PICK UP
2024.02.20
【2024秋冬ニューヨークハイライト2】自身のルーツやDNAをコレクションで表現する気鋭のデザイナーたち
写真左から「エリア」「ルドヴィック デ サン サーナン」「アシュリン」「ディオティマ」
ニューヨークでは2024年2月9日から14日まで、ファッションウィークが開催されたが、多くの気鋭ブランドの展示会や、あるいはアートエクジビションといった形式の異なる発表会が行われた。今季多くのブランドが掲げていたのが、おのれのルーツであり、DNAだったが、より自分だけのストーリーを持つブランドが大事になってきているともいえそうだ。
第2弾では、ブランドごとの主張や哲学が反映された、気鋭のコレクションをピックアップしよう。
ニューヨークメンズデイ(NYMD)
写真左から「シヴァン」「ランドロス ニューヨーク」
Courtesy of SIVA。LANDLORD NEW YORK
ニューヨークファッションウィークのスタートを切るニューヨークメンズデイは、2月9日の朝一番に合同展示会を開始。規模はやや縮小して、午前の部は、「シヴァン(SIVAN)」、「ランドロードニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」、「テリー シン(TERRY SINGH)」、「Y.クロマ(Y.CHROMA)」がメンズの展示会を行った。
写真左から「ザ ソールティング」「ブラン」
Courtesy of The Salting、BULAN
午後の部は、「ザ ソールティング(The Salting)」、「ブラン(BULAN)」、「タープリー(TARPLEY)」、「パ・ズュヌ・マルク(Pas Une Marque)」がユニセックスなコレクションを発表。そのなかから取りあげると、ビーム・ラチャポル・ンガオンガムが手がける「ブラン」は前年に引き続き、造形的なニットアイテムを提案。立体的で、複雑な構造を持つニットの可能性を示した。またマイケル・ウォード、マネル・ガルシア・エスペホが手がけるユニセックスブランド、「ザ ソールティング」はマリーンのモチーフを踏襲しながら、ドローストリングパンツやブランケット地のコートなどを提案した。
コリーナ ストラーダ(Collina Strada)
ヒラリー・テイモアが手がける「コリーナ ストラーダ」は、“ストロンガー”と題して、2024秋冬コレクションをランウェイで披露。会場はロックフェラーセンターにあらたにオープンしたイマ—シブ空間の「ヒーロー」だ。
“ストロンガー”というテーマ通り、スポーティブなルックで幕をあけた。「内なる女性パワーが、外側に刻んだような形をなす」とあるように、注目のルックは、まるで腕の筋肉が盛りあがるようにパッドがなされた「マッスル」(筋肉)ドレスやシャツのシリーズだ。デッドストックのプリーツ加工されたシフォンでできた「マッスル」シャツは、柔らかくフェミニンな素材でありながら、パッドを入れ、ところどころで絞ることで、あたかも筋肉りゅうりゅうの腕にも見えるという、ふしぎな効果を生み出している。
また得意とするデジタルプリントが多く使われ、色彩パレットはグリーンからイエロー、ブルー、ピンクとさまざまに展開された。
多様性を謳うブランドだけあって、以前から車椅子のモデルやシニアモデルを配役していたが、今季は妊娠中のモデル、赤ん坊を抱いたモデル、歩行困難のモデルも登場して、ブランドの明確なメッセージを伝えていた。
3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)
「3.1 フィリップ リム」は、“インターセクション”と題して、アートエキジビション形式で、2024秋冬コレクションを発表した。
会場内には、コレクションを使ったアートインスタレーションを配置。設計デザインは、ニューヨーク市のプールを手がけたことで有名な建築事務所「フード・アーキテクツ」が手掛けた。写真はニューヨークを拠点に活躍するフォトグラファー小浪次郎、音楽はシュガー・ヴェンディル(Sugar Vendil)とサックス奏者アーカシュ・ミッタル(Aakash Mittal)が担当。コラボレーターたちは、気鋭のアジアンアメリカンパシフィックアイランダー(AAPI)。アジア系に加えて、太平洋諸島民を指すアーティストたちだ。
2024秋冬コレクションのディスプレイをフィーチャーした4つのセクションは、ニューヨークでの生活の要素を捉えて、「LIVE」「LOVE」「WORK」「PLAY」の交差を表現した。
ブランドが設立してから20年を迎える「3.1 フィリップ リム」は、あらためて「ブランドの根底にあるのは、やはりニューヨークだ」というアイデンティティを掲げ、同ブランドらしいフォルム、そしてタフさとソフトさを交叉させ、機能的でリアルでありながら、都会的なラインを打ち出した。
サウンド・オブ・イケバナ(Sound of Ikebana)
Courtesy of Sound of Ikebana
京都大学防災研究所で、アート&テクノロジーに従事する土佐尚子特定教授が2月10日、グローバルファッションコレクティブのランウェイで、「サウンド・オブ・イケバナ」の最新作を披露した。
今季のテーマは“生命礼賛”。赤ちゃんの泣き声や心音の振動によって液体が変化するのを、2000コマ/秒の高速度カメラで捉え、エプソンのデジタル捺印技術によってプリントに生かしている。鮮やかな色彩のプリントは、あたかも花々のようだ。
今季は、卵の膜から繊維を作った京都ファーマフーズとコラボしたアイテムも登場した
ウラ ジョンソン(Ulla Johnson)
「ウラ ジョンソン」は、2月11日にブルックリンで、2024秋冬コレクションを発表した。
オープニングルックはパープルのニットセットアップで、サイドにフリルをつけたスタイルが、フェミニンだ。続くルックもピーチ、マスタード、ベージュ、アンバーといった暖色のカラーパレットで展開される。シグネチャーでもあるプリントは、プリント×プリントでも駆使され、上下で違うペイズリー柄を合わせてみせる。得意とするフェミニンなスタイルで、メタリックな素材をフリルで飾りながら、華やいだドレスやクロッシェ編みされたアンゴラニットのドレスなどを提案した。
また今季はスポーツブランドである「ケーウェイ(K-WAY)」とのコラボもあって、ブラーな花柄がプリントされたオールインワンやポンチョなどのスポーツアイテムも登場した。
コレクションはすべてウィメンズであるものの、ランウェイモデルには数名メンズも入っていて、まったく違和感なく着こなしていて、ユニセックスな世界の広がりを感じさせる。
エリア(AREA)
「エリア」は2月11日、西チェルシーにあるスターレット・リーハイビルディングで、2024春夏コレクションのランウェイを披露。
毎回奇抜なアイデアで驚かせてくれるエリアだが、今季のモチーフは、なんと目玉。目は「視聴者」のシンボルでもあるといい、そして観客との間に、「見る」「見られる」の関係を築くという。
オープニングルックは、1920年代のマンガの目玉にインスパイアされたというデザインがブラの部分に当たるミニドレスやブラレットが登場。そして目玉のモチーフは立体的な飾りになったり、花となったり、あるいはダルメシアンの斑点、そして大ぶりのクリスタルにも展開されていく。カラー展開はブラックとホワイトを基調として、そこにバブルガムピンクも混ぜた。
ラスト近くに登場したのは、あたかも妊娠しているかのように腹部が張りだした造形のドレスで、そこにクリスタルを差しこんでみせる手法で、インパクトが強い。ドラマチックで、かつ目立つスタイルは、ミュージシャンなどのセレブたちが勝負をかけるシーンで着用されそうだ。
今季のランウェイはアマゾン(Amazon)のラグジュアリーストアがスポンサーになっているというのもポイントで、この春夏コレクションはアマゾンのラグジュアリーストアにおいてシーナウ・バイナウ販売される。
ルドヴィック デ サン サーナン(Ludovic de saint sernin)
Courtesy of Ludovic de saint sernin
いつもはパリコレクションに参加する「ルドヴィック デ サン サーナン」は、ニューヨークファッションウィークに初参加して、西チェルシーでランウェイを披露した。ロバート・メイプルソープ財団とのコラボレーションによるものだという。今季のコレクションを作るにあたって、故メープルソープの写真にインスピレーション源を求めたという。
オープニングから透け感のある素材のトップス、あるいはスカートと、見せるヌードなスタイルを打ち出し、レザーのボディコンシャスなミニドレス、レザーのコート、そしてボンデージのモチーフなど、センシャルなイメージを展開。
セクシーさと危うさを持ったコレクションは、ニューヨークファッションウィークのなかで、独特の個性を放っていた。
ディオティマ(Diotima)
レイチェル・スコットがクリエイティブディレクターを務める「ディオティマ」は、2024秋冬コレクションの39ルックをプレゼンテーションで発表した。
ジャマイカとニューヨーク、そしてヨーロッパをつなぐブランドとして、ジャマイカで工芸されるクロッシェ編みをブランドの核に置いている。今季もクロッシェ編みやホール、フリンジを駆使したルックが多い。
英国製のウールを使ったコートや、脇にホールをあけてレースをパネルしたルックも揃えた。
アシュリン(ASHLYN)
アシュリン・パークが手がける「アシュリン」は、2月12日に展示会形式で2024秋冬コレクションを発表した。
今季は“デュアリティ(二元性)”と題して、初のメンズウェアもローンチした。かつて「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」で働き、メンズウェアのパターンをデザインして製作することを愛していたという自身のルーツを掘り下げ、今季はメンズから発想されるスタイルを展開したという。
実際に並んでいるルックは、サテンバッククレープのドレス以外は、どれがメンズで、どれがウィメンズなのか、一見してわからないほど、ユニゾンしていて、二重性を持っている。インサイドアウトのジャケットや、デコンストラクテッドしたベストやジャケットなど、デザインの冒険が見られた。
そしてカシミアのメンズコートは、仕上げは手縫いを用いていて、そのためリバーシブルコートとしてまったく縫い目が見えない完璧な作りとなっている。
デザインの冒険とパターニングの妙と、細やかな職人芸が合体したコレクションとなった。
オーバーコート(OVERCOAT)
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Photo by Ion Bartlett
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Photo by Ion Bartlett
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Photo by Ion Bartlett
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Photo by Ion Bartlett
大丸隆平が率いる大丸製作所2が手がける「オーバーコート」は、2024秋冬コレクションを展示会形式で発表した。
今季、アートピースとして製作されたルックは、チューブというモチーフを掲げ、丸い布、あるいは四角い布にチューブを通して、それを絞ることで造形の妙を生み出す。チューブの形状じたいも面白く、さらに表現の幅が広がったことを感じさせた。
秋冬コレクションでは、「オーバーコート」が得意とするコートがやはり主力アイテムだが、袖部分の切り替えに工夫をこらしたことで、肩の可動域が大きく、それでいて格子縞を途切れなくつなげる技術がすばらしい。
またチューブのアイデアを生かしたウィメンズのドレスなど、これまで以上にウィメンズのアイテムが広がったのも見逃せない。
取材・文:黒部エリ
画像:各ブランド提供(開催順に掲載)
>>>2024秋冬ニューヨークコレクション