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2021.10.08

【2022春夏パリ ハイライト2】フィジカルとデジタル それぞれの長所を生かし創意工夫するデザイナーたち

 今シーズンはフィジカルなショーが増え始めたが、それに伴い会場に入場する際にはその都度衛生パスを提示しなければならなくなった。それが「クレージュ(Courrèges)」やリック・オウエンス(Rick Owens)」、「クロエ(Chloé)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」のように会場に屋根も無い、全くの屋外であっても、である。

 

 衛生パスとは、ワクチン接種が完全に終了していることを示すワクチン接種証明書、72時間以内に取得したRT-PCR検査または抗原検査に基づく陰性証明書、そして過去11日前から6カ月前までの間にRT-PCR検査または抗原検査に基づき新型コロナウイルスに感染していたことを示すQRコードが付された証明書の3種を意味する。 

 

 1回目の接種から28日間経過していること、あるいは2回目の接種から7日間経過していることを条件に取得できるワクチン接種証明書が、パリコレクションのショーはもちろんのこと、レストランやカフェにも入ることができて一番オールマイティである。私の場合、ワクチンを接種していないため、薬局の前のテントで行われている簡易の抗原検査で何とか乗り越えた。一回につきおよそ30ユーロ(4,000円弱)。ただ、簡易の抗原検査と医療診察所で行われるPCR検査は異なり、簡易の抗原検査を受けた場合は48時間以内の陰性証明書の提示を求めるブランドもあったため、結局二日おきに薬局の前のテントで鼻に綿棒を突っ込まれることとなった。

 

 今回、はるばる日本からやってきたジャーナリストは数名いたが、それぞれフランス大使館に日本での接種を理由にワクチン証明書の発行を求めたり、私のように簡易の抗原検査をその都度受けて凌いだりしていたようだ。中には、過去にコロナウイルスに感染して治癒した人もいて、その場合でもQRコードが付された証明書が与えられる。しかし、一定期間を超えると抗体が無くなり、証明書自体が無効になるとかで、やはりワクチンを受けるしか選択の余地が無い。ファッションウィークを通して、去年とは全く違う世界がやってきたことを実感したのだった。

 バルマン(BALMAN)

 オリヴィエ・ルスタンがクリエイティブディレクターに着任して10年。その記念すべきコレクションは、セーヌ川に浮かぶセガン島に位置するラ・セーヌ・ミュージカル(坂茂等による設計)にて有観客で発表された。題して“第2回バルマンフェスティバル”。今季は2020年春夏メンズコレクション同様、一般客を6,000人程招待し、フードとドリンクの売り上げはHIVとコロナウィルス治療の基金に寄付された。ルスタンはその6,000人のサポーターたちを“バルマン・アーミー”と称し、友情の美しさ、音楽の力、そしてパリファッションウィークの興奮を分かち合った。

 

 

 ルスタン自身が事故に遭い、その時に病院で目にした包帯やガーゼなどのイメージが新しいクリエーションにインスピレーションを与えたという。ショー前半に発表された最新コレクションでは、包帯のバンドをほうふつとさせるループの要素が随所に見られた。

 

 暗転してビヨンセの語りが始まると、ナオミ・キャンベルがマクラメ編みのドレスで登場。この10年を振り返り、これまでの作品へのオマージュがスタートした。90年代に活躍したスーパーモデルのナデージュは鎖帷子のゴールドドレスを、ナタリア・ヴォディアノヴァはレザーコードのドレスを、ミラ・ジョヴォヴィッチはパール刺繡のジャケットドレスを着用。大取は前大統領夫人であるカルラ・ブルーニ。マトラセ(キルティング)ステッチとクロスステッチ刺繍のドレスをまとって登場し、拍手喝采のフィナーレとなった。

リック・オウエンス(Rick Owens)

 「リック・オウエンス」はパレ・ドゥ・トーキョーの噴水広場を会場に、フィジカルなショーを開催した。コレクションタイトルは“FOGACHINE”。噴水スペースに煙を発する機材フォグマシーン(3つのサイズで販売予定)を無数に置き、白煙が漂う中モデルがウォーキングした。今季は、オレンジやイエロー、ピンク、ブルーといった、これまでの「リック・オウエンス」のコレクションでは見られなかった色使いが印象的。

 

 ファーストルックはレザーとモスリンのコントラストを見せるドレス。リック・オウエンスの妻であるミッシェルがモデルを務めた。ガザールとスパングル刺繍のファブリックの異素材ミックスのドレスや、リザードレザーのトップスとスパングル刺繍のスカートを合わせたセットアップ、スイムウェアにモスリンのブルゾンなど、異なる素材のコントラストを強調。そこに、Fog(煙)を思わせる極薄のオーガンジーがアクセントとなる。

 

 スイムウェアとスパングル刺繍のスカートを合わせたセットアップには、チュールに羽を刺繍したトップスをコーディネート。同じくスイムウェアとモスリンのドレスには、倉敷市の山足織物(1945 年創業)によるヴィンテージ坂本式自動シャトル織機で織られた16オンスのデニム製コートが合わせられた。それぞれ、素材に硬軟の違いを際立たせている。

 

 ライニングを表に出した袖を取り付けたジャケットには、モスリンのドレスを合わせ、ニットリブのついたモスリンとコットンのブルゾンには、モスリンのスカートをコーディネート。透け感のあるニットのアンサンブルを交えながら、素材感の落差という遊びを加え、明るいカラーパレットのアイテムでコレクションをまとめていた。

 

クロエ(Chloé)

 ガブリエラ・ハーストによる「クロエ」は、ノートルダム寺院を背にしたセーヌ河岸を会場にフィジカルなショーを開催した。ハーストがクリエイティブディレクターに着任して2回目のコレクションで、初ランウェイショーとなる。

 

 ハーストの環境への意識の高さは、前シーズンよりも更に様々な形でコレクションに反映されている。今季は職人によって手作りされ、消費者と地元の生産者の間のより深いつながりを目指す「クロエクラフト」を創設。トートバッグ、ナマスニーカー、デニムなどの「クロエ」の定番アイテムが、リサイクルされた環境負荷の少ない素材で製品化された。それら全てには、スパイラルシンボルをエンボス加工している。新しい「クロエ」ロー・ラインのソールは、ビーチサンダルをアップサイクルする社会的企業であるオーシャン・ソールとのコラボレーション。

 

 環境負荷が少ない素材の割合も、全アイテムの半分以上となっている。特に羊毛はリサイクル素材、あるいは生育環境の整った農場で採取されたウールを使用。冒頭のヘムをフリンジにしたシルクツイードのスーツやドレスには、装飾としてデッドストックのジュエリーを解体したパーツがあしらわれた。

 

 カシミアのポンチョのストライプは植物ベースの染料によって手描きされ、マルチカラーのマクラメは、以前のコレクションの残布を細かくカットして編んで制作。マクラメ編みの作業については、マダガスカルを拠点とする世界フェアトレード組織(WFTO)のメンバーであるアカンジョとの協業。レザーのパッチワークドレスや、レザーのパーツをレース状に繋いだトップスが登場したが、これらのレザーもすべて植物染料を使用している。

 

 後半のドレス群には、クラフト感溢れるシェルのネックレスやアクセサリーが合わせられたが、それらは自然回帰を想起させ、人間と環境との繋がりをより一層意識させることとなった。

ラフ シモンズ(RAF SIMONS)

 「ラフ シモンズ」は、ピノー一族のコレクションを展示する美術館として生まれ変わった商業取引所の建物内で、フィジカルなショーを開催した。メンズも同時に発表されたが、男性モデルにもスカートを履かせたりドレスを着せたりし、ミニマルでマニッシュな女性モデルとの区別を曖昧にさせている。

 

 ロックTシャツを思わせるモチーフをプリントしたジャケットには、ゴシック体をプリントしたプリーツスカートを合わせ、デコルテにギャザーを寄せたシンプルなAラインドレスには、手の部分の骨を象ったバングルを合わせ、どことなくゴシックロックな印象。ドレスやジャケット、シャツの袖には、50年代のヴィンテージクローズ風のレトロなタグが縫い付けられている。

 

 コクーンシルエットのフローラルプリントのブルゾンには、やはり首周りにギャザーを寄せたAラインのワンピースを合わせ、大振りのニットプルにはホワイトシャツとプリーツスカートを合わせてエコリエール(女子生徒)風に。シャツもオーバーサイズで、袖口のカフスは特に大きく目立つ作りにしている。男女の別なく着用出来るよう、オーバーサイズのアイテムで構成されたコレクションとなっていた。

ロエベ(LOEWE)

 フランス共和国親衛隊庁宿舎内の乗馬練習場を会場にフィジカルなショーを開催したのは、ジョナサン・アンダーソンによる「ロエベ」。これまでのアンダーソンの作風からすると、今季は挑発的で実験的な側面が強調されている。ルネッサンス後期のマニエリスムの画家、ヤコポ・ダ・ポントルモの絵画からインスパイア。絵画の色調がカラーパレットに反映し、画面から受ける歪みやねじれなどはドレープや彫刻的なシルエットに落とし込まれた。

 

 インナーに突起物を仕込んだコートやドレスでスタート。予想外の場所に予想外の隆起が見られ、一種の緊張感と驚きを与える新しい装いを提案。ルネッサンスの宗教画の空を思わせるブルーが目を引くセットアップは、天使のような白いケープがアクセントに。トレンチドレスや黒のロングドレスには、歪んだ打ち出しのメタルプレートがあしらわれる。ドレーピングのトップスとフード、そしてプリーツを寄せたパンツは、ルネッサンス絵画に登場する女性の装いを想起。アシメトリーのパッチワークデニムのフラメンコドレスや、Gジャン風のケープは、凝った作りではあるが、シンプルなシルエットが美しい仕上がりを見せる。

 

 総スパンコール刺繍のフラメンコドレスや、パステルカラーのニットドレスなどに続き、胸部分をトランスペアレントな樹脂で覆ったドレスが登場。その違和感と親和性が不思議な心地良さを生む。それは卵やバラ、石鹸やマニキュア瓶をモチーフにしたヒールのサンダルにも表れている。ハラハラさせられるアイテムの多いコレクションだったが、アンダーソンの鋭い感性と絶妙なバランス感覚に最後まで押し切られる形となった。

イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)

 近藤悟史による「イッセイ ミヤケ」は、ヴォージュ広場のショールームにて、プレゼンテーションとムービーの上映を行った。コレクションタイトルは“A Voyage in Descent”。海に潜り、奥底まで降りて行く旅をテーマに、輝き、滲み、うねり、弾むものたちが生きる力強い生命の世界を表現。軽やかな素材を駆使し、曲線からなる流動的なフォルムに落とし込んでいる。

 

 京都の職人による手描きの「引き染め」を施し、水を含ませた生地に刷毛やエアスプレーなどで柄を描き、染料を滲ませたSILENCEシリーズは今シーズンの象徴。ゆったりしたシルエットのアンサンブルなどが登場した。流れる曲線のカッティングと、脇部分の開きが特徴のCARVEDのシリーズは、綿に和紙と生分解ラメ糸を織り込み、独特の光沢感と張りと深い色を表現。深海生物をイメージしたモチーフを、光沢感あるレーヨン生地にプリントしたSWIMMINGシリーズは、4色の絵具で「泣きプリント」という色が滲む技法を用いている。

 

 目を見張ったのが、ハンドプリーツのLINK RINGSのシリーズ。波紋のような丸い生地が連続する仕立てで、プリーツ目に沿ってコンパクトに折りたたむことが可能。生地を持ち上げると次々と波紋が現れ、ハッとさせられる。このシリーズに呼応としたバッグ類も登場していた。丸みを帯びたシルエットを生む螺旋状に編まれたニットのFLUIDITY LOOPシリーズは、2色の再生ポリエステル糸を同時に編み、動く度に内側の色が現れる仕掛け。SWIMMINGの無地シリーズであるSWIMMING HUEは、深海の鮮やかな世界を思わせるピンクやイエローなど、カラフルな色調で表現。生地の一部分に伸縮性のある糸を使って織り上げ、製品染めで収縮させて、一着の服の中にさざ波を表現したWAVELETシリーズは、アシメトリーの有機的なシルエットが特徴的。環境に配慮した再生ポリエステルを一部使用している。

 

 シンプルな素材をすっきりとしたフォルムに仕上げたアイテムと、このブランドらしい革新的な素材の特性を生かして遊びを加えたアイテムをバランスよく配し、美しく整えられた現代の装いを提示して見せていた。

ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)

 「ヨウジヤマモト」は、パリ市庁舎のホールでフィジカルなショーを開催した。プリント生地を交えつつも、黒で統一したコレクションは、一見シンプルなフォルムであっても、微細な装飾や凝ったカッティングが施され、実は複雑な構造を内包している。しかし、それが流麗なシルエットを描き、自ら情感を生み出す服となる、とこれまで以上に強く感じさせた。

 

 リーンなシルエットのドレスは、無作為にドレープを流したかのような率直さを見せる。縦のラインに縫い目を入れて立体的に仕上げたロングドレスも、ボディに布を載せて偶発性を重視しながら形作ったかのように感じさせたが、それが新たな美しさを見せている。

 

 襟の大きさや袖のあしらいに変化を加えたトレンチコートのシリーズは、シンプルながらも美しいシルエットを描き出し、アイテムによっては遊びを加え、それが目を引く要因となっている。シースルーのシャツとショーツのシリーズは、このブランドでは珍しい丈の短さ。

 

 荒々しさと繊細さ、その両極をたたえる冒頭とは打って変わり、ヘムにギャザーで膨らみを持たせたジャケットや、胸と肘に膨らみを持たせたジャケットはそれぞれシンメトリーで新鮮。チェーンを這わせたコルセット風ベルトを合わせたセットアップや、シルバーのペイントを施したドレスのシリーズ、コルセットの要素を加えたジャケットなど、見所は多かったが、最後のクリノリンを合わせたドレスのシリーズは圧巻。コレクションの締めくくりにふさわしい、圧倒的な迫力と美しさを見せた。

ヴァレンティノ(VALENTINO)

 ピエールパオロ・ピッチョーリによる「ヴァレンティノ」は、カロー・デュ・トンプルと建物の目の前にあるカフェとレストランを会場にフィジカルなショーを開催した。そしてショー当日から5日間、周辺のブティック4軒をジャックし、それぞれ期間限定の特別な商品展開を行った。

 

 「メゾンの豊かなヘリテージを現代に根付かせるため、多様で活気ある人間性に満ちたストリートへと繰り出す」ことを目指し、「ヴァレンティノ」のコードを再定義。コレクションの一部はアーカイブからの引用で、アニマルプリントのコートやマリサ・ベレンスンが着用したホワイトドレス、クリス・フォン・ヴァンゲンハイムが撮影した花柄のロングドレスなど、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ時代の代表的作品がモダンに解釈され、それぞれに「Valentino Archive」のタグが付けられている。

 

 レッドと並び、「ヴァレンティノ」のアイコンカラーでもあるホワイトのシリーズでスタート。ファーストルックは、そのマリサ・ベレンスンが着用したホワイトドレスの新解釈で、ルースフィットなシルエットに変換されている。立体的なアップリケ刺繍でフローラルモチーフを表現したり、立体感を出したレースをあしらったり。ホワイトシャツと刺繍入りのロングコートには、バギーなウォッシュデニムを合わせてカジュアルにアレンジ。

 

 モチーフのパーツをチュールにアップリケするテクニックを用いたコートやドレス、カットアウトしたイングリッシュレースのシャツなど、クチュールメゾンらしい表現が美しい。後半には先述のフローラルモチーフのロングドレスが登場。レトロなメイクと相まって1970年代を彷彿とさせた。

アンリアレイジ(ANREALAGE)

 森永邦彦による「アンリアレイジ」は、細田守監督作のアニメーション「竜とそばかすの姫」とのコラボレーションによるムービーを発表。「竜とそばかすの姫」に登場する「ベル」が着用するドレスを森永がデザインしたことから、今回のプロジェクトが実現した。ショー会場である仮想空間「U」で、ガラスのランウェイをアニメーションのモデルがウォーキングした後に切り替わり、現実世界の実際のモデルが登場して歩く、という内容。

 

 披露された最新コレクションの“DIMENSION”は、二次元の仮想世界と三次元の現実世界、その両者を越境する内容となっている。三角形の集積からなるドレスは、2021春夏コレクション“HOME”から発展させたもので、抗ウィルスのフルテクト素材で制作。面が集まると立体となり、三角形同士の間に浮かび上がる線は平面と立体の境界線であり、二次元と三次元の境界を表現。鮮やかな色と相まって、不思議な風合いを見せている。

 

 古着のデニムやデッドストックの生地も使用したアイテムの他、紫外線で色が変化するフォトクロミックビーズをあしらったアイテムも登場。

 

 今回初の試みとしてコレクションはNFT(非代替性トークン)として、ショー終了後の10月2日より「アンリアレイジ」のNFT特設サイトで販売され、その後NFTのマーケットプレスOpenSeaで一部のルックが販売されるという。また作品の来歴や信頼性を保証する、スタートバーンが構築するアートの世界で利用されるブロックチェーン「スタートレイル(STARTRAIL)」を採用し、事後の流通や利用の永続的な管理が行われる。

エルメス(HERMÈS

 「エルメス」はナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキーによる新コレクションを、パリ郊外北方のル・ブルジェ空港を舞台にフィジカルなショーで披露した。会場には、ヴァンヘ=シビュルスキーが注目していたアーティスト、フローラ・モスコヴィシによる絵画作品、約縦6m×横9mの作品を含む壮大な12連作が円形に並べられた。

 

 ショーの模様は世界同時配信となり、特に韓国の釜山、日本の神奈川(逗子)、ニューヨーク、ロンドン、アブダビの5カ所では、水平線や水辺を愉しむことのできる場所として巨大スクリーンを設置し、それぞれ独自のセノグラフィーにてライブビューイングが行われた。ショーを同じ規模で再現し、モスコヴィシの作品を表現するために、スケール感のある場所が選ばれたという。そして2年近くもの閉鎖的な生活を体験した我々にとって、この解放感が何よりも貴重で贅沢である、としている。

 

 コットンサテンのスタンドカラーのジャケットとパンツでスタート。丸みを帯びた鋲を打ったレザーのトリミングやレザーのアイレットがあしらわれたが、アイレットはバケツ型のバッグ、「マンジョワール」からインスパイアされたという。アルザン(馬の栗毛)色のラムレザーを配したオフホワイトのトレンチコートにも、ポケット部分に同じくアイレットの装飾が施されている。ブラトップとスカートのセットアップのように見えるドレスにも鋲の装飾が光り、スカート部分には「エルメス」製品を保存するための布袋から着想を得たドローストリングが施されている。またキーモチーフのひとつとして登場したのが、70年代に発表されたサーベルを描いたスカーフモチーフである「クリケティス」。ラップスカートやワイドパンツ、ブラウスやドレスなど様々なアイテムに様々な素材でグラフィカルにアレンジされた。

 

 毎シーズン、「エルメス」の精緻なテクニックとサプライズ的なアイデアが服を通して発表されるが、今季はガーゼ素材にラムスキンの細かなパーツを並べて刺繍した軽やかでグラフィカルなアイテムが登場。さらにイタウバイエローのアンサンブルや、ミニマルなスカートとトップスのセットアップ、Vネックのミニドレスなど、独特の素材感を見せた。また縁にガラスビーズ刺繍をスクエアに施したシルクシフォンジャカードのドレスなども目を引いた。

 

取材・文:清水友顕(Text by Tomoaki Shimizu)

 

2022春夏パリコレクション

https://apparel-web.com/collection/paris

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