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2018.03.19

新興国の勃興と先進国の停滞が浮き彫りに パリコレ期間のトレードショーは3つの展示会に収れん

 2018-19年秋冬パリファッションウイーク中に開かれたセカンドセッション(通常3月と10月)のトレードショーは、主なところで「トラノイ・パリ・ウィメンズ(TRNOI Paris WOMEN’S)」「パリ・シュールモード(Paris sur Mode)プルミエールクラス(Premiere Classe)」「ウーマン(WOMAN)」の3展示会に絞られた格好だ。またホテル・ル・ムーリスで開かれたイブニングドレス系の「ヴァンドーム・ラグジュアリー(Vendome Luxuary)」も開かれた。

トラノイ・パリ・ウィメンズTRNOI Paris WOMEN’S)」

「パリ・シュールモード(Paris sur Mode)」

 今年1月のプレコレシーズンに主要なトレードショーのオーガナイザーが、「セカンドセッションの比重を落とし、プレコレの時期に重点を移す」という趣旨の発言をしていた。また「フーズネクスト(Who’s Next)」「プルミエール・クラス」を主催するWSNデベロップモンが6月23~25日に「パリ・シュール・モード」と同じコンコルド広場のテント会場で、150社規模の新しいトレードショーを開催すると発表した。これらの動きから、今回のセカンドセッションでの潮流の変化が見られるかが大きな焦点となっていた。

 また市況の低迷を反映してか、この数年の合従連衡の終着点も見えた形だ。米国から進出した「D&A(ディー・アンド・エー)」と「capsule(カプセル)」の撤退、仏婦人プレタポルテ連盟主催のアパレル展「Atomosphere(アトモスフェール)」と服飾雑貨展「The BOX(ザ・ボックス)」のWSNによる吸収などだ。「トラノイ」と「パリ・シュールモード」&「プルミエールクラス」の2強+日本人に人気のウーマンという「2+1(ツー・プラス・ワン)」の態勢は1年前から変わらないが、総出展者数には変化が出てきている。

日本ブランドに人気の「ウーマン(WOMAN)」

※WSNの数字について―2017AWは「パリ・シュールモード」と併催の「カプセル」も含めた。2018AWは、ジャン・ルイのパビリオンも加えた合計を算出。

 まず「パリ・シュールモード/プルミエールクラス」が3月1日にスタートし4日間。2日からトラノイが4日間、ウーマンは3日間の会期で開かれた。

 

 規模は、「トラノイ」がパレ・ド・ラ・ブルスとカルーゼル・デュ・ルーブルの2会場で462ブランドが出展し、前年同期比1.5%増となった。一方で服飾雑貨の「プルミエールクラス」は、チュイルリー公園のテント会場で442ブランドを集め、コンコルド広場横にテントを張った「パリ・シュールモード」は71ブランドだったが、今回はイラストレーターのジャン・ルイを起用した特別パビリオンとポップアップストアを従来「プルミエールクラス」のアクセサリーゾーンとして使っていたCホールで行い、ジャンの集めたストリート系のアパレルと雑貨の32ブランドが出展した。このため、WSNとしての出展者数は、545ブランドで同12.2%減となった。ウーマンは、引き続きヴァンドーム広場の1会場で開き70ブランドが出展、同22.2%減と大幅に減らした。

 

 3展全体の出展者数は1077ブランドで、前年同期の1166から85ブランド減り、7.6%減となったことになる。主要トレードショーの出展者減少傾向に歯止めが掛かっていないことが分かった。

イラストレーターのジャン・ルイを起用した特別パビリオンとポップアップショップ

 一方で来場について、出展者やバイヤーの声を聞くと、「今回は来場者が少し増えている気がする」「来場は悪くない」といった声が多く、前年同期の「非常に静か」などネガティブな声が減っており、ポジティブな感想がヒアリングできた。特に目立ったのは、ロシアやウクライナ、バルト三国など旧東側諸国の台頭。経済成長も著しく、ベルリンの壁崩壊後に育った世代が、デザイナーでもショップ側でも、ここへ来て花を咲かせてきていると見て良いようだ。新市場開拓という視点から、これらの国々をターゲットにしていくことも肝要かもしれない。ただし、これらの国々では貿易、輸送、通関などの面で、未ださまざまな障壁があることも事実。その点ではケーススタディーや情報収集も欠かせないと肝に銘じておくべきだ。また中国からの来場も目立った。新興国の勃興と先進国の停滞、二つの流れが合流しているのが、パリの持つプラットフォームの国際性の現れと言えよう。

 さて、前述の「プレコレへの流れが強まるか」だが、今回手応えを感じている出展者が多いことを考慮すると、パリコレのプラットフォームにあやかるセカンドセッションの強さは持続するのではないだろうか。もちろんインターナショナルで動く一流店は、早めの納品を要望し、プレコレ時期の買付額と出張者数を増やしていくことは間違いない。ある国内大手百貨店もプレコレの出張者の方を増やすと語っていた。ただ、パリコレの持つ華やかさの威光を借りたセカンドセッションでの買い付けに主軸を置く未成熟な市場やローカルなリテーラーの存在も無視できないといったところかもしれない。

 当面、プレコレとセカンドセッションの挟間で、出展者、バイヤーともに悩ましい日々が続きそうだ。

【注】ファーストセッションは、「フーズ・ネクスト」「プルミエールクラス」のみがイレギュラーで9月初旬に実施しているため、本稿では、プレコレ(1月と7月)とセカンドセッション(3月と10月)のバランス変化を注視した。今後、6〜7月のウィメンズ展示会が増えていくと、プレコレ時期をファーストセッションと定義していく可能性も出てくる。

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