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2021.02.05

2021年注目すべきアメリカのアスレジャーブランド3選

ニューヨーク・マンハッタンにあるLululemon(ルルレモン)の店舗

 近年、世界的に健康志向が高まる中、注目を集めているアスレジャースタイル。パンデミックによる在宅消費が追い風となり、アスレジャー業態に力を入れているブランドはむしろ堅調に成長しています。昨年末、調査会社Euromonitor International and Coresightが発表した試算によると、2020年の米国のアスレジャー市場は約1,000億ドル(約10兆円)に上ると推測しています。今回は、2021年注目すべき代表的な3つのアスレジャーブランドの最新状況をレポートします。

Lululemon(ルルレモン)

 アスレジャーの代表ブランドの一つ、Lululemon(ルルレモン)。パンデミック下でも業績は好調で、2020年初頭から12月末時点までに株価が54%上昇し、2020年第三四半期の純利益が10億ドル(約1,000億円)を突破しています。

Lululemon(ルルレモン)の直近の株価は上場以来最高水準で推移(Source:Yahoo! Finance)

昨年12月に行った決済会見では、CEOのCalvin McDonald(カルバン・マクドナルド)氏が業績好調の理由として下記5つの要因を挙げました。

 

  • ロイヤルカスタマーが一回の買い物(EC・店舗を含む)で複数のアイテムを購入し客単価の改善に繋がった。

 

  • 新商品のラインナップをECと店舗に安定的に供給できた。

 

  • 売れ筋商品の在庫管理を調整し、機会損失を防ぐことができた。

 

  • パンデミック禍で、従業員に対し、フレキシブルな働き方や職場環境における安全面の確保などを配慮したことで、一部店舗の営業再開のオペレーションがスムーズにできた。

 

  • もっとも重要なのは過去数年にわたり、デジタル店舗やEC、アプリなどデジタル戦略へ投資してきたことで、パンデミックにおいて特に成果が見えた。

店舗では瞑想(メディテーション)の体験コーナーを設けている

 昨年7月、ルルレモンはホームフィットネスのスタートアップ「Mirror(ミラー)」を5億ドル(約525億円)で買収したことにより、サービスと商品のエコシステムを拡充することに成功。ミラーとはその名の通り、「鏡」のような大型の液晶デバイスを購入し、ネットに接続後、メニューからフィットネスのプログラムを選択することで、自宅にいながらも液晶に映し出されるインストラクターと一緒に体を動かすフィットネス体験ができる商品です。アーカイブされているプログラムに加えて、ライブセッションも充実。鏡の価格は1,495ドル(約15万円)、サブスクリプションフィー(定額利用料)は1カ月あたり39ドル(約4,000円)です。現地の調査会社のデータによると、買収前のミラーの推定会員数はすでに6~7万人に到達しており、在宅消費が追い風となる昨今では、2023年までに約60万人まで上ると予測されています。

現在ルルレモンのECサイトで販売されているミラー

 ルルレモンがミラーを買収したことで、顧客はホームフィットネスに必要なデバイス、服装などすべてを一つのECサイトまたは店舗で揃えることができ、購買体験における利便性がさらに高まりました。2020年12月時点のルルレモンの予測によると、ミラーの買収から新たに約1.5億ドル(約150億)の売上を見込んでいるといいます。また、ミラーの店頭販売を2020年の18店舗から2021年には数百店舗まで拡大するといいます。さらに、2021年の後半よりフットウェア市場に参入し、早ければ2022年の始めに販売する計画も発表しています。

Nike (ナイキ)

ニューヨーク・マンハッタンにあるNikeの大型旗艦店House of  Innovation

 パンデミックの最中に力強い業績を見せたのがルルレモンの競合であるNIKE(ナイキ)です。ナイキは特にスニーカーのイメージが強いですが、近年同社は総合スポーツブランドとして積極的にヨガウェア、アスレジャーウェアの開発に力を入れています。商品面の開発だけではなく、会員アプリを軸にしたECの革新や新業態に注力。昨年同社のEC売上は2019年と比較し84%増加。また、EC売上率が全体売上の25%を占めるようになり、今後数年以内には50%まで引き上げると発表しています。昨年の8月に同社が発表した今後5年間の経営戦略においては、大きな方向性としてD2Cビジネスモデルへシフトし、直営EC・店舗へ経営資源を集中させることで数年間かけ卸売業を縮小させていくことを掲げています。

Nike(ナイキ)の直近5年間の株価も最高水準で推移(Source:Yahoo! Finance)

「House of Innovation」ではパーソナルスタリングサービスも提供している

 ここ数年ナイキはいくつかの新しい店舗業態をスタートしています。2018年に開店した様々な体験やテクノロジーを活かした大型旗艦店「House of Innovation」を始め、2020年7月に中国・広州で「House of Innovation」のコンセプトを応用した「Nike Rise」1号店を開業。さらに、出店地域の特徴を店舗のデザインに反映する地域密着型コンセプトの「NIKE Unite Stores」や、店舗周辺のナイキ会員からの意見や会員データを元に、地域特有の顧客ニーズに対応するサービスや製品を提供する「Nike Live」も登場。これら新業態を運営するにあたっての重要な共通点は会員アプリの活用です。会員アプリを通じて、ECでの注文をこれらの店舗で受け取り可能にし、また、ユーザーの会員データをもとにスニーカーなどのカスタマイズサービスが体験できるというのも魅力の一つです。

マタニティーアパレルライン「ナイキ(M)」

 これまでナイキではメンズ市場を中心に事業を拡大してきましたが、前述した5年間の経営戦略の中では、もう一つの新たな軸として女性市場の開拓を掲げています。ここ数年、レディース商品の開発が奏功し、昨年度のレディース関連の商品の売上が2019年同時期に比べ200%増加。昨年8月発売のヨガウェアを始め、同年翌月には、初のマタニティーアパレルライン「ナイキ(M)」を発売しました。ナイキ(M)はデザイナーが30人近くの妊娠中または産後の女性アスリートから、フィット感、感触、機能に関する詳細なフィードバックを収集し商品開発したといいます。直近の取り組みでは、2021年2月に小売体験サービスを専門的に手掛けるHovercraft Studio社と提携し、ニューヨークの「House of Innovation」の店舗に、キャンプやアウトドアの新商品を展示した大型の体験コーナーを設置。キャンプ関連市場にも本格的に参入する意欲を示しています。

Athleta(Gap)

Athleta(アスレタ)のECサイトより

 Athleta(アスレタ)はGap(ギャップ)傘下のアスレジャーブランドで、近年のアスレジャーブームにおいてはギャップをけん引する重要なブランドの1つです。現時点では、ギャップ傘下ブランドの中で売上比率は比較的小さいですが、アスレタはパンデミック禍で唯一売上が増加したブランドです。

 

 昨年10月に開催されたギャップの決算会議では、3年計画として、2023年までにアスレタの新規店舗を100店舗まで拡大、同時に卸売業も強化し、合わせて20億(約2,000億円)の売上を目指すといいます。アスレタを始め、新規ブランドに経営資源を集中させ、2023年までに本体のギャップ、Banana Republic(バナナ・リパブリック)を合わせて約350店舗を閉店すると発表。そして、アスレタは現在、米国国内で直営店とアウトレットを合わせ約200店舗を展開していますが、今後はグローバル展開を強化し、カナダなど北米市場で新たに300店舗を展開することでアスレタの認知度を拡大していくといいます。

最近発売したスリープウェア(ECサイトより)

 先述した決算会議では、アスレタのCEOがブランド戦略のカギは新規顧客の獲得だとコメント。米国国内のアスレジャースタイルを好む女性間では、アスレタの認知度が53%に止まっている現状から、ECでのキャンペーンや新規出店による知名度拡大が優先事項だといいます。現在アスレタは女性市場の開拓に注力しており、特にレギンスとトップスが売れ筋で、今後はホームフィットネスが人々のライフスタイルに定着すると見据えて、ティーン向けの商品開発を急ピッチで進めています。そこには、自宅で親子揃ってフィットネスする時間を楽しむユーザーが増えるとする狙いがあります。その他、プラスサイズの商品開発により多様なニーズにも応じています。

 

 アスレタは商品開発や新規出店のほか、デジタル戦略も重視しています。昨年末よりデジタル接客サービスを開始し、ビデオチャットでスタイリストに相談することが可能となりました。また、著名なフィットネスインストラクターを招き、ライブ配信を通してフィットネスのレッスンを実施しています。直近ではサステナブル素材を使ったスリープウェアも発売し話題を呼んでいます。

まとめ

 

 今回ピックアップした3つのブランドとも、パンデミック禍においてアスレジャー領域で業績を上げているブランドです。2強といわれるルルレモンとナイキは、それぞれ異なるアプローチで差別化を図っています。ルルレモンはミラーを買収し、EC・店舗でフィットネスに必要なものがすべて揃うという利便性を武器にしています。一方、ナイキは会員アプリを軸に、ECや店舗の新業態を開発し次々と新しい体験を提供しています。アスレタは大胆な新規出店と女性向けの新商品開発を通して、知名度の拡大を推し進めています。ますます競争が激しくなるアスレジャー市場。デジタル戦略の活用が不可欠であることを前提に、他ブランドとの差別化を図るためには、商品の機能性や、顧客がフィットネスライフスタイルをもっと楽しめるサービスといった付加価値の有無がファンを獲得するカギになるのではないでしょうか。

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