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2023.09.19
【2024春夏NY ハイライト2】現地で注目を集める新進気鋭のデザイナーたち
写真左から「アシュリン」「ディオティマ」「ドュア ドゥ」「エリア」
ニューヨークでは、2023年9月7日から13日まで、ニューヨーク・ファッションウィーク(NYFW)が開催された。さまざまな新興ブランドや、初のNYFW参加ブランドも多く参加し、またアメリカでは知られているものの、日本市場には出まわっていない注目ブランドもある。そのなかからハイライトの第二弾として、ブランドをピックアップしよう。
New York Men’s Day(NYMD)
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ケント・アンソニー Photo by Eri Kurobe
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A.ポッツ Photo by Eri Kurobe
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クララ・ソン Photo by Eri Kurobe
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クララ・ソン Photo by Eri Kurobe
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テリー・シン Photo by Eri Kurobe
ニューヨークメンズデイは、ハドソンヤードに近いデイライトスタジオで、合同コレクション展覧会を行った。
参加ブランドは、「A.ポッツ(A.Potts)」、「ケント・アンソニー(Kent Anthony)」、「クララ・ソン(Clara Son)」、「テリー・シン(Terry Singh)」、「ビーエムシー(BMC)」、「ラリー・ワークショップ(Raleigh Workshop)」、「セバスチャン・アミ(Sebastien Ami)」、「スカイコー(Skyco)」、「ザ・ソルティング(The Salting)」、「タープリー(Tarpley)」の10ブランド。
ストリート色が強かったり、ジェンダーレスが強かったりしたシーズンに比べて、今季はきれいなラインでのソフトテイラーリングが目についた。
NYMDの常連であるアーロン・ポッツが手がける「A.ポッツ」は、レディスとメンズのコレクションを披露。ニューヨークのストリートにインスピレーションを求め、色彩はネイビーとブラックを主流にしながら、オレンジとゴールドフォイルの強烈なカラーが混ぜられる。「カジュアル・シック・スーツ」と表現した、ソフトなテーラード・セパレートのスタイルをいくつか示した。
ブランドン・マーフィーが手がける、「ビーエムシー」の春コレクションは、トラディショナルテーラードウェアを提案した。今シーズンは、シルクやその他の「エレガントなテキスタイル」を、ロングコートからハイウエストのパンツ、それに合わせたジャケットまで、あらゆるアイテムに使用した。
また「ケント・アンソニー」は陸上競技からインスピレーションを得て、ソフトに仕立てたスタイルを提案した。クラシックなシルエットを使い、ジャケットは短く、ワイドな肩幅のシルエットを見せた。
エリア(AREA)
「エリア」はブルックリンにある元銀行の建物で、バイナウシーナウに当たる2023秋冬コレクションをランウェイ形式で発表した。デザイナーノートによると、今季のテーマは“原始的な本能と、そのファッションの歴史を通した進化”だという。骨や毛皮は原始時代にはサバイバルのために使われたが、その後、富のシンボルとなり、現在では過剰となっている。そのような概念をうち破って、そうしたシンボルを再定義するという意図だ。
ファーストルックはブルーのファーコートと、ハイレッグのアンダーウェアにサイハイブーツで、ワイルドだが、実際には毛皮でなくて、パファーコートだ。続くルックもフェイクファーの生地を使ったドレスなど、一見ワイルドに見えながら、ビーガンだ。
骨の形をした飾りには、ビジューが施されて、ラメのドレスと共に煌めきを添える。いわば優雅な野蛮人といったところだろうか。ジャケットとミニスカートのセットアップや、パンツスーツも披露したが、ジャケットは極端なワイドショルダーのシルエットになっている。ニューヨークのダウンタウンを拠点にした「エリア」らしく、クラビングやナイトライフのテイストが強いコレクションだった。
さっそく骨の飾りがついたドレスは数日後のMTVの授賞式で着用されていたが、まさにこうしたエンタメのシーンで好まれるスタイルだといえるだろう。
ディオティマ(Diotima)
「ディオティマ」はチェルシーのギャラリー街でレディスとメンズのコレクションを発表した。
「ディオティマ」は、2021年にジャマイカと、ニューヨークをつなぐ工芸とデザインのブランドとして設立。デザイナーのレイチェル・スコットはジャマイカ出身。CFDA/VOGUEのファッション基金ファイナリストであり、彼女によるクロッシェのドレスは、ドージャ・キャットらのセレブも着こなしている。すべてのクロッシェはジャマイカの工芸コミュニティで生産されている。
またイギリス産の伝統的なツイード、イタリアの繊維工場で作られたトロピカルウールなどを使用。細やかな手作業のクロッシェ編みを駆使しながら、どこか官能さやを感じさせるルックを披露した。
ドュア ドゥ(Dur Doux)
シンシアとナジラ・バート母娘によって設立されたブランド、「ドュア ドゥ」。今季サスティナブルなデザイナーを年一回取りあげてプロモートし、エコ・コンシャスなファッションを促進する「ザ・グリーン・ショー」に後援されて、2024春夏コレクションを発表した。場所はハドソンウィークにオープンしたレストラン、ボンドストリートで、ショーに先立ちサスティナブルについてのパネルディスカッションが開催された。
今季のコレクションは“Sous-Marine(海中)”と題して、海の美しさと脆さを表現。フロリダ出身の母娘らしく、ビーチライフに近しい34ルックを披露。色彩パレットはコーラル、オンブレのグリーン、フューシャ、ベージュ、シーブルーと、海をイメージした色が並び、プリントも貝殻やスターフィッシュが描かれている。
スイムウェアとビーチカバー、カフタン、プランジのロングドレス、フリルつきのバンドゥ、ブラレット、フィッシュネットのオーバーレイといったようにビーチリゾートを彩るルックが披露された。
アリス アンド オリビア(alice + olivia)
「アリス アンド オリビア」は、9月9日にウォール街で、2024春夏コレクションの展示会を行った。今季のテーマを“ブラック・アンド・ホワイトボール”と銘打って、かつて1966年に作家のトルーマン・カポーティがプラザホテルで開催した同名の舞踏会をインスピレーション源に。カポーティの「スワンたち」であるソーシャライトのエレガントさをコレクションで表現した。
白い羽をスカートにあしらったドレスや、大きく胸もとをプランジした赤いシルクのロングドレス、ビスチェとロングスカートといったように、グラマラスなナイトアウトのドレスが揃う。色彩パレットは、ホワイト、ブラック、レッド、そしてレモンイエローと力強い。メインはドレッシーな装いだが、タイダイのデニムなど、ジーンズも提案された。
大きく花のプリントをしたパンツスーツやドレスがインパクトあるルックになっていたが、同ブランドにしては、プリントや柄物が少ないシーズンとなった。
831 ミン レ(831 Minh Le)
ミン・レが手がける「831 ミン レ」は、9月10日に、2024春夏コレクションをロキシーホテルのラウンジで発表した。ミン・レはベトナム出身、米国に移住してブランドを立ちあげ、サウスキャロライナ州を本拠地としている。
コレクションの中心は、イブニングやカクテルの服で、70年代のエッセンスがある。色彩パレットは鮮やかで、ホットピンク、コバルトブルー、フューシャ、シャルトルーズなど、大胆な色が展開された。
ホットピンクのビスチェにスパンコールの刺繍をほどこした黒のロングスカート、ホットピンクのワイドパンツスーツ、また立体的なバラの花がそのままスリーブになっているトップスなど、ドラマチックなスタイルを見せた。
アシュリン(ASHLYN)
アシュリン・パークは、今季「パズルのようにパネルをつなぎ合わせる」という新たな挑戦をしたという。ニューヨークのデザイナーにしてはめずらしく、パターンメイキングもこなすアシュリンは、廃棄物ゼロのパターンを生み出すという挑戦を続けている。
オープニング・ルックでは、韓国の伝統的な衣服である丹衣(タンギ)からインスピレーションを得たフォルム、構造、ディテールの革新性を強調。パズルのアイデアに基づいて、長方形の布をスプライシングしてVネックのトップスにしたり、チューリップのような袖をつけたりといったプロポーションとパターンで遊んでみせた。
ソフトなビスコース・ストレッチは、複雑なパネルのドレス、フィットしたトップス、さまざまな長さのフレアスカートに仕立てられた。裾には細かなフリルが添えられているが、これは布を曲線にカットしてフリルを作る代わりに、正方形にカットして重ね合わせ、フリルとしているものだ。
ブラックとホワイトを主調にしながら、今季はレッド、そしてソフトなピオニーのルックも登場した。
今季のコレクションは、アーティストのクレア・ワトソンに直接影響を受けたといい、彼女の作品は、ランウェイショーが行われたスペースで展示されていた。コンセプトが力強いシェイプと素材の組み合わせで表現されていて、非常にすばらしいコレクションとなっていた。
取材・文:黒部エリ
画像:各ブランド提供