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2020.07.01

関西の商業施設、徐々に回復中

 小売店に対する営業の自粛要請が解かれ、関西の商業施設も、徐々に通常運転に戻りつつある。新型コロナウイルスの感染防止を目的に、入店制限や営業時間を短縮するなどの措置がとられているため、正常化への慣らし運転状態の施設が多いようだ。主要な商業施設の現状をまとめた。

 

5月度は大幅なダウン

衣料品でシーズンものが好調な「阪急西宮ガーデンズ」

 今回取り上げた商業施設、小売店は阪急阪神百貨店、大丸心斎橋店、ルクア、阪急三番街、阪急西宮ガーデンズ、ハービス。大丸と阪急西宮ガーデンズ以外は全て梅田商圏に店舗を構えている。

 

 阪急阪神百貨店はエイチ・ツー・オーリテイリング傘下の百貨店業態を運営する。主な店舗は、梅田の阪急うめだ本店、阪神梅田本店だ。5月度の売上高前年比は阪急うめだ本店が25.6%、阪神梅田本店が27.3%だった。既存店全体では30.5%。やはり月の約3分の1程度しか営業できなかったため、また入店制限や営業時間の短縮があったため、売り上げの数字は当然、伸び悩んだ。しかし、千里阪急(54.5%)や川西阪急(51.0%)、宝塚阪急(69.3%)など沿線店舗は下げ幅が少なかった。地域住民の食品需要があったためと見られる。

 

 ショッピングモール、複合商業施設の「阪急西宮ガーデンズ」は5月22日に営業を再開した。施設全体の売上数値は未公表だが、核テナントの1つ「西宮阪急」の5月度は40.6%だった。衣料品は、夏物やベビー関連商品などの“シーズン商材”、買い替え品の需要が高いようだ。食物販や家庭用品は好調な推移だった。改装予定に及ぼす影響は今のところ少ないという。

 

 大丸心斎橋店は5月19日から全館営業を再開した。同月30日からは週末の営業も再開した。イートインや化粧品など、一部のテナントは臨時休業している。具体的な売り上げの数値は非公表。J.フロントリテイリング全体の「百貨店事業」としては、5月度の総額売上高が73.2%だった。インバウンド市場が全く動かないことが、各分野に影響しているという。衣料品では、「今すぐ着るもの」をまとめ買いする顧客が多い。化粧品では、スキンケア商品が好調だ。ここでも同じ商品を2点ずつ買う傾向があるようだ。洋品では日傘、暑さ対策グッズ、ネイルケア商品が売れ筋。日焼け止めにもニーズがある。リビング関連では、生活必需品の夏物寝具や調理用品が動いている。

まとめ買いが増加、飲食は“3密”を避け苦戦傾向に

物販ではまとめ買いが多い(「ルクア」)

 梅田の複合商業施設「ルクア」は順次、営業を再開し始め、5月25日時点で80%、6月1日にはほぼ全ショップがオープンした。売り上げも休館前の状況に戻りつつあるようだ(具体的な数字は未公表)。アパレルなどの物販では、やはりまとめ買いが多い。飲食テナントは“3密”を避けるための座席間引き営業が響いて、売り上げは伸び悩んでいる。今春にオープンを予定していたテナントは、営業再開後に準備が整った店舗からオープンしているという。7月1日以降は営業時間をさらに拡大する計画だ。

 

 同じく梅田の商業施設――西梅田エリアに店舗を構える「ハービス」は5月22日から営業を再開した。人が集まる「劇団四季」や「ビルボードライブ」といった大型のエンターテインメント店舗はまだ休業中だ。売上推移は、6月中旬の段階で前年の60-70%の回復度合いだ。物販店舗は、顧客の来店やプレセールの効果が見られる。飲食店舗は、施設周辺のオフィスワーカーの出社率がまだ低い影響もあり――テレワークが継続されているため、特に苦戦している。

 

 梅田最大級の地下街「阪急三番街」は、5月22日に営業を再開した。現在はほぼ全ての店舗が営業している。なかなか売り上げが戻ってきておらず、特に飲食店が苦戦しているようだ。物販では、生活雑貨や日用品が順調に回復しているが、アパレルの回復は緩い。

 

 総じて物販は復調しているが、飲食関連が苦戦している。売上高の回復は前年の20-70%と幅がある。6月度は週末を除き、営業日数が増えているのでさらに回復していると考えられる。ひとまず、商業施設が動き出したことだけでもプラス材料だろう。


 

 

樋口 尚平
ひぐち・しょうへい

 

ファッション系業界紙で編集記者として流通、スポーツ、メンズなどの取材を担当後、独立。 大阪を拠点に、関西の流通の現場やアパレルメーカーを中心に取材活動を続ける。

 

 

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