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2025.02.21
【2025秋冬東京 ハイライト1】有力ブランドが東京でショーを開始 日本の伝統技術や最新技術と現代的なデザイン手法を融合
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写真「シンヤコヅカ」
ニューヨークとロンドンのファッションウィークの狭間となる2025年2月17日から19日もショーが行われた。メンズブランドだけなく、「メッキ(MEKKI)」や「ミスターイット(mister it.)」など海外を睨んで展示会を早々に行ったウィメンズブランドもショーやプレゼンテーションを開催している。
シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)
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「シンヤコヅカ」は、東京・新宿の新宿NSビル地下「NS HALL」で2025秋冬コレクションを開催した。
今回のテーマは “Good morning, I wish I could fly, never mind”。飛べない鳥であるペンギンをモチーフに、自身を重ね合わせ、「ペンギンのままでいい」という肯定のメッセージを表現した。
ショー開始前から、会場となった地下スペースはブランドの象徴ともいえる青いライトで照らされていた。コレクションは、白いシャツと黒いパンツのルックからスタート。モデルはペンギンを思わせる青いマスクをかぶり、黒いコートを着たモデルは頭に青い羽をつけて登場した。ペンギンのイラストが描かれたニットや青いアイテムなど、ペンギンとブルーが今シーズンのキーポイント。その後もブルーを基調としたアイテムが続いた。
前回のコレクションでも登場した、現代アートを思わせる額縁から飛び出すようなデザインには、今回はペンギンが加えられている。ペンギンを思わせる黒とボリュームのあるシルエットのマントやコート、そしてニット。海を連想させるブルーに白を加えた配色が印象的だ。繰り返し登場する青い羽は、飛べない鳥の象徴なのか、それともペンギンの「飛びたい」という願いを表しているのだろうか。ニットにもペンギンのモチーフがあしらわれている。
その後も、ブルーとペンギンというテーマは徹底されている。コヅカブルーとも呼べそうな独特の青を用いたコートやスカートが登場。ミリタリーからワークウェア、フーディーやダウンまで、アイテムのバリエーションは幅広いが、ペンギンとブルーという軸はぶれることがない。まるで画家がブルーを使い、ナンバーをつけながら日記のように絵を描くように、コレクション全体を通してブルーがその時々の感情やメッセージを映し出していた。
前回のコレクションは、私小説のような個人的な思いやエネルギーを込めた絵画の展覧会のようだった。しかし、今シーズンは、デザイナーが飛べない鳥=ペンギンを描いた絵画作品を集め、一冊の絵本や物語の挿絵のように構成したコレクションのようにも見えた。
好きな色であるブルーを軸に、その時にやりたいことや感じたこと、伝えたいメッセージをストレートに表現する「シンヤコヅカ」。今回のコレクションには、「ペンギンでもいい」という肯定の思いが込められている。
小塚信哉は「ペンギンは飛べない鳥ですが、飛ぶ鳥に憧れながら歩いたり泳いだりします。その姿が、自分の歩みとも重なる気がしたんです。今回のコレクションでは、『ペンギンでもいい』というメッセージを込めました。飛べることを目指すのではなく、ペンギンのままでいい。そんなコレクションを作りました」と語った。
レシス(LES SIX)
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「レシス」は2月19日、東京・歌舞伎町の王城ビルで2025秋冬コレクションを発表した。リリースの最後に「どうせなら、正直に言ってやろう、と。どんな醜い世界に僕らが生きていて、どんなに自分たちが汚いことが美しいのかって」と書いた今シーズン。「全能者」や「全権者」、キリスト教ではキリストを指す“パントクラトール(Pantokrator)”をテーマにしたコレクションを見せた。
工事中の建築現場や80年代のアバンギャルドを思わせる会場。コレクションは、色褪せたデニムの上下に白のTシャツというルックからスタートした。ボーダーの服のようなものを巻き付け、インビテーションにも使われた十字架のネックレスをつけ、うつむきながら歩く。オーバーサイズのブルゾンやワークウェア、スウェット、ベースボールキャップなど、さまざまなアイテムを組み合わせている。
だが、変色したパンツやジャケット、汚れたようなトップス、経年変化で色が変わったような生地、さらにタイダイなど、ストリートやメンズのベーシックアイテムをベースに、日本のデザイナーの特徴である素材や染色技術、加工技術を用いてオリジナリティを追求している点は一貫している。
繰り返し登場するダメージデニム。十字架をつけたニットも変色している。また、ジャケットとパンツの上に破れたTシャツを重ね、背中が割れたデザインや、「GET RICH」と書かれたデザイン。古着のようなムードが漂う。
古着を解体・再生させるアバンギャルドな手法ではなく、経年劣化を美しさと捉えた素材やデザインが特徴だ。それをさまざまなアイテムと組み合わせている。耳を塞ぎたくなるほどのノイジーな大音量の音楽や、テーマに合わせたように鳴り響く教会の鐘の音が、カオスをさらに加速させた。
リリースの冒頭には、「ふと昔を思い出してみた。あの頃は、音楽やファッション、アートがいつかこの世界を変えてくれると思っていたし、このつまらない毎日を別世界にしてくれると信じていた。自分もその一員になりたくて、世界のさまざまな国や人々のカルチャーを吸収できるだけ吸収し、たくさん我慢もして、いつかの日か全力で吐き出してやろうと思っていたし、今もそう思っている」という文章も書かれていた。
汚れなどの不完全なものを美しいとする考え方は、日本的ともいえる。青春の反抗やストリートファッションの要素が色濃く反映された、東京的なデザインやアイテムに、素材、染色、加工などの日本の伝統技術と最新技術が共存するコレクション。