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2021.09.06
【2022春夏東京 ハイライト1】「ホワイトマウンテニアリング」と「カラー」が「by R」による凱旋ショーを開催 若手デザイナーたちの台頭も
写真左よりホワイトマウンテニアリング、ハイク、ミカゲシン
2021年8月30日から9月4日にわたって2022春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、Rakuten FWT)」が開催された。参加ブランドは国内外合わせて約50ブランド。例年春夏シーズンは10月に行っていたが、今年は約1か月半前倒しとなる8月にスタートした。これまで世界のコレクションサーキットの中では最後の開催となり、世界的なバイイング競争のスケジュールから遅れをとっていたが、9月のニューヨークに先立って開催されることで多くのブランドにとって有利に働くことが期待される。
デジタルがメインのファッションウィークは3シーズン目となり、デザイナーたちも幾分慣れてきたように思えるが、まだリアルなショーの意義やブランドとしての表現方法を模索しているという声も多く聞かれた。ただ、ファッションの世界も進化は続いており、混沌とした時代の中でも、新進気鋭のデザイナーたちが気負いなく自身の表現方法でパワフルなコレクションを発表していることは、ファッションの未来への希望につながっている。
今シーズン、Rakuten FWTのタイトルスポンサーを務める楽天による日本発のファッションブランドを支援するプロジェクト「バイアール(by R)」では、毎シーズンパリで発表を続けている「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」と「カラー(kolor)」がそれぞれランウェイ形式でコレクションを発表した。
ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)
ブランド設立15周年を迎えた「ホワイトマウンテニアリング」が、約9年ぶりに東京でランウェイショーを行った。ファッションウィーク東京の公式スケジュールで発表するのはブランド初となる。ランウェイは、新宿御苑の美しい森林の中、無観客で行われ、その様子はライブストリーミングで配信された。
2022春夏コレクションは6月のパリメンズの期間にすでにオンラインで発表済みだが、今回のショーでは、すべてのルックでウィメンズモデルを起用したり、昨年10年ぶりに再開したブラック一色のみで表現する「BLK」ラインも登場したり、フィナーレで全モデルがこれまでのコレクションのタイトルをプリントしたTシャツを着用したりと「by R」に向けた特別な演出が用意された。
ルックは2022春夏を象徴するボタニカルプリントやシックな植物文様のアイテムも登場したが、「等身大、自分の今のリアリティを表現したい。パリで行なってきた要素をどのように等身大の引き算にしていくか?ということにチャレンジしたかった」と相澤陽介デザイナーが語っていたように、メインは全身ブラックのシンプルでスポーティーなスタイリング。ヘルシーな肌見せで女性らしさを強調し、ディテールの美しさでモード感をプラスした。
コロナ禍でコレクションの発表方法やブランドのあり方について、模索し続けた1年半。まだ答えは出ていないようだが、パリで力をつけた日本のブランドが凱旋ショーを開催することで、若手のデザイナーを含む多くの人々に力を与えたことは間違いない。
カラー(kolor)
パリでコレクション発表を続けている「カラー」が、「by R」によって東京で凱旋ランウェイショーを行った。ランウェイの舞台は京急電車の車両の中。「カラー」によってジャックされた車両の広告枠には「カラーが京急車両をジャック中」「さあ、楽しもう」「僕たちはどこへ????」といったストレートかつ挑発的なメッセージが書かれていた。
そんな中、座席で鑑賞する観客の前をモデルたちが颯爽と歩いていく。コレクションはすでにパリメンズ期間に映像で発表されているが、二度目とは思えないほど勢いと新鮮さが伝わってくる。トラッド、スポーツ、ミリタリー、エレガンス、そんなキーワードが1つのルックからでもどんどん湧き上がってくる。
ジャケットやシャツ、ポロシャツ、チルデンニットを解体し、別のアイテムと組み合わせることによって全く別の、そして多様な表情を持った新しいアイテムに生まれ変わる。色使いも素材もバリエーションが豊かで、シアーや光沢素材、レースを効果的に取り入れてカジュアルとエレガンスのバランスを保っている。これまでも、色や素材のミックスが特徴的ではあったが、より大胆な表現へと進化しているように見えた。
ハイク(HYKE)
吉原秀明と大出由紀子が手掛ける「ハイク」は、先シーズン同様無観客のランウェイショーの配信でコレクションを発表した。
ブランドコンセプトは「服飾の歴史、遺産を自らの感性で独自に進化させる」。今シーズンの独自の進化はより構築的なシルエットに表れていた。特に印象的なのは肩から袖にかけてのライン。「尖った」という言葉がしっくり当てはまるくらいの角度を肩につけたジャケットは、袖にはスリットが施され、袖口にかけて綺麗な縦長のボックスシルエットを描いている。また、それとは対照的に柔らかいラインで作られるパフスリーブのブラウスやドレスもバリエーション豊かに登場した。ラウンドシルエットはデニムジャケットにも用いられ、スカートやパンツのスリムなラインとの対比でその個性は強調された。
春夏コレクションでありながらカラーパレットはブラックやライトカーキ、ネイビー、グレーなどシックなものが揃い、シアーや光沢といった軽さを演出する要素を使わず、ソリッドで強い女性像を描き出した。
「チャコリ(CHACOLI)」、「ビューティフルシューズ(BEAUTIFUL SHOES)」とのコラボレーションは継続。今シーズンからは新たに「ポーター(PORTER)」とのコラボレーション「ポーター × ハイク(PORTER × HYKE)」を発表した。
チノ(CINOH)
デザイナー茅野誉之が手掛ける「チノ」はオンラインで発表。「一瞬の時の中に存在するだけでなく、ワードローブ・想い出に残るモノ創り」をコンセプトに、遊び心と高揚感を持った大人のリアルクローズを提案している。
今シーズンは“Flower Children”をテーマに、「武器より花を」そんな優しく平和的なメッセージを届けたいという思いを込めてコレクションを作成したという。アースカラーをベースにボタニカルプリントやタイダイをのせて自然と共鳴するかのような印象をもたらした。モノトーンのセットアップは、落ち感のある素材と作務衣のようなディテールで軽やかさを表現。ロングスカートに施されたバイピングやウエスト部分がトラックスーツのようなディテールで仕立てられたパンツ、そして深いVネックのトップスやニットポロシャツはエレガントなコレクションに遊び心とスポーティーな要素をプラスした。
ミントデザインズ(mintdesigns)
「ミントデザインズ」は昨シーズンに続きオンライン形式で発表。“世界はハッピーミステイクで溢れている”をテーマに、ブランドらしい鮮やかでプレイフルなコレクションを提案した。
“ハッピーミステイク”は、ブランドを立ち上げた20年前のファーストコレクションのタイトル” A Happy Mistake! Vol.1”からの引用で、プリントのミスを活かし、オシャレなグラフィックに昇華させたことから始まったブランドの原点を表す言葉。今シーズン、デザイナーの勝井北斗と八木奈央が「見渡すと世の中の発明品も、もしかしたら失敗から生まれたものが殆どかもしれない」と、改めて世界中がハッピーミステイクで満ちていることに気づいたことからこのテーマを選んだのだという。
淡いオレンジや水色、ミントグリーンなどの優しいカラーパレットでドットやブランド名、ランダムに描いたイラストなどがプリントされ、グラフィカルな楽しさを演出。また繊細なレースやパンチングニットなど、透け感を活かしたレイヤードも印象的。シックなモノトーンのシリーズはエレガントでありながら、レースやリボンと、ドット絵でつくり上げたようなグラフィックのコントラストがユニークであった。
スリュー(SREU)
デザイナー植木沙織が手掛ける「スリュー」。ブランド名はサステナブルのS、リサイクルの RE、アップサイクルのUをつなげた造語で、「一点物の既製服」をコンセプトに掲げて服作りを行っている。古着のリメイクという軸は変わらずに、デニムのセットアップやいくつもの生地を組み合わせたブラックのロングドレスなど、今シーズンはよりシックで大人っぽい雰囲気を紡ぎ上げた。
印象的なのはトレンチコート。ブランドの名前が入ったリボンを纏わせて、自由自在にシルエットを変幻させていく。体に沿うラインを作ったり、ウエストで袖とリボンを結んでスカートのように着こなすスタイリングも見せた。メンズのセットアップやジャケットにはパールを装飾に用い、ジェンダーレスで楽しめるアイテムとして提案。フレアパンツやユーティリティ、テーラリングといった時代の流れを捉えたアイテムや要素もバランスよく加えられていた。“サステナブル”なファッションが求められる今の時代、サステナブルでありながら独自の世界観を作り上げるスリューの今後の活躍に注目だ。
ベースマーク(BASE MARK)
「スタンダードをモードに遊ぶ」をブランドコンセプトに、デザイナー金木志穂が手掛ける「ベースマーク」。今シーズンは“2TONE”をテーマに動画配信でコレクションを発表した。
“2TONE”とは、70年代のイギリスで生まれ大流行したスカとパンクロックが融合した新しい音楽のジャンルで、イギリスとアフリカの奏でる音楽の融合をコレクションで表現した。
ベースのアイテムはイギリスの伝統的なシェットランドウールを使用したジャケットやパンツなど、ブランドが得意とするテーラードのパターンアレンジだが、オレンジやパープルなどの鮮やかな色合いで表現したアフリカンプリントで華やかかつ力強い印象を生み出している。クラシカルなトレンチコートの袖や裾の途中からパターンがつけられたり、ノーカラージャケットの襟元で鮮やかな素材の切り替えを施したりと、遊び心も散りばめられた。今シーズンを象徴するアフリカンプリントが施された水着素材のアイテムは、コロナ禍で移動が制限される中でも非日常を表現したいというデザイナーの想いを反映したアイテムとなっている。
また、今シーズンはチェコのバッグブランド「ブラアシィ インダストリー(BRAASI INDUSTRY)」とのコラボレーションを実施し、「ベースマーク」のオリジナル素材を「ブラアシィ インダストリー」の定番アイテムであるバックパックとトートバッグに使用した2型を展開する。
ミカゲシン(MIKAGE SHIN)
「ミカゲシン」は、1920年の日本建築界に強烈なインパクトをもたらした「分離派建築会」の前衛的なムーブメントをクリエーションに投影。ありとあらゆることがカオスの中で過ぎ去る現代社会に、歴史に裏打ちされた美学を提示してみせた。
分離派建築の特徴である“都市と田園”、“彫塑的なもの”を2大キーワードとした同コレクションは、新時代を切り拓くという意思表示でもある。例えば、近代化などの急速な変化に対する人間味のある葛藤をファッションに落とし込む方法として、都市建築などを象徴する大理石の柄や社交性を連想させるスーツの要素を、麻のテクスチャーのリサイクルポリエステルで表現したり、はたまた流線的なシルエットと布のシャーリングで彫刻的なボリュームを平面的な布に落とし込んだり。
また、“建築の芸術性の回帰”と同じく、“ファッションの芸術性の回帰”も今シーズンの重要なサブテーマだ。サステナビリティや労働環境の改善などが叫ばれる昨今では、ファッションに純粋な芸術性を見出してもらうことはもはや難しい。それでも、意匠やアート性を人々が純粋に楽しめるようにしたいという一心から、同コレクションでは環境に配慮した素材やジェンダーフリーな表現を大前提としながらも、ブランドの真髄であるデザインの創造を深化。全体として、無駄なコンテクストは排除した、重厚且つ詩的なコレクションに仕上げた。
ホウガ(HOUGA)
ファッションウィークの参加もランウェイショー形式での発表もブランド初となる「ホウガ」。デザイナーの石田萌が2019春夏にスタートし、「Unbirthday Party Dress/365日分の364日、自分が萌芽する。」をコンセプトに、誕生日でもなんでない日に着るための、日常のドレスを提案している。
今シーズンは“プレザントホリデー(Pleasant Holiday)”をテーマに、19世紀のテニスドレスや優雅に休暇を過ごす避暑地での装いをインスピレーションにコレクションを紡ぎ上げた。たっぷりのプリーツ加工やボリュームのあるフリル、煌めきを演出するラメ糸をミックスした花柄のレース刺繍生地など、ロマンティックで優雅な要素をたくさん詰め込みながらも、バイピングが特徴的なポロシャツや体を締め付けないソフトなリボンのハーネスベルトなど、日常使いを意識したアイテムやディテールにもこだわっている。
また、スカートとしてもドレスとしても使えるアイテムや、子供が着るとドレスになるトップスなど、「ホウガ」独自の「着方次第で表情を変えることができるアイテム」も多く発表された。デザイナーの石田氏は、「らしさや普通の枠に自分を当てはめるのではなく、自分を解放して本当の自分らしくいられる洋服を提案していきたい。ブランドとしてはまだ始まったばかりなので毎回が挑戦だけどがんばっていきたい」と語った。
アヤーム(AYÂME)
セントラルセントマーチンズでニットウェアを学んだのち、メゾンルマリエなどで実践経験を積んだデザイナーの竹島綾による「アヤーム」。シーズンテーマに据えた”space craft“とは、単なる宇宙船という意味ではなく、自分自身の空間(space)と手仕事によるクリエーション(craft)という二つの意味合いが折り重なったものだ。
「有機的なものには正解・不正解は存在せず、正解は自分で選んで欲しい」という思いから、今シーズンは淡色のチュールやレースを多用することでより軽快なムードに。フリル付きのビスチェにマニッシュなデニムを合わせ、その膝下にはチュールのギャザーを縫い合わせた。メンズジャケットでは、ボタン合わせをあえて右前に仕立て、尚且つパステルカラーを用いることで新しい自立的な男性像というものをダイレクトに提案。デジタル配信されたコレクションムービーでは、今後のフィジカルショーを意識し、オーセンティックなランウェイ方式が採用された。
また「アヤーム」はシーズン毎に必ず一つはオリジナルの生地を制作しており、今シーズンは京都のプリント工場で生産されたギンガムチェックをセレクト。今後も革新的なオリジナリティーを追求しつつも、国内の各産地で培われたものづくりの希少な技や想いを繋いでいくことを目指していくという。
ユーシーエフ(UCF)
「ユーシーエフ」は“Be dignified and freely”をテーマに掲げ、13人のデザイナーによる計43ルックを発表した。同ブランドは心の襞に触れるような素材と人との関係というコンセプトのもと、国内生産にこだわったアイテムを展開。今シーズンは、兵庫県の播州織、富山県と福井県の北陸経編素材、愛知県の有松鳴海絞り形状加工を駆使した素材、群馬県の桐生ジャカードをメイン素材としてセレクトした。
東京では初のフィジカルショー開催となった「ユーシーエフ」は、素材とシルエットに重きを置いているため、基本的には白と黒の2色のみ。コレクションには、機能性と美しさの両立を目指すというブランドの理念を汲んだルックが出揃った。例えば、しなやかで有機的なジャガードだからこそ表現できる変形のワンピースや、ドローコードで生地を胸元に寄せた繭のようなコート、袖口やリブの位置を変えることで数パターンの着こなしが楽しめるトップスなど。メタルジップを用いたストイックな印象のルックも目を引いた。
なお、「ユーシーエフ」の世界での卸先店舗は、約15カ国に30店舗あり、国内ではブランド公式ECサイトのみで販売をしている。
サートグラフ(SARTOGRAPH)
2020年に東京で発足した新鋭ブランド「サートグラフ」が提案するワードローブは極めてミニマル。「Empowering Creatives」をブランドの理念とし、テーラリングとワークウェアの要素を兼ね備えたシャープなデザインを追求する。
今回、デザイナーの中野晋介が服作りの参考としたのは、ファッションと親和性の高いミニマリズムを代表するアート作品の造形感覚や直線的なフォルム、そしてビビッドな色使い。シャープなカッティングのパンツスーツや、肩を強調したセミパワーショルダーのワンピースなど、イメージごとに最適な技術を用いて全体のムードを画一させた。
また、マルチプリシティに対するアプローチとしては、一つのアイテムで複数のスタイリングが可能なアイテムを展開。着脱・交換可能な胸ポケットとベルトを付したコートや、細長いベルトの付け方によって襟元のルックスが変化するトップスがその好例だ。また「サートグラフ」は、テーラリングの技術が必要なコートやジャケットは職人へ直接依頼をするという生産体制を取っているため、コラボレーション次第で思わぬ化学反応が起こる可能性もある。
なお、現時点での販売チャネルは、ブランドの世界観をより効果的に伝えるために自社ECサイトが中心となる。実店舗では、名古屋に位置する美容室兼セレクトショップのユルク(jurk)など、店舗数を絞って取引きを行っている。今後は東京を拠点としながら、海外のファッションウィーク参加などを視野にグローバルブランド化を進めていくという。
ノワールエトフ(noir etoffe)
「何にも染まらない黒」をテーマとし、黒を基調にユニセックスウェアを制作する「ノワールエトフ」。本来ならばありえない位置に部分に穴を開けたり、コートのラペルや袖を大胆に裁断したり、ランウェイではモデルを周回させたり。“Jamaie vu(未視感)”をテーマに提示されたルックは皆、どこかで必ず視線が止まる。
着丈が左右で大きく異なるアシンメトリーのコートと、その下に合わせた光沢のあるスカート。一見すると上下同じ黒だが、光沢によって見え方は大きく変わってくる。そのようなことに改めて気付かされるのも「ノアールエトフ」ならでは。またアイテムを素肌に直接纏うスタイルも相まって、デザインがもたらす違和感がより一層浮き彫りになる。
ショーの進行とともにルックもよりボリューミーに。例えば、前身頃のボタンから装飾を吊るしたようなデザインのコートや、艶やかなフリルのティアードスカートは、ひときわ異彩を放っていた。
なお、これまでに制作したルックは、展示会での発表やアーティストなどへのリースに限定しており、今後も実店舗への卸販売やECサイトでの販売は未定としている。ショー後のインタビューでデザイナーの浦崎直胤は「今後は東京で数シーズン発表を重ねてブランドを確立したのち、パリに行きたいです」と意欲を見せた。
セイヴソン(Seivson)
ファッションウィーク東京初参加となる、台湾出身のデザイナー、ヅゥチン シン(Tzuchin Shen)が手掛ける「セイヴソン」。日本でも俳優やアーティストが着用して話題になったり、米国版 VOGUEに世界27ヵ国の新世代のデザイナーとして紹介されるなど、国境を超えて注目を集めている。
今シーズンは“MISTERMISS”という“名もなき秘密捜査官”をテーマに、ウイルスやエイリアンなど様々な脅威に溢れる混沌とした未来で潜入捜査をする捜査官のグラマラスでハンサムなスタイルを紡ぎ上げている。
ベースとなるキーアイテムはスーツ、ナイロンジャケット、トレンチコート。それらのアイテムがインナーと組み合わされ生まれ変わる。ジャケットは胸元から上が切り取られ、インナーのストラップがつけられている。ナイロンジャケットは胸元から下が大胆に切り取られ、セクシーさもありながら、スポーツのユニフォームのようなヘルシーな印象ももたらした。解体したトレンチコートを何枚も使用して再構築したかのようなドレスはクリエイティビティに溢れ、今シーズンを代表するアイテムであった。
ショーのフィナーレでは、モデル全員が「THANK YOU JAPAN. WE ARE FROM TAIWAN.」と書かれたTシャツを着用して登場。今年6月に日本が行った台湾へのコロナワクチン無償提供への感謝の気持ちと日本で新しいコレクションを発表できることの喜びを表現した。
フェイスエージェー(FACE A-J)
「フェイスエージェー」はアフリカと日本のクリエイティブ産業をつなぐプロジェクトの一環として、インスタレーションを開催した。「楽天 ファッション ウィーク東京」期間中、起業家でありクリエイティブ・アーティストのラデュマ・ノゴロが設立したアフリカのラグジュアリーニットウェアブランド「マコサ アフリカ(MaXhosa Africa)」と、東京のニットファッション製造事業者が中心となったプラットフォームである「TOKYO KNIT」が協業し、今回のインスタレーションの実現にいたった。
ラデュマは一連の発表について、「私たちの時代におけるヒーロー達のイメージを紹介することがベースになっている」とコメント。「TOKYO KNIT」とのパートナーシップにより異なる二つの世界が一緒になることで、世の中により大きなインパクトを与える冒険的な取り組みだとしている。
なお、2021年9月4日(土)から15日(水)までの期間、アフリカのカルチャーとクリエイティビティをテーマとするポップアップショップ「フェイスエージェー プラス(FACE A-J Plus)」を開催し、「マコサ アフリカ」の商品のほか、アフリカに関連する書籍などを販売する予定だ。
Rakuten FWT最終日である9月4日には、東京都と一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)主催のファッションアワード「TOKYO FASHION AWARD」の第7回受賞デザイナーが発表された。
メンズブランドからは、「シュガーヒル(SUGARHILL)」の林陸也、「ダイリク(DAIRIKU)」の岡本大陸、「キディル(KIDILL)」の末安弘明、「ヨーク(YOKE)」の寺田典夫が選出され、2022年1月と6月のパリ・メンズ・ファッション・ウィーク期間のショールーム出展支援を受ける。
また、今回からはメンズ期間のショールーム出展に加え、新たに2月と9月に行われるウィメンズのパリ・ファッション・ウィークでも発表の場を設けることが決まった。そこで出展支援を受けるウィメンズブランドのデザイナーは、「マリオン ヴィンテージ(MALION vintage)」の石田栄莉子と清水亜樹、「ピリングス(pillings)」の村上亮太、「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」の村田晴信、「マラミュート(malamute)」の小高真理が選出された。
すでにパリ・ファッションウィークの公式スケジュールでコレクションを発表したことがある「キディル」の末安デザイナーは、「実は第1回目に応募して選出されなかったので今回はリベンジだった。これまでのショーやインスタレーションは同じメンバーでチームとしてやってきているので支えてくれる周りの人たちに感謝したい」とコメントした。ハンドクラフトに定評がありファッションウィーク東京でも何度もコレクションを発表している「ピリングス」の村上デザイナーは「クリエーションもビジネスも次のステップにいきたい」と今後への意気込みを見せた。
取材・文:アパレルウェブ編集部
東京ファッションウィーク