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2020.08.28

手作り商品を販売するECサイト「ETSY(エッツイ)」がコロナ禍に絶好調な理由

「Etsy(エッツイ)」の公式サイトより

 米国では、6月にビジネス再開をしたものの、飲食店では1万6000店舗が永久閉店しており、アパレルなどの小売店は、年内に2万5000店舗が閉店や倒産に追い込まれると予想されています。8月8日の土曜日に、ショッピングモールに立ち寄ってみたところ、従来であれば、バックトゥスクールの買い物で賑わっている時期にも関わらず、客足は少なく、唯一アップルストアの入り口に列ができていたくらいでした。先の見えない状況下で、洋服やファッション雑貨に出費する余裕の無い人々が多いというのが現状の様です。そのような背景のなか、手作り商品の売買に特化したオンラインサイト「Etsy(エッツイ)が異例な好調ぶりをみせています。3月中旬のロックダウン直後にあたる4月~6月にかけての同社の第二四半期のECの売り上げは、昨年対比136%増加の$428.7M(4億2,870万ドル)と報告されています。

 

 エッツイで販売できるものは、ハンドメイド商品、ハンドメイド資材、ヴィンテージ品の3種類です。また、エッツイでの第二四半期の流通取引総額は145.6%増加の25億ドル。昨年7月に同社が買収した、音楽資材の新品及び中古品を売買するオンラインマーケットプレースの「REVERB(リバーブ)」の売り上げが2億2,700万ドルと発表されました。エッツイのプレスリリースによると、今年4~6月にかけての新規購入者が1,150万人、1年以上購入歴の無かった購入者のうち720万人が利用を再開しているそうです。総合アクティブバイヤーは41%の増加、売り手は34.6% 増加したそうです。ロックダウン中に家で過ごす時間が多くなり、DIY資材を購入した消費者や、安全でユニークな商品が購入出来るため、需要が伸びたと思われます。

身を守りながらファッション化、マスクがバカ売れ!

エッツイのサイトで販売されているマスク

 ホワイトハウスが、米国消費者に向けコロナから身を守る為にマスク着用を促すガイドラインを発表した後、エッツイでは、売り手達へのメッセージ機能を活用しマスク生産を巧みに誘導しました。その結果、マスクは飛ぶように売れ、4月には2015年の上場以来、史上最大の販売数を2日間も記録し、4~6月の第二四半期に少なくとも11万2000個、3億4000万ドル相当のマスクを販売しました。また、購入者の32%が2週間以内に追加購入しており、現在では6万人以上の売り手がマスクを販売しているそうです。ハンドメイドが人気の理由には、洋服とマスクの色柄のコーディネートや、好きなスポーツチームや動物の絵柄を取り入れることによって個性を演出できるなどといった要因があります。4月のカテゴリー別売上を見ると、フェイスマスクはステイホームで需要が伸びた「ホーム&リビング」に次いで2位を記録しています。同四半期のマスク以外のアイテム需要も93%増加しており、手作りのサニタイザー、植物の種子、縫製やDIYの材料など、ステイホームが興味を喚起し、他では手に入らないような商品の販売が伸びました。

マーケティングに多額の投資

 エッツイでは、売り上げの27%に当たる1億1,500万ドルの金額をECの検索機能などUIの改善、そしてデジタル広告などのマーケテイング費用に投資しています。パンデミックが発生し、消費者が日用品から、インテリア雑貨、ギフトに至るまでEC上で購入している傾向を受け、消費者の目に留まりやすくする為に、テレビ広告を打ち、エデイターのおすすめページを新たに開設、また「毎日使う商品」のカテゴリーをトップページに加えるなど工夫を凝らしています。

イメージが膨らむVIDEO LISTING

 エッツイのサイト上では、販売ページでリストされている様々な角度からの商品写真に加えて、ビデオを追加できる機能が加っています。売り手は5~15秒の短編動画をアップする事ができ、動画内では、商品を手のひらに置くシーンや、ギフトボックスから取り出すシーンなどが展開されています。この商品紹介動画は、少しでもリアルな詳細を知りたい消費者にとって効果的なアプローチとなっており、実際にアクセス数の増加に繋がっているようです。

Augment Reality(拡張現実)機能を活用

エッツイのアプリのAR機能

(エッツイの公式ブログより)

 

 

 エッツイでは、部屋に飾るポスターや写真、オブジェ等を探している消費者が、米国版のiOSアプリに搭載されたAR機能を活用することで、実際に商品を自宅の壁に取り付けた際にどう見えるかを試す事ができる機能です。リスティング写真右上のアイコンをクリックすることで、その商品が自分のスペースに重なって表示されます。

「EVERYDAY FINDS」テレビキャンペーン

エッツイのテレビ広告

 エッツイが最も力を入れたのがテレビマーケテイングです。沢山の人々が在宅である事から、この期間の宣伝は非常に効果的と言えます。世界中の売り手の中から14名にフューチャーした広告は米国25のTVネットワークを始め、SNSや世界中のストリーミングプラットフォームで放映されています。この取組が、今までエッツイを使用したことの無い人や、何度か買い物をしたという人々を呼び戻す大きなチャンスとなったようです。広告には、“タグ”がつけられており、「Always Open」では、世界中の店舗が閉店している中、私達エッツイは6500万点のアイテムを取り扱い営業していることをアピールしました。中小規模の販売者達をサポートしている事を強く印象付け、顧客とのロイヤリテイを強く結ぶ役割を果たしており、ホリデー商戦に向けても非常に効果的ではないでしょうか。 

※エッツイのテレビ広告はこちらから閲覧できます。

Offsite Adds(オフサイト・アド)

 500万ドルを費やした、オフサイト広告(エッツイ以外でのウェブでの宣伝)では、グーグル、フェイスブック、ピンタレスト、ビングで販売者の商品広告がクリックされ販売が確立すると、エッツイは売り上げの15%を受け取るというもので、売り手の意向を問わず広告出稿していた事や、売り手の売上が年間1万ドルを超える場合は広告の取り下げができないことから、売り手からは不評の様です。

 

 今年後半は、ハロウィーン、感謝祭、クリスマスなど商機となるイベントが続きますが、既存の小売店やEC企業にとっては、在庫コントロールを行いながら如何に現状にあった適切な商品を提供できるかが鍵となってくると思います。今後、パンデミックの収束が見えた際に、エッツイが現在の状況を続ける事が可能なのかという疑問もありますが、テレビキャンペーンでは既に各イベントに向けたイメージが放映されていることもあり、今までエッツイを知らなかった消費者にとって、新たなショッピングの場の候補として挙がっていくのではないでしょうか。

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