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2023.08.25

【インタビュー】東京ファッションデザイナー協議会は会員数を増やすことができたのか?久保議長に聞く

写真:本年7月7日開催バイヤーズミーティング&デザイナーマッチングラウンジ Courtesy of CFD TOKYO

 

 

 一般社団法人東京ファッションデザイナー協議会(以下CFD TOKYO)の代表理事・議長にファッションジャーナリストで杉野服飾大学特任教授の久保雅裕氏が就任して1年が経過した。2023年8月1日には、2023年度定時総会、第1回理事会が開催され、2022年度末には正会員が約4倍の46人に増加したことを報告。様々な勉強会やバイヤーマッチングイベントなどを実施し、Youtubeの公式チャンネルも開設するなど、充実した組織運営がなされている。「かつて東京コレクションを行なっていた組織」というイメージが強かった「CFD TOKYO」だが明らかに変化している。「CFD TOKYO」久保議長にこれまでの成果と今後の展望について聞いた。

 

 「CFD TOKYO」は大きく変わったように思うが、なぜか

 

 確かに三宅一生さんが代表を務め、川久保玲さんや山本耀司さんが幹事を務めておられた初期と比べると様変わりしています。1985年当時は、バラバラだったショーの開催時期を1週間に纏めて、世界からバイヤー・ジャーナリストが来やすくする。その為のスケジュール調整を含めたオーガナイザーという立ち位置だったわけですから。その後2005年の官主導によるJFW(ジャパンファッシヨンウイーク)発足、官民主体の冠スポンサー付きファッションウィークという変化の中で、スケジュール調整をJFWに移管することにより、今までの役割が無くなった。「さて、どうするか?」というのが、この15年近くのCFDが抱えた矛盾や困難だったんだろうと思います。

 なので、私が考えたのは、本来のファッションデザイナーの団体という「基本的な性格に立ち返ったらどうか」という事だったのです。中世ギルドのように職能別組合の歴史的意義とまでは言いませんが、ファッションデザイナーがまとまって悩みや課題を語り合い、それらを解決するために様々な人々と一緒になって活動する。そういうシンプルな組織で良いのではなかろうかと思い至ったんです。そうなると、やるべきことも見えてくる。だから「シンプルにそれをやれば良いじゃん」と開き直った感じです。
 

この1年で最も大きな成果は何か

 

 正会員・賛助会員ともにV字回復したことです。やはり「数は力」です。有名無名を問わず、たくさんのデザイナーやそれを支えようという個人、企業、団体が会の趣旨に賛同し、あるいは、頼って集まってきてくれたことが、一番の成果だと思います。私自身は、まだ8割方がメディアの仕事なので、若いデザイナーの展示会回りの際に、今まで通り、コレクションの話も聞き、それ以外にも悩みや課題を聞く訳ですが、それがそのままヒントになります。今までは、報道のための取材だったのが、デザイナー団体のヒアリングみたいな観点も加わって、結果として「聞く力」が増した気がします。誰かよりは・・・(笑)。

 
その成果はどのようにして生まれたものか

 

 これも簡単明瞭です。シンプルにファッションデザイナーの抱えている課題を分析し、明らかにして、それらを解決するための施策をどう打つかを考えてみただけです。ファッションデザイナーは、川中の企画職です。つまり川上と川下を結ぶクリエーションの要なので、この垂直連携のハブとなれます。またクリエーションを軸に考えると、それを欲している他の業界・異業種や若手を育てる学校・教育機関の間にも位置し、水平連携のハブにもなれる。そのポジショニングを生かして、業界の健全な発展やクリエイション豊かな世の中を作っていく牽引役になれるんだということを明確にしました。

 そして、その目標をどう具現化するかということをテーマ別に決めて、学びが必要なら勉強会を開き、営業的な出会いが必要ならマッチングイベントなども開催した。テーマに沿って、前期末に部会を設置して、今期から活動を開始しています。「物作り」「人材育成」「PR販促」「営業」「EC」「ポップアップストア」「パリ出展」「中国出展」「東南アジア」「AI」「ウェルネス」の11のテーマ別部会がそれぞれに活動をスタートしました。

 「勉強し、学んだことをみんなで実践する」の繰り返しで、特に若い会員とベテラン会員の間に固い絆も生まれ始めていると感じています。老若の世代間交流も微笑ましいものがありますよ。(笑)

 

  • 本年2月3日に開催した大手小売りバイヤー・ディレクターとのマッチングイベント

  • 本年5月30日に開催した勉強会「アパレル現場の最前線で直面した課題と先駆的な解決法に迫る!」

  • 本年6月13日開催した勉強会「卸売デジタルプラットフォームで在庫を販売」

写真:「CFD TOKYO」ホームページより

オフスケジュールのファッションウィークや海外の展示会をやりたいと言っていたが

 

 やはりメンズブランドや世界販売のスケジュールで進めているウィメンズブランドは、楽天ファッションウィーク東京より早いタイミングでのショー開催が多く、大体2~3週間くらいの間で開催していますよね。CFDとして無理に纏めようとは思わないのですが、これらのブランドが例えば、3日間の中で夜に2本のショーを続けて行い、その週後半に展示会を開催する。あるいはショーを前週後半にやったら、翌週前半に展示会とか、スケジュール調整をできれば、バイヤー・ジャーナリストにとっては、一つの塊として報道もしやすく、ショー・展示会回りもしやすいという利点は確実にあると思っています。そういう動きをサポートできるのもファッションデザイナーの団体という社会的公器だからこそと考えます。

 楽天ファッションウィークの時期には、やはりJFWと協力しながら、より活発なファッションウィークを作るための一助になればと思っており、来週8月31日には、CFDのAI部会の活動の一環として、JFWO(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)と共催で「ジェネレーティブAIとファッションの未来」と題したイベントを表参道ヒルズのスペースオーで開催する予定です。

 海外での展示会は、やはり部会を軸にパリと中国で具体化の動きを始めています。いずれも来年3月の開催を目指しています。

 
他に今後やりたいことは

 ファッションデザイナーという職業に憧憬を感じてもらえるようなイベント、チャリティーイベントなど一般の方々も巻き込んだ堅苦しくない楽しめる企画もやりたいですね。東アフリカで衛星中継されるファッションショーなんて荒唐無稽なものも企画中です(笑)。

 
久保議長のゴールイメージは

 

 ゴールは、まだ見えていませんが、早いうちに3ケタの正会員数にして、日本政府に「ファッション業界を支援しろ」と圧力をかける事ですかね(笑)
 
 

 持ち前のフットワークと傾聴力により会員を増やした久保議長。同団体のゴールイメージをうかがった時に、「あっ、あと川久保さんと耀司さんに、名誉会員で戻ってきてほしいな」と笑いを交えて話した。その人柄と企画力でより多くの才能を巻き込んでより大きく存在感のある団体になることを期待したい。 

取材:山中健

東京ファッションデザイナー協議会(CFD TOKYO)代表理事・議長 

久保雅裕氏

 ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。「senken h」を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

 大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア「Journal Cubocci」を運営。2017年からSMART USENにて「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」ラジオパーソナリティー、2018年から「毎日ファッション大賞」推薦委員、2019年からUSEN「encoremode」コントリビューティングエディターに就任。2022年7月、CFD TOKYO代表理事・議長に就任。この他、apparel-web.comや共同通信、Fashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。

 コンサルティングや講演活動の他、別会社でパリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアの開催、合同展「SOLEIL TOKYO」も主催するなどしてきた。日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。

「CFD TOKYO」に入会したデザイナーたちの声

 

「アキラナカ(AKIRANAKA)」 ナカ アキラ クリエイティブ・ディレクター

「CFD TOKYO」について入会前に持っていたイメージは?

 あまり活動されていないイメージ。あと新しいデザイナーが所属していないイメージがありました。自分はデビューした当時にCFDのサポートを沢山受けましたので、当時の印象が強く、最近は静かだなと感じていました。
 

 

「CFD TOKYO」に入会して感じることは?

 色んな情報を交換出来る場なのだなと感じています。思っていたよりも他業種というか様々な知識や技術、サービスを持っている人たちが集まっていました。個人的な考えにはなりますが、価値をシェアする意味や大切さを学んでいます。所属するメンバーの相乗効果を生み出す企画があればと感じます。

「サユリタネイ(SAYURI TANEI)」 種井小百合デザイナー

「CFD TOKYO」について入会前に持っていたイメージは?

 80年代に日本を牽引するデザイナーの方々が立ち上げられた協会なので、国内のデザイナー同士が交流・情報交換をする場というイメージを持っていました。

 
 「CFD TOKYO」に入会して感じることは?
 
 デザイナー間での交流の場だけではなく、バイヤーやPR・セールスエージェントの方、またはファッションAIやポップアップ運営に特化した方々など、ファッション内での多岐にわたる異業種の方々にお会いする機会をいただけることに驚きました。
 
 またお会いするだけでなく、それぞれのプロフェッショナルの方からの知見をいただける部会があることなど、それぞれのブランドビジネスのステージや方向性によって、得たい知識を勉強できる機会や選択肢があることにもとても感銘を受けました。
 
 そして久保さんが各々のデザイナーの相談を直接そして大変親身になって聞いていただいたり。優しいアドバイスやご指導までいただけることなど、私のようなブランド初期のデザイナーには特に多くのサポートをいただき、大変ありがたく感じております。

 

「ジュンオカモト(JUN OKAMOTO)」岡本順デザイナー

「CFD TOKYO」について入会前に持っていたイメージは?

 特にイメージはなく、他のファッションと名のつく団体の一つかなと言った感じですが、運営の方が元々ファッションの情報を発信する方が多いなというイメージ。

 

「CFD TOKYO」に入会して感じることは?

 デザイナーだけではなく、バイヤーや他の分野の方に関しても、現場の人との距離が近く、そこを繋げるような動きをしているところに希望を感じています。
 

「ディウカ(Divka)」 田中崇順デザイナー

「CFD TOKYO」について入会前に持っていたイメージは?
 
 今までは入会することでどんなメリットがあるのかはっきりと分からなかったのですが、「CFD TOKYOが今熱いよ、有意義な企画をしている」と友人のデザイナーに聞き、入会するに至りました。

 
「CFD TOKYO」に入会して感じることは?
 
 まだ入会して間も無いですが、先日バイヤーとのマッチングイベントに参加し、普段展示会でなかなかお会いできないバイヤーとお話しする機会を得ました。今後もこのようなイベントを開催する予定とのことで、その点を期待しております。
 

写真:「ディウカ(Divka)田中崇順氏(左)、松本志行氏

 

 

「ロキト(LOKITHO)」木村晶彦デザイナー

「CFD TOKYO」について入会前に持っていたイメージは?

 長い歴史があり、由緒正しい組織として認識しておりましたが、ショーを公式に発表するために所属する組織、というぐらいの感覚で展示会ベースのブランドにとってはあまり縁のないものだと考えておりました。
 
 
 
 
「CFD TOKYO」に入会して感じることは?
 
 以前から久保さんとは交流があり、弊社の展示会にも毎回のようにご来場頂き近況の報告などを交わす間柄でした。まだ入会して間もないのですが、バイヤーマッチングを始め、様々な有意義なイベントやセミナーなどが開催されており、ブランドにとって具体的で実利のある運営をされています。

 現場感覚のある方が長となることで、よりリアルで実のある組織になっていくことを期待しています。

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