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2025.02.17
【2025秋冬ニューヨークハイライト2】新進気鋭のデザイナーのコレクションや新たな発表形式を特集
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写真左から「アディアム」「セオリー」「アシュリン」「フォーム」
ニューヨークでは、2025年2月6日から11日までNYファッションウィークが行われた。ハイライト第二弾として、展示会を行ったブランド、そして気鋭の注目ブランドから、ピックアップしてレポートしよう。
ニューヨークメンズデイ(NYMD)
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「A.ポッツ」
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「シヴァン」
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スポンサーの「スペリートップサイダー」もアパレルコレクションを発表
Photo by Eri Kurobe
初日である2月6日に開催されたのが、ニューヨークメンズデイだ。今季は「A.ポッツ(A.Potts)」、「ホールド エヌワイシー(Hold NYC)」、「シヴァン(SIVAN)」、「マックス エスメイル(Max Esmail)」、「ジョセフ マックレー(JOSEPH McRAE)」、「ピーク ラペル(PEAK LAPEL)」の6ブランドが参加、「スペリートップサイダー(SPERRY TOPSIDER)」らがスポンサーとなった。
すでに何度も参加してきているアーロン・ポッツが手がける「A.ポッツ」は、メンズ/レディス兼用でユニセックスな2025秋冬コレクションを披露。ゆったりとしたシルエットで、80〜90年代のスタイルをモダンに表現してみせた。
ジャージー素材で、ハンカチーフヘムのスカートドレスや、ノットを結んだドレス、ケープ状に重ねられるトップ、ポンチョ、ドレープのある、あるいはベルボトムのパンツなどが展開される。オーバーサイズのニットワンピースやビッグな袖、ぴったりとフィットしたニットにバギーなパンツを合わせるなど、サイズ感をコントラストにして表現。色彩パレットはソリッドなブラックを中心としながら、レオパード柄、鮮やかなレッドやイエローを差しこんで、ヴィヴラントな効果をみせた。
フォーム(FFORME)
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Courtesy of FFORME/Photo by Giovanni Giannoni for FFORME
2021年にNYで設立された「フォーム」は、フランシス・ハウイーがクリエイティブディレクターとなって、初のコレクションを2月7日に開催した。
ファーストルックは、チョコレートブラウンのジャケットとパンツにマキシコートを重ねて、ニットまでモノクロームでまとめたクワイエットラグジュリアスなスタイルだ。
ぴったりとフィットするロングニットに、たくさんの布片をフリンジ加工して縫いつけたスカート、あるいはオーバーサイズのジャケットにフリンジのスカートを合わせて、ロング&リーンのシルエットを保ちながら、動きをみせる。フリンジは重要なモチーフとなっていて、サテンのロングドレスのサイド、深いVネックのドレスのネック、パンツのサイド、キャットコートの裾、大量のフリンジをフェイクファーのように見せたコート、あるいはアクセサリーとして繰りかえし表れる。
シワ加工したシルクのドレスや、シルクサテンのホワイトのドレスはドロップウエストで切り替えらえていて、モダンなセクシーさを提案した。
色彩パレットはチョコレート、ブラック、ホワイト、ブラウンを基調として静謐であり、そこに鮮やかなピンク、そしてレッドを差しこんでみせた。
セオリー(Theory)
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「セオリー」は、2025秋冬コレクションを、実際に製作されている工場での見学をまじえながら、公開した。
今季はシグネチャーであるテーラードアイテムを一新して、スーツはラペルをワイドにし、全体的にリラックスフィットにリフレッシュ。ウィメンズは、テーラードベストやボリュームのあるパンツ、より多様化したドレスなどのシルエットが特徴となる。
メンズでは、前シーズンのハイテク素材「インモーション」カプセルコレクションが拡充され、モーションウールや新しいモーションナイロンが追加。
100%カシミアのニット、レザーやシャーリングのアウター、柔らかいアスターウールのセーター、そしてメランジが特徴のウールを使用した新しいリーガルコートなどが登場した。
アシュリン(ASHLYN)
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アシュリン・パークが手がける「アシュリン」は、2月7日にギャラリーにおいて、ランウェイ形式で2025秋冬コレクションを発表した。
今シーズンは柿をインスピレーション源にしたといい、その柔らかな曲線と丸みを帯びたフォルムを反映するような、ジャケットやトップス、そしてコート類が登場。またボッタリと呼ばれる韓国の包み布からも着想を得ていて、包むモチーフが見受けられた。
「アシュリン」のシグネチャーである、布をゼロ・ウエイストで利用して製作するキャミソールの飾りも継続。フォルムが重要な要素となっていて、流れるようなシルエットと、構造的なジャケットやコートの作りが、相反する要素を合わせて提案した。
「儚さと強さが融合し、根底には回復力と変容の感覚が感じさせたい」と、アシュリンはデザインノートのなかで語っている。
アディアム(ADEAM)
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前田華子が手がけるアディアムは、2月10日、展示会形式で2025秋冬コレクションを発表した。今季はビジネスにおける女性のパワースーツを再構築してみたという。
その言葉通り、タキシードドレスやダブルラペルのジャケットスーツなど、女性のラインを活かすテイラードのピースが美しく、そこに幅広のベルトやレザーゲートルをスタイリングして見せた。
さらにパワースーツを展開させて、オフショルダーになるジャケットワンピースは、華やかなチュールのフリルを添えて、今季のキイルックとなっている。イヴニングに相応しいマキシスカートもドラマチックなフリルが特徴で、ジャケットとの組み合わせが可能だ。ピーコートには、ドローストリングのディテールやネオプレン製のフードを取り入れてモダンなひねりを加え、伝統とスポーツを融合させた。
また同時に、ユニセックスのICHIコレクションも披露し、東京のストリートスタイルにヴィンテージのアメリカンスタイルや90年代のプレップスタイルを融合させ、さらにオフィスウェアの可能性を追求した。リバーシブル仕様のジャケットや、裾のタブで長さを調節できるテーラードパンツ、実用的な収納スペースを備えた防水トレンチなど、デザインと機能を融合させた。
メルク(Melke)
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エマ・ゲージが手がける「メルク」は、2025秋冬コレクションを、まるでサパークラブのような設定の展示会で披露した。
ミネソタ州で育ったゲージは、アメリカ中西部のホスピタリティとニューヨークの活気を組み合わせたという。今季は中西部のサパークラブからインスピレーションを得たといい、深みのあるアースカラー、チェック柄、そしてプリントが目につく。フリンジを飾ったパンツのセットアップや、格子縞のパンツスーツ、サックドレスに縦縞のパンツを合わせるなど、どこかレトロな雰囲気と、遊び心が溢れる。
また今季はサラダドレッシングの「ヒドゥン・ヴァレー・ランチ」とコラボをして、食べ物にまつわるアイテム、たとえばフォーク型のブローチや目玉焼きのモチーフなどが、ユーモラスな感覚を添えた。
ディオティマ(Diotima)
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レイチェル・スコットが手がける「ディオティマ」は、展示会形式で、2025秋冬コレクションを発表した。スコットは、2024年10月にCFDAの年間最優秀女性服デザイナー賞を受賞している。
タイトルは“Matriarch”、すなわち女家長の意味だ。コレクション製作に先だって、スコットは自分のコミュニティの女性たちに、黒人女性の祖母や叔母、あるいは家長などの写真を送ってもらったという。
一家の中心にいる黒人女性たちの姿をインスピレーション源として、会場には、彼女たちが生きてきた「家」を感じさせるテーブルや鏡が設置されていて、ヴィンテージ写真からスピリッツが浮かびあがったようにも見える。
「ディオティマ」のシグネチャーであるマクラメ編みや、大きく胸もとを深くあけた官能的なドレスの他に、今季はテイラードのスーツやアウターなどが登場して、世界の広がりを見せた。
ワインレッドのスーツにクリスタルメッシュのケープを合わせたルック、バターイエローのクロシェ編みドレスと黒のパンツの上に、バターイエローのループヤーンの襟をあしらったボマージャケットを合わせたルックなどが目を引く。
色調は控えめで、ブラックとナイトシェードを基調にしながら、パール、バター、マリンなどのニュアンスを加えてみせた。シーズンを重ねるごとに、「ディオティマ」の語彙が広がり、発展させていくのが感じられた。
ナオコ トサ(Naoko Tosa)
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京都大学防災研究所に所属してアートイノベーション研究を推進している土佐尚子は、2月9日にグローバルファッションコレクティブに参加してランウェイを打った。
土佐はエプソンとのデジタル捺染の共同研究成果として、過去に3回、NYファッションウィークに参加。今季は4回目となるランウェイに参加して、防災とファッションにつなげたコレクションを発表した。
耐火性生地を使用したり、京都の濵田工芸とコラボをしてLEDライトが埋め込まれたジャケットやLEDテープライトを使った服を作ることで「瓦礫の下に埋まっても、助かる確率が高くなったり、夜道の防犯になったりする」という防災ファッションを提案。
ラストルックは、特殊なレンチキュラーレンズを用いた甲冑ドレス。100枚のレンチキュラーレンズを、鎧のようにつなげあわせ、兜のような被りものを合わせたスタイルで、モデルのキャットウォークに合わせて光の屈折によってレンズが動く、世界初のルックとなった。
取材・文:黒部エリ
画像:各ブランド提供(開催順に掲載)
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