね。異なる柄や素材を大胆にミックスして重ね着するのが旬なコーディネイトです。

―「Luisaviaroma」がおすすめする旬なブランドは?

 

 ざっとあげると、グッチ、バレンシアガ、モンクレール、オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー、ディースクエアード、マックスマーラ、ドルチェ&ガッバーナ、フェンディ、サンローラン、ナイキ、ジバンシィ、ヴァレンティノ、バルマンなどがおすすめです。

LuisaViaRomaが目指す“インターナショナライゼーション”

―オリジナルブランドを販売する計画は?

 現在検討中のテーマですね。今のところ、独自のブランドは手がけていませんが、2017年から、「LVR Editions」と称して様々なブランドとエクスクルーシブなコラボレーションを発表しています。LVRは、「LuisaViaRoma」の略称です。これまでに、ミッソーニ、アルベルタフェレッティ、アレクサンドル・ヴォーティエ、エリーサーブ、アレキサンダーヴォウティエといったブランドと協業したほか、シンガー・ソングライターのジェイソン・デルーロと組んだコレクションもあります。

シンガー・ソングライターのジェイソン・デルーロと協業した「LVR edition」

―今後発売するエクスクルーシブなコレクションは?

 

 もちろんありますが、残念ながら今ここではお知らせできません(笑)。私たちのサイトやSNSで最新情報をチェックしてください!

―「LuisaViaRoma」の今後のビジネス戦略において、最も重視していることは?

 

 LuisaViaRomaが掲げる目標の1つが、“インターナショナライゼーション”です。インターナショナライゼーションとは、言語的および文化的な観点でのローカライゼーションということですね。さらに、ユーザー1人ひとりに向けてカスタマイズ化したコンテンツの作成が大きなポイントになってくるでしょう。

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