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2022.02.08

NFTは投機だけじゃない!小売業界のポイント制度に改革
マーケティングへ新たな可能性もたらす24Karatの挑戦

 昨年から国内外で話題のNFT(非代替性トークン)。NFTとは、ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータ(画像、動画、音声データなど)の所有権をパブリックに向けて証明できる唯一の技術です。また、NFTはブロックチェーンの特徴を踏襲し、データの改ざん・偽造が不可能で、かつ鑑定書・所有証明書が内包されているため、最近ではアート作品のNFT化や、メタバース(仮想空間)内におけるトークン発行の領域でも利用されています。

 

 特に海外では、Twitter創業者ジャック・ドーシー氏の最初のツイートがNFT化され、約3億円で落札されました。メタバースのThe Sandbox(ザ・サンドボックス)では仮想の土地が約4億円で落札。ファッション領域では、adidasやDolce & GabbanaなどのブランドがデジタルファッションをNFTとして発表し、巨額の売上を上げていることで世界的に話題になっています。

 

 こういった投機的なニュースが連日メディアで報じられると、一般消費者は“NFT=投資”という印象を受けることが多いかもしれません。しかしながら、NFTの価値や役割とは、果たして単なる転売や投資なのでしょうか。今回は、NFTをマーケティング分野に活用するスタートアップ、24Karat株式会社に着目。同社は「24Karat ZAP」というデジタルウォレットのアプリケーション、そして「24Karat NFTマーケットプレイス」というNFTマーケットプレイスの開発、運営をしています。同社の創業者兼代表取締役 小川 真輝氏、セス・ルアン氏に、現在のようなNFTが取り巻く環境に対する見解や、同社が展開するサービスの魅力、そして今後の事業展望について、詳細をお聞きしました。

デジタルウォレット「24Karat ZAP」とNFTマーケットプレイス「24Karat NFTマーケットプレイス」の仕組み

ここ最近、NFT関連の報道が増え、アート作品や仮想の土地、仮想スニーカーなど高価な取引が行われていることが印象的です。他方で、ロンドン大学研究チームの研究レポート(注1)では、大部分のNFTには価値がないとする指摘もあります。お二人の視点から、NFTの本質やNFTを取り巻く環境に対する見解、そして御社のサービスの特徴も合わせて、お聞かせください。

 

(注1)   

ロンドン大学研究チームによる研究レポート

Non-fungible tokens: can we predict the price they’ll sell for? | The Alan Turing Institute

小川氏

 まずNFTについて、様々な角度から解釈できると思いますが、私が考えるには、デジタルで「誰が」、「いつ」、「何を作った」、「何を購入した」という、デジタル資産の所有権を証明できる新しい技術だと定義しています。当社が展開するNFT事業で掲げているビジョンは、Opensea(オープンシー)のように単に暗号資産を使って誰でもNFTを購入できるプラットフォームを提供することではありません。当社では、独自のプラットフォームやブロックチェーン技術を活用して、ブランドやクリエーターが発行するポイントを「ブランドトークン」という形で発行し、そのブランドトークンでしか購入・交換できない「ブランドNFT」を発行するという仕組みを設定しています。ブランドトークンとは、ポイントやコインを含む、ブランドが発行する独自の価値媒体のことを指します。ブランドNFTとは、ブランドによって作成されたデジタル上における唯一無二の収集品(デジタルコンテンツ)という風に理解してもらえばと思います。そして当社ではこれらの仕組みを用いて、ユーザー同士、ユーザーとブランド、あるいはブランド同士で、ブランドトークンの交換やブランドNFTの買収を行うことによって、独自のコミュニティひいては経済圏を創出することを目指しています。このビジョンを実現するために、ブランドトークンやNFTの管理、収納ができるデジタルウォレット「24Karat ZAP」と、NFTの作成や販売ができるマーケットプレイス「24Karat NFT Marketplace」の2つのサービスを展開しています。

 

 ここからは、実際に当社が取り組んでいる事例を挙げながら説明します。昨年、ブランドトークンを発行する最初の企業として、サッポロビール様と提携しました。その取り組みでは、「サッポロ SORACHI1984」というビールのブランドの認知度向上を目的としてブランドトークンを配布し、ブランドNFTを通じて、同社オリジナルのデジタルコンテンツや限定デジタル会員証などとの交換を可能にしました。そして、ファンにとって「サッポロ SORACHI1984」がより身近なブランドとなるようなコミュニティの構築を図りました。

多くのNFTが「24Karat NFT Marketplace」で販売されている

海外の大手NFTマーケットプレイスをみてもC2C向けのサービスが多く、ブランドにも着目したビジネスモデルというものはあまり例をみないと思いますが、どのような経緯で現在の事業モデルにたどり着いたのでしょうか?

セス氏

 もともと、日本のポイントシステムに疑問を持ったのがきっかけでした。というのも、現在各商業施設、ECモール、アパレルの直販ECにはそれぞれ独自のポイントシステムがありますが、私がさまざまな調査をしたところ、毎年、それらのポイントの使用期限の失効によって生じる機会損失の金額は、約8,000億円にも上ると言われています。これはブランドにとっても、ユーザーにとっても非常にもったいないことだと思います。このような状況が発生する理由としては、やはりポイントシステムを構築する際、異なる企業間におけるポイントの互換性や流通の設計が欠けているからではないかと考えます。

 

 実は、当社は当初からNFT事業を展開しようとしたわけではなく、前述したポイントシステムによる機会損失をいかに防ぐかということを考えていました。ユーザーにとって、もっとポイントを有効活用し、異なる企業やブランドを横断して利用できるようなポイントシステムが構築できないかと考えた時に、ブロックチェーン技術とNFTを応用する方法に辿りついたわけです。

 

 例えば、現状のポイントシステムですと、AブランドのポイントをBブランドのポイントに交換し、B社の商品を購入、交換することはできません。それを解決するために、当社ではブロックチェーン技術を活用して独自のプラットフォームを運営し、ポイントをブランドトークンの仕組みで統一しています。それにより、参画するブランド、ユーザーであれば、異なるブランド間であってもブランドトークンが自由に交換でき、特定のブランドのファンだとしても他ブランドのNFTが手に入れられるわけです。

ブランドトークンの交換、利用の仕組み

ユーザーにとっては、ブランドを横断してNFTを交換できるメリットがあると思いますが、ブランド側からすると、自社のブランドトークンの流通量を増やして独自のトークン経済圏を拡大させるシナリオの方が、有益性があると感じます。その場合、御社のサービスを利用するブランドのメリットは何なのでしょうか?

セス氏

 確かに、ファンの獲得という意味では、競合するブランド同士だと、自社のユーザーが競合ブランドとブランドトークンを交換してしまうことは懸念点となり得るかもしれません。そこに対しては、ブランドトークンの交換、売買に関して特定のブランドとのやり取りを禁止する設定機能がありますので、ブランドの判断に委ねています。一方で、ブランドが他社とコラボレーションしたい時、あるいは異業種の企業と提携して相乗効果を図りたいといった時には、ファンがブランドトークンを横断して利用できる点が、当社のプラットフォームにしかない独自の価値だと考えています。

 

 例えば、先ほども紹介した「サッポロ SORACHI1984」の事例で説明しますと、サッポロビールのファンと、アパレルブランドAのファンの中には、共通のファンもいると思います。しかし、そのファンにとって、これまでの購買体験においては、同じプラットフォームで、両ブランドのデジタルコンテンツを一緒に購入するということはなかったと思います。そこで、当社が提供するサービスを利用することによって、そのファンはいずれかのブランドトークンを獲得し、サッポロビールまたはアパレルブランドAのNFTに交換することが可能となります。このように、これまでの購買体験においては成し得なかった新しい方法でユーザーへアプローチでき、相性の良いブランド間では送客の相乗効果を期待することができます。ビール好き、ファッション好きなど、様々なライフスタイル、嗜好を持つユーザーが当社のプラットフォームを通じて繋がり、多種多様なコミュニティが形成されます。そして、ブランド側としてもそれらのコミュニティを通じて効率的な新規顧客の獲得を図っていくことができます。まさに、ユーザーとブランド双方にWin-Winの場面を創造できるのが、24kZAPの強みだと考えています。

QRコードを活用し、実店舗でも24Karatの「ブランドトークン」の活用が可能

現在海外では、有名ファッションブランドが相次いでNFTやメタバースに参入していますが、日本の一般的なアパレルブランドはどのようにこの先進技術を活用すべきでしょうか?

小川氏

 海外有名ブランドの場合、もともと圧倒的なネームバリューもあるので、巨額を売り上げ話題になっていると思いますが、やはり日本の一般的なブランドの場合、いきなり同様に成果を上げることは難しいと思います。現段階においては、NFTやメタバースを直接売上に繋げるというよりかは、ファンコミュニティの形成に活用できる新しい技術というように捉えていただければと思います。結局、ファンコミュニティの形成がブランドビジネスの基盤になっていると思いますので。

最後に今後の事業展望について、お聞かせください。

小川氏

 強化したい業界でいうと、アパレル業界を考えています。先述したように、特に現状のアパレルECのポイントシステムには課題点があると感じていますので、当社のサービスを活かして、小売業界やEC領域でのポイントシステムをより自由度、流動性の高い仕組みに改善していきたいと考えています。大手企業だけでなく、むしろD2Cブランドのような、新しい商品、サービス、価値を世の中に送り出すブランドは、既存のビジネス慣習やポイントシステムに比較的捉われないと思いますので、NFT、ブロックチェーン技術とも相性が良いと考えています。最終的には、アパレル業界に限らず、さまざまな業界で当社のプラットフォーム、ブランドトークン技術を活かしていきたいと思います。

 

 また、直近の動きとしては、2月28日に「Peak X」というオンラインセミナーを開催します。開催の目的としては、ブランドトークン、NFTといったトークンエコノミーに関する最新情報を発信し、「Peak X」をコミュニティとして、これらの技術をどのように活用していくか、意見や情報交換の場としていきたいと思っています。第1回の開催では、さまざまな業界からスピーカーを招待し、「Web3.0」がどのように未来のコミュニティ体験を形成していくのか、対談セッションなどで深掘りしていく予定です。

マーケティング観点から見た、NFTの価値を「再発見」

 取材を終えて、これまでマスメディアの報道などによりNFTに関する情報は比較的投資の側面が強い印象を受けていましたが、今回の24Karatの取材を通して、NFTやブランドトークンが、ポイントシステムの利用における活性化や、ファンコミュニティの形成に繋がる新しい技術だと、非常に可能性を感じました。同社のサービスが、今後、マーケティング領域、小売、消費者行動、購買体験にどのような革新をもたらすのか、引き続き注目していきます。

 

取材:AIR編集部

 

「24Karat」の公式サイト:

https://www.24Karat.io/

 

公式アプリ:

(iOS)https://apps.apple.com/jp/app/zap-24k/id1581632520

(アンドロイド)https://play.google.com/store/apps/details?id=io.zap_24k

 

無料オンラインセミナー「Peak X Online 第1回」の詳細はこちら:

https://www.24Karat.io/peak-x

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