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2017.07.26

売れる仕かけが満載 NY初「アマゾン ブックス」で最新ショッピング体験

 ジェフ・ベゾス氏が1995年にオンラインブックストア「Amazon」を開設してから22年。今では本はもちろん、日用品や電化製品、ファッション、食品となんでも揃うという印象のオンラインストアへと成長しました。 2015年11月には初のオフラインのブックストア「アマゾン ブックス(Amazon Books)」を本拠地であるシアトルにオープン。 2017年5月にはコロンバスサークルにあるタイムワーナービルディング2階に、ニューヨーク初となる店舗を出店しました。

 

 マンハッタンでは本屋の数もこの数年で激減し、アマゾンの「キンドル(Kindle)」のようなデバイスで読むか、アプリで読む姿が圧倒的に増えました。そこで、アマゾンが考えるオフラインのブックストアとはどんなものなのだろう?と期待を膨らませながら店舗を訪れてみました。

 タイムワーナービルディングには「マイケル コース(Michael Kors)」や「コーチ(COACH)」「エイチアンドエム(H&M)」 「ジェイ・クルー(J.Crew)」など多くのアパレルの店舗があり、地下には先日アマゾンが買収を発表したオーガニックスーパーの「ホールフーズマーケット(WHOLE FOODS MARKET)」も入っています。最寄りのコロンバスサークル駅は、複数の路線が通るハブ的存在。その利便性から、ローカルだけでなく観光客も多く訪れる場所です。

すべての表紙が表向きに 思わず手に取りたくなる書籍の並べ方

 店内に入るとまず目に止まるのが、すべての本が表紙を表に向けて面陳列あるいは平積みされていること。背差しでの陳列(背表紙側を見せた陳列)は見当たりません。本の名前や著者は思い出せないけれど、表紙の雰囲気だけ覚えている―なんていうことが多い私みたいな人間には、実にありがたいです。タイトルだけではピンとこないけれど、表紙のデザインからちょっと手に取ってみようかな?と思うことも少なくないでしょう。人気や新刊だけでなく、すべて“表向き”というだけで、こんなにも本に対するワクワク感が掻き立てられるのかとちょっと驚きました。

詳しく知りたければ、モバイルでスキャン

 書籍一つひとつに書籍の説明や評価、コメントが記載され、バーコードも添えられています。本を手に取らなくても、スマートフォンでアマゾンのアプリを立ち上げ、バーコードをスキャンすれば、より詳しい情報を得ることができます。

ファッションでも取り入れたい!アマゾンのレコメンド術

 SFやミステリー、料理本… 。読む本に特別な好みがあれば、似たテイストの本を探すことも多いでしょう。オンラインでのレコメンドと同様、アマゾンブックスには、“これが好きなら、これもきっと好き(If You Like, You’ll Love)”というコーナーがあります。オンラインでよく買い物をするようになればなるほど、こうしたアプローチがしっくりとはまってしまいますね。

 

 ファッションブランドのECでも、購入履歴やお気に入りなどの顧客情報から、他のおすすめ商品をメールしてくれたり、スマートフォンでプッシュ通知してくれますよね。オフラインの場である店舗でも、「このアイテムを購入した人はこれも似合うかも!」という具合に、データを活用したレコメンドができるはずです。また、ポップを作る際も、「当店人気!」より、「オンラインショップでも人気!」の方が、もっと大勢のファンが絶賛しているようで、より購買欲がくすぐられます。

 

 オムニチャネルビジネスというのは、色々な形、色々な規模で形にしていくことができます。こうしたちょっとしたことでも、オンライン、オフラインの販売チャンネルをシームレスにすることができますよね。

本探しから決済まで モバイルひとつで完結

 いざ本を買う場合、大活躍するのがアマゾンのアプリ。アプリ内のカメラ機能で表紙のデザインを読み取ると、書籍を検索し本の詳細を表示してくれます。時代は文字検索でなく、画像検索の時代へと進化しています。

 

 そのまま決済する場合は、メニューから、「アマゾンブックスチェックアウト(Amazon Books Checkout)」を選択し、決済情報が埋め込まれた独自のQRコードを表示。「amazon.com」でアカウント登録がされていれば、そのままQRコードをスキャン。お財布から現金を出すことも、クレジットカードを出すこともなく、決済が完了します。

音声認識スピーカー「アマゾン エコー」シリーズも試せる・買える

 店内にはキンドルはもちろん、「アマゾン エコー(Amazon Echo)」やスピーカーなど、アマゾンのテック系商品も販売されています。ちょうど立ち寄った時、女性が3歳くらいと見られる小さな子供を連れていたのですが、その親子はアマゾンブックスの常連なのでしょうか。子どもはさっそく「アマゾン エコー」を試せるテーブルに座り、ひとりで「アマゾン エコー」に話しかけて遊んでいました。すでにエコーを所有する家庭なのかもしれませんが、幼い頃から音声検索に親しむ様子は、検索方法の主流がテキストから音声へと着実に変わっていく時代の流れをまざまざと見せられた気がしました。これが今の時代なのですね。

オフラインにいながら常にオンラインの世界とつながっている―私たちの生活基準が変わる

 予定ではありますが、マンハッタンに2店舗目のアマゾンブックスがオープンします。場所はエンパイアステートビルディングの向かいで、通りでいうと34丁目のユニクロの並びです。現時点では2017年秋ということですが、工事が遅れることが多いアメリカなので、ホリデーショッピングまでにオープンできたら御の字かなと思っています。

 

 ストアというオフラインの場にいながら、実際は常にオンラインの世界とつながっているのが今の私たちの生活のスタンダード。「オフラインの世界では…」とか、「オンラインの世界では…」という表現はもう古いのかも知れないと感じさせられるサービスが益々増えています。また、文字検索からビジュアル検索やヴォイスコントロールへと確実にシフトし、AI 、マシンラーニングを取り入れたサービスも徐々に増えていくでしょう。


 

RINA  

R I N A

90年代の米国がネットバブルだった頃に米国にて日本向けのファッションポータル事業にコンサルタントとして関わる。

 

以降、「ファッション」と「インターネット」上で行われるビジネスを中心とした事業に15年ほど携わり、Web製作やディレクション、ビジネスのコンサルタントを行う。現在は米国のファッション事情やトレンド、ファッションとIT関連を中心とした執筆、今までの経験と知識を活かしビジネスサポートも行っている。

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