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2018.07.11

米アーバンアウトフィッターズグループ 売り上げ好調の背景にある4つの戦略を探る

 競合のアパレル企業が店舗閉鎖や値引きによる集客から抜け出せないでいるなか、アーバンアウトフィッターズグループ(以下UOグループ)の2018年は好調な滑り出し。5月に発表された第1四半期では、過去4年間で、初めて既存店の売り上げが10%の増加に転じ、純売り上げは前年比12.4%増の8億5,600万ドル(約942億円/$1=110円)、小売り部門では前年比12.3%増の7億7,560万ドル(約853億ドル)を確保。とりわけEコマースは2ケタ増の成長で売り上げの半分を占めています。第2四半期は、既存店の売り上げも14%増加となっており、アパレル企業の中では異例の好成績を維持している企業の1社となっています。

■第1四半期の実績(2018年4月30日時点)

ミレニアル向けのアクティブウエアとデニムの卸売りが絶好調

「FP MOVEMENT」のサイト

 UOグループのレディスカジュアル「フリーピープル」では、デパートや専門店向けに卸売りを行っていますが、最近拡大を測っているヨガやピラテイスなどのスポーツウエアライン「FP ムーブメント(FP MOVEMENT)」の卸売りは41%増、デニムラインは200%増という好調ぶり。現在、卸売り専用のオンラインプラットフォーム「JOOR」を使用した専用サイトがあり、バイヤーはウェブ上で利用者登録から、注文、支払い管理、毎月の新入荷商品の確認までを一貫して行うことができます。年に数回とは言え、出展費用がかからず、何よりバイヤーは展示会に足を運ばずして、ファストファッションに近いスピードで新作を注文することができるのです。

 商品は、ミレニアル層をターゲットにしたヒップで個性的なデザインが中心。GAPやH&Mのように、ディスカウントに頼った集客をせず、ブランドの価値観をキープし続けた結果、ミレニアル層の中でも高所得者層に支持されたといえます。また、ライフスタイル・ブランド「アンソロポロジー」では、ホームグッズ関連の卸売りをスタート。今後も注力していくようです。

プロパー販売に拍車をかけるか 新決済ツール「ショップナウ・ペイレイター」

スネークスキンのジャケットは正規価格で89ドル。22.25ドルの4回払いが可能

 UOグループが、Apple Payの導入とともに密かにスタートしたのが、新決済システム「アフター・ペイ(AFTER PAY)」。消費者は、オンライン上でトータル購入金額の分割払いができるというプログラムです。35~1,000ドルまでの金額で4回払いが無利息で可能。初回は即座に引き落とされ、残りの3回はそれぞれ2週間後に引き落とされます。例えば上の写真にあるスネークスキンのジャケットは正規価格で89ドル。22.25ドルの4回払いができることになります。

 

 「アフター・ペイ」の導入により、プロパー価格で商品を購入し、より多くの商品を購入する機会を創出。現在、「アフター・ペイ」導入による売り上げの増加は20~30%と発表されています。アメリカでは2週間ごとに給料を支払う企業が多いため、すぐに欲しい消費者には効果を発揮するプログラムといえます。

店頭ではセルフ・チェックアウトを試験導入

セルフ・チェックアウトを試験導入した「アーバンアウトフィッターズ」ライフスタイル店

 マンハッタンのヘラルドスクエアにある「アーバンアウトフィッターズ」ライフスタイル店では、セルフ・チェックアウト(決済)を試験的に取り入れました。すぐ隣に設置された通常のキャッシャーの方に圧倒的に多くの人が並んでいたのが印象的ですが。アパレル商品の場合、ウォルマートなどの食品を扱う小売り店と比較して購入点数が少なく、スキャンにも時間がかからないため、モバイルによるチェックアウトの方が現実的かもしれません。

 

サードパーティーにマーケットプレイスを提供

 UOグループは今年5月、サードパーティーが「アーバンアウトフィッターズ」と「アンソロポロジー」のオンライン上で商品を販売できるマーケットプレイスをスタートしています。

 

 URBNVENDOR.COMに登録し、通過したベンダーは、UOのウェブサイト内で商品を販売することが可能となります。アマゾンや楽天と同じ方式ですが、UOのお眼鏡にかなったセンスある特別なブランドということに大きな特徴があります。かつて、ヘンリーベンデルやバーニーズNYなどの有力百貨店が、一般向けのスクリーニング(適格検査)を行っていた時代がありました。その当時は、5番街の高級百貨店で販売できる機会を得るために、デザイナーたちが長蛇の列を作っていたのです。UOの場合、テイストの合うベンダー商品を選定し、販売する場所をオンライン上で提供することで、ウェブサイトのセレクションの充実、そして、ユニークな商品を求める消費者によるトラフィック増加を図っているものだといえます。

 

 UOグループの売り上げ好調の背景にあるのは、様々な手法を用い、プロパーによる販売比率を高めていることにあると考えられます。しかし、ディスカウント中毒となっている消費者が多いのも事実。そのなかでも同社が健闘しているのは、フルプライスでも欲しい魅力ある商品であること、今買わなければなくなってしまうという希少価値があること、ブランド価値が維持されていること、デジタル世代に合わせたマーケティングといった強みとともに、周りに流されない企業努力があるのだと思います。

 


 

 

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